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フリーランス新法に関わる3つの懸念点
フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案)が可決。これに伴って衆参両院で可決したことになり、施行が決定になりました。
施行は来年(2024年)秋ごろだそうですが、読み込む中で3つの懸念点が私の中で浮かんできたので、自分なりの対処法と合わせて書いておきたいと思います。
不安を煽るつもりはないですし、さまざまな意見があってしかるべきだと思いますので、そのつもりで読んでいただけると幸いです。
フリーランス新法とは
ざっくり説明しますと、フリーランス新法とは、その名の通りフリーランスを保護する目的で作られた法律です。「フリーランス」とは書かれているものの、対象は個人事業主と法人成りしているフリーランス(特定受託事業者)、そして発注者(特定委託事業者)になるようです。
要するに一人社長はこの法律の保護対象に該当すると考えていいと思います。この辺があいまいなのも気になるところですが……。
もともとは下請法(下請代金支払遅延等防止法)によって保護されてきましたが、下請法では下請け業者であるフリーランスを守り切れない法律であることが示唆されていました。ちなみに、発注者が不正行為(仲介業者を除く)を行った場合、公正取引員会の勧告・指導になるだけではなく最大50万円の罰金が科されます。
しかし、下請法は年収1,000万円未満の企業は対象にならず、全体の半分以上を保護できない内容でした。そこで成立したのがフリーランス新法です。
3つの懸念点
個人的な所感なので間違っていたら申し訳ないのですが、今回の法律制定を受けて、3つの懸念が浮かんできました。あくまでライター目線ですので、そこは悪しからず。
契約詳細の明示義務
発注者側の負担の増加
「適性価格」の不明瞭さ
一個ずつ、懸念点と個人的な対処法を記しておきます。
1.契約詳細の明示義務
フリーランス協会さんの速報記事では「一番のポイント」と書かれていましたが、今回の法律で肝になるのは契約書の内容が明示された点です。今までうやむやだった項目を明確にした結果ですが、明示必須となる内容は以下の通り。
業務内容、成果物、報酬額、諸経費の扱い、納期(契約期間)、納品・検収方法、支払い期日、契約変更・解除条件、秘密保持、著作権の帰属、契約不適合責任(損害賠償、やり直し範囲)、再委託可否
すでに作っている人はいいのですが、問題は個人で仕事を取ってきて下請けのライターに回している人物です。私もこれに該当しますが、フリーランス新法は私のような仲介業者にも同じ内容を記載した契約書の締結を義務付けています。
つまり、要件を満たした契約書と機密保持契約を作り、結ばなければならなくなったのです。
もちろん、こんなものを作っている人もいれば作っていない人もいるでしょう。企業の中にも契約書や秘密保持契約書を持っていないところ、複数あります。
Google検索で出てくる契約書のテンプレートだけでは対応できない状態であり、少なからず弁護士さんのリーガルチェックが必要になるでしょう。そうなれば相談料やチェック料がかかります。
と言うことは、今まで安い単価で横流ししていた仲介業者が今後気軽に仕事を孫請けに任せにくくなるということです。手間と費用が掛かりますからね。
裏を返せば、自社メディアで予算が作れない状態を除いて、契約書作成の手間をめんどくさがる場合は個人間取引における執筆依頼数が少なくなる可能性があるということです。ちなみに、フリーランス同士の依頼もBtoBなので、フリーランス新法の適用範囲内です。
対処法としては、契約書と秘密保持契約書の両方をライターも持っておくことだと思います。お客さんが出してこずにうやむやにしてしまうよりはマシでしょう。自分の身は自分で守る必要があります。
2.発注者側の負担の増加
読んでいて純粋に思ったのは、フリーランスが働くための環境整備ができない会社は仕事の依頼ができなくなるという点です。契約書問題にも通じますが、加えて次の要件が追加されています。
育児介護などへの企業としての姿勢の明確化
ハラスメント相談窓口の設置
「会社員じゃねぇか(笑)」と笑ってしまいましたが、果たしてこれらの対処をフリーランスはおろか社内で完璧に整えている企業なんてそうそうあるのでしょうか?なかなか大きなクエスチョンマークがつきます。
さらに言えば、この条件は仲介業者にも適用されるため、これらの対処ができなければ今後公正取引委員会のお世話になる可能性が高くなるわけです。
まあ、後者に関してはフリーランス・トラブル110番でもいいとのことですが、とりあえず発注者側がこういう制度の存在を周知しないといけないと……。なかなかに手間がかかります。
でもこれをやらなければ法的に罰せられる可能性があるわけで、整えないわけにはいきません。
ここで出てくるのが2つのシナリオです。
A:法律もできるし社内環境を整えるか!
B:法律がめんどいからAIに任せて内製化しよう!
全部がAだったらいいのですが、Bだったらどうでしょう?
企業は大丈夫ですが、個人で仲介している人はたまったものではないですよね。そういう意味では今後、中間マージンを抜いていた業者は激減するような気がします。直接企業ではなく仕事を取ってきた個人としかやり取りしていない人は要注意です。あくまで個人の感想ですが。
お仕事をする以上、きちんと環境を整えられないなら任せちゃだめですよ、と暗に言われている気がします。間違いないと言えば間違いないですが……。
3.「適正価格」の不明瞭さ
前々から疑問に思っていましたが、適正価格とは何なんでしょうか?どこを見て適正価格なのかがわかりません。今後の政府の動き次第ですが、ここは実際に人柱が出てから決まる部分だと思います。
つまり「フリーランス新法違反の疑い」をかけられて処罰される事業者が出てきてから。すぐには決まらないでしょうね。
ただ、1文字1円とかそれ以下のものに関しては規制の対象になるかもしれません。全国平均で最低賃金が1,000円前後あると仮定すると、少なくとも1時間で1,000文字書けないと成立しないことになります。
「これが守れなければ仕事を外注すんなよ……」と。大企業しか見てない証拠のような気がしなくもないですが、まあこれで1円前後の単価がなくなるのであれば個人的には大歓迎です。
「初心者を切り捨てるのか!」と言われそうですが、誰も初心者は1円から始めろなんて言っていません。初心者でも2円・3円に応募していいわけです。なので初心者が少なくなるというよりは、仕事の総量そのものが減る可能性があるということです。
とりあえず対処法としては様子見しかありません。ここまで解説してきた内容はあくまで推測ですので。
いつ決まるんでしょうね……(遠い目)
今後出てくるであろうビジネスモデル
今回のフリーランス新法の出現を受けて、私は真っ先に「今後新しいビジネスモデルが出てくる」と思いました。外部に対する環境整備よりも手軽にできるもので、ライターを下請けに持たなくていいビジネスモデルが……。
ぱっと思いついたものでは、次の通り。
ライターコンサル(と称した人材派遣)
法人向けライタースクール
ChatGPT活用講師
まあ全部仮名なのですが、要するに雇うのが面倒になるのでその手間を省こうという感じです。本当にそうなるかは私も神ではないのでわかりません。しかし、従来型のライターの母数が少なくなる可能性はあるわけです。
今後の展望としてはライターが主導権を握れる仕事が出てくると思います。ライティングでスキルや実績を持っていようと、多くの人が同じ方向に流れていくとでしょう。この流れに乗れない人は徐々に取り残されていく……。個人的にはそんな将来が見えています。
もちろん、現在第一線で活躍されている方は問題ないかもしれません。しかし、今後は初心者ライターの参入がなくなっていく可能性もあるでしょう。どうなるかは、その時になってみないとわかりませんが、少なくとも私がWebライターを始めたころよりも障害物が増えたのは事実です。
総論
生意気にもいろいろ書きましたが、ここまでの懸念点はあくまでも私・久保田の個人的な意見です。正解ではありません。そして個人の主張なので、いろんな意見が出てきていいと思います。
ただ一つ言えることは「フリーランスを守る法律ができた!」と手放しでは喜べないことです。
どんな法律にも抜け穴があるので、悪いことをする奴は出てくるでしょう。それ以前に、施行まで変化するであろうフリーランス新法目を向けるべきではないかと、私は思うわけです。
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