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おトクでめんどくさい「一筆書き切符」

 先日、JR東日本が東京近郊区間を長野まで拡大すると発表した。それを受けて、
「有効期限が1日になっちゃう」
「途中下車ができなくなっちゃう」
と心をザワつかせている方も、少なくないだろう。

 さて、途中下車できて有効期間も長い「一筆書き切符」。
 奇遇にも最近それを利用する機会があったので、その実際について徒然なるままに書いていこうと思う。

そもそも「一筆書き切符」とは

 JRの切符は長距離になるほど、1kmあたりの値段が安い。
例えば、
 
 東京~仙台 6050円 ÷ 351.8km ≒ 17.19円/km
 東京~姫路 10010円 ÷ 644.3km ≒ 15.53円/km
 
と、この比較では距離が2倍弱で1割ほどの差になる。
 じゃあ、行きと帰りを別コースにして、超長い片道切符にしちゃえば安くなるじゃん、ってのが「一筆書き切符」だ。
 
 今回ワタシが利用したのは、ざっくり書くと下図の右。

「一筆書き切符」を使った実際の旅程(右)。姫路まで行くのであれば、往復きっぷで1割引きしてもらった方が安かったというのは、実は内緒だ。

820円安くなるというのもあるが、重視したのは途中下車できること。
神戸でJリーグの試合を見て、福崎で河童に会って、北条鉄道でキハ40にお会いして、とその度に初乗り料金が上乗せされると、さすがに懐具合がしんどい。
それが途中下車を使えば、改札の外での観光や買い物も、宿泊も追加料金なしで可能なのである。

「めんどくさい客」になる覚悟はあるか?

 これ、ルール上OKとはいえ、今の時代でイレギュラーなのは事実。
 買う方も売る方も少々めんどくさい。
 
 乗車券は、乗車日に乗車駅で買うのが原則。
 イレギュラーな切符は自動販売機さんが苦手とするところなので(※1)、「みどりの窓口」を使うのが無難である。
 
 とはいえJR各社、省人化をすすめるため「みどりの窓口」を減らしている。だから、乗車駅で一筆書き切符を買えるとは限らない。
 
 解決方法はある。指定席の列車に乗ることだ。
 
 指定席券は1カ月前から、乗車券とセットで買える。今回は三ツ沢で試合のある日に、早めに横浜駅へ行って、指定席特急券と合わせて購入している。
 
 うん、この時点で自分が「めんどくさい客」であることを自覚している。コース図のメモを用意して、駅員さんにスムーズに話が伝わるように準備するのも大事だぞ。
 

道中でも「めんどくさい客」だ

 自動改札機は使えない、と思った方がいい。
 
 最初の途中下車が神戸だったのだけど、自動改札で止められて有人改札へ。まぁ京都駅を2回通る切符だから、そらバグるわなぁ、と。
 
 以後は途中下車の都度、駅員さんに旅程の説明をすることに。途中下車扱いの加古川からの清算がらみで、福崎駅の出札は時間がかかってしまった。

福崎駅では駅員さんにご面倒をかけてしまった
(親切にご対応いただいてありがとうございました)。

 こういうイレギュラーをしているという自覚があるときは、スケジュールも余裕を取った方がいい。駅員さんに面倒をかけているのは自分の方なのだ。
 
 ここをスマートに対応できれば、再入場のときも駅員さんに笑顔で接してもらえるのである。
 

「めんどくさい」も楽しい旅の一部
 

 飛行機が気軽に乗れない時代、片道2日以上の国内移動は決して珍しくなかった。だからこそ、途中で宿泊するために「途中下車」という制度が存在するのだろう。
 
 現在では飛行機も新幹線も、早割などを利用すれば、目的地にだけパッと行って帰ってくるだけの方が、コスパもタイパも格段に良いのには違いない。
 複数の場所を回るにしたって、旅行会社が厳選してくれるツアーに参加した方が、ハズレはないのかもしれない。
 
 たぶん、時代遅れなのだと思う。
 自分で旅程を考えて、自分の行きたい場所や乗りたい列車だけを選んで旅行するというスタイルそのものが。
 
 でも、楽しいのよ。
 
 それがハマった時の気持ちよさが。
 ハズした時の予期せぬ発見が。
 
 ワタシにとっての旅行は「予想できる愉しみ」をなぞる儀式じゃない。想定外を探しにでかけるのだ。「めんどくさい」もその一環なのである。
 
 
※1:JR6社全部の自販機を調べたわけじゃないので、コースによっては可能かもしれない。しらんけど。


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