日々是暴食★トラウマめし【第30食】薩摩の恵みが生んだカンパチと安納芋
2022年の年始に鹿児島へ旅行へ行った。個人的に国内ではベスト3に入る魅力的な場所だった。
岩手出身者としては、戊辰戦争で負けた側が勝った側のお国に入るような気がしてなんとなく緊張感があった。鹿児島中央駅を降りて天文館のホテルへぶらぶら歩きながら向かう。
途中、鍛冶屋町のあたりを通ると明治維新のスーパースターたちの実家がそこらじゅうに。こんな狭いエリアに西郷も大久保も大山も東郷も住んでいたのか。ちょっとすごすぎるだろ。
勘違いしていたのだが、鹿児島市内で感じた雰囲気は〝勝った側〟のアゲアゲなテンションではなく〝負けた側〟の悔しさだった。西南戦争で新政府軍に負け西郷さんは死に士族は終焉した。同戦争では東北から派遣された官軍兵士も多く、田原坂の慰霊碑には戦士した者たちの名が刻まれていた。実は負けた者同士なのだな。
武勇に優れ、日本を変えた中心的グループだった薩摩が明治の世にあわず単なる一地方都市になってしまったんだからそりゃやりきれないだろう。長渕剛の歌に溢れ出る悔しさとジェラシーに通じる。
駅近の『づけ丼屋 桜勘』でカンパチの漬け丼セットをいただく。鹿児島といえば黒豚や地鶏が有名だがカンパチも全国屈指の水揚げ量を誇るらしい。垂水で水揚げされ締めされた新鮮なカンパチを甘めの醤油で漬けた一品。ねっとりした食感がたまらないし爽やかな脂の旨みが口いっぱいに広がる。東シナ海の恵みだ。
海が見たい。レンタカーを借りて薩摩半島を南に向かった。途中知覧により平和会館で特攻隊員の手紙を読んで涙。生きているうちにもう一回訪れたい。
県道27号をひたすら走ると前方がひらけて目の前に円錐形の山が見えた。これが開聞岳か、なんて綺麗なんだろう。そのままJR最南端の駅「西大山駅」まで行ってみる。自分のように車で立ち寄る鉄オタにとっては邪道な人間も多いのだろう、駅近くにお土産屋があった。
安納芋の焼き芋200円を購入。蜜があふれネットリとしている。これはもはや焼き芋ではなく完熟スイーツだ。個人的な好みはホクホク系の昔ながら系焼き芋なのだが、やはりサツマイモの本番は違う。しゃらくせえこと言うな、これが薩摩の焼き芋だ!と頭を殴られたくらい衝撃的な美味さだった。
指宿まで移動し風呂に入ることにした。砂むし温泉が有名だがあえてチョイスしたのは温泉銭湯。それもその昔西郷さんも入ったという明治時代に創業した『村之湯温泉』という超激シブ温泉だ。これは歴史遺産、いざ…と思ったら「県外から来訪者の入浴禁止」の張り紙。OHノー、フ●ッキン・コロナ! この時はまだ新型コロナが5類に移行する前だった。仕方ない。
気を取り直してすぐ隣の『東郷温泉』へ。こちらも創業120年を超える老舗だが、リニューアルされて外観は綺麗。源泉掛け流しの湯はなかなかに熱くとんでもなくリフレッシュすることができた。外の椅子でジュースを飲みタバコを一服。至福である。
それにしても鹿児島は1月でもこんなに暖かいのか。岩手はもちろん東京とは比べ物にならないくらい暖かい、いや暑いくらいだ。温泉で温まり汗を流しながらTシャツで車に乗り込む。夕方の風が気持ちいい。
天文館に戻り『我流風』で初めて鹿児島ラーメンを食べる。あっさりとした豚骨醤油で普通に美味しい。博多や熊本のようにわかりやすいパンチは無いものの、地元で愛されてる系の味でこれはいい。
東北出身者から見た鹿児島はまるで海外のように全然違う文化圏の国だった。
鹿児島編<続く>