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日々是暴食★トラウマめし【第19食】世界一まずい主食と生肉をゴチになった話

雑巾のような匂い

 エチオピアでどうしても食べてみたいものがあった。主食の「インジェラ」だ。

 テフという穀物を醗酵させて生地の元を作り、クレープのように薄く焼き上げたら出来上がり。肉や野菜といった副菜と一緒に食べたり辛味のあるソースと一緒に食べたり。栄養価も高く、エチオピア人は3食食べるほど大好きだというインジェラだが、旅行者の間では「世界一まずい食い物」「匂いがボロ雑巾」といった悪評のほうで有名なのだ。

人当たりの良いウエイトレスさん

 なかなか世界一まずい食い物をいただける機会もない。なんとなく見つけた繁華街のレストランで1番シンプルなメニューを頼んでみた。素敵なエチオピアギャルが運んできた薄いクリーム色のクレープのような物。これがインジェラか。

 かぼちゃっぽい見た目のソースをかけて食べろということだが、これはたぶん「シロ」と呼ばれるひよこ豆をペーストしたソースだ。

ぐつぐつと熱いソース
左のクレープみたいなのがインジェラ

 見た目はそんなに悪くない。匂いも臭くない。意外といけるんでは? まずはソースをつけずに生地だけ端っこをちぎって口に運んでみた。ムニムニムニ…強烈な酸っぱさが口に広がる。ど、独特な味わい。吐きそうなほどの激まずというわけではないが、めっちゃクセがあることは確か。

ソースをかけていただくが正直クセ強すぎて日本人の口には合わない

 酸味が強いので辛い香辛料との相性はいいようだ。というわけでソースをつけて食べてみるが、このソースがまた独特。クセ強×クセ強でちょっと食べてて疲れる。

 1人だと地味に量も多いので完食するのは結構辛かった。発酵の度合いによって味が変わるらしいが、わざわざ試さなくてもいいかな。貴重な体験だったけど、もう一生食べなくていいかもしれない。それがインジェラ。

 舌がピリピリとして変な感じになった。食べ終わってなお風味が残留する強さがヤバい。口直しにビールを飲みたい、ブラブラと街を歩きながら古い商店街のような一角に迷い込んだ。

日本の車がそのまま走ってる鉄板の光景
物乞いの少女。世界一ウザい国民性とも言われるがそうかな? ごめんね、俺金ないんすよ。と言ったら素直に去っていった
ワイルドな地区も結構ある

隣の席のおじさんに勧められ

 酒が飲めそうな、店頭に肉が吊り下げられているローカルレストランに入ってみた。とりあえず「ジャンボビア」。これで生ビールが出てくることを覚えた。

昼から一杯やってるおじさん。いい感じだ

 なんかツマミを頼もうと思ったがメニュー表らしき物がない。これは隣と同じものを頼む作戦でいくしかないか、と思ったら隣のおじさんの前に皿に盛られた生肉の塊が運ばれてきた。どうするのかなと思ったらナイフで小さくカットしてそのままパクっ。マジで! 生で食うの?

ブロックの生肉を小刀で一口大に切っていく。唐辛子の入った赤い辛味のあるソースにつけてインジェラなどと一緒に食べる

 ジロジロと見ていたら「お前これ興味ある?」的な感じで声かけられた。「それはフレッシュミートですか?」と聞くと「そうそう、この辛いソースにつけて食うと美味いんやで」と勧められた。うーん、アフリカで生肉か…。冷蔵庫で保管している雰囲気もないし、腹壊したら嫌だなあ。でもおじさんニッコニコだし断るのもなんだな。食べちゃうか!

 というわけでおじさんがカットしてくれた肉を唐辛子たっぷりの辛いソースにつけて食べてみる。おお!柔らかい。赤身と脂身のバランスも良く、ビールにも合うし普通に美味い。

 ユッケも食べれなくなった時代に塊の生肉をそのまま食べる背徳感。これはたまらない。「いやー美味いっすね~」的な反応をしたら「そうやろ!」とおじさん。言葉はわからないけど、なんとなくそんな調子で仲良くなった。

手前の白シャツおじさんも混じって軽い飲み会。ゴチになりました!

 あとで調べたところ、エチオピアには生肉を食べる習慣があるそうで「テレスガ」と呼ばれる料理なんだそう。生食が一般的になった理由には諸説あって、戦争の際に肉を調理すると煙や匂いで居場所がバレるためそのまま食べるようになったとも。

 食中毒が怖いが、彼ら的には朝解体した新鮮な肉をその日のうちに食べるから大丈夫なんだとか。いくらアディスアベバが涼しいからといって、流通経路で菌が繁殖してもおかしくないと思う。しかし実際自分も腹をこわさなかったので案外大丈夫なのかもしれない。(あくまで自己責任で)

 「これからエジプト行くんすよ」と伝えると「おお、そうか気をつけろよ。帰りもここに寄ってけ、今日は俺の奢りや!」とお肉代と2杯目のビールはおじさんに出してもらった。Googleマップも使わずフラフラと寄った店なので、あの店がどこにあるのかさっぱり分からないが、たまたま出会ったおじさんの思い出を何年経っても話せるのも旅の醍醐味か。

 夜がふけた頃にピアサ地区という歌舞伎町みたいな場所に繰り出して、エンコーBARに行ってみた。

夜になると怪しさが増すピアサ地区
甘いフルーツジュース
飲み屋が建ち並ぶが、エンコー目的の女の子がいる店も多い

 入り口でセキュリティみたいなおじさんがニヤっとこちらを見て親指を立てるので理解できた。「楽しめ」ってことね。撮影はできなかったけどアフロヘアのお姉さんに誘われるままに、店の奥に併設してある長屋みたいな部屋でウフフな時を過ごした。

 実はエチオピアはアフリカの中でも美人の国と呼ばれているが確かにそうかもしれない。街で可愛いなと思う美女をよく見かけた。

アディスアベバは想像以上に都会。洒落た都会の若者たちが優雅に暮らす
国立博物館。何十万年も前からこの大地で祖先は暮らしていた
エチオピアの歴史が学べる。いい場所だが、頼んでないのに個人ガイドが色々喋りかけてきて金を要求され揉めた。観光地で声をかけてくるヤツには気をつけよう!
有名な大聖堂を見学
エチオピアはキリスト教の国

 同国は事実上植民地を経験していないなど、周辺国と比べてもオリジナルで特異な文化を持つ国だが、2018年からは政府軍とティグレ人やオモロ人などによる反政府組織との内線も発生するなら政情が安定しているとは言えない。遠い国だけども、飯を奢ってもらった人がいるだけで親近感が湧いて興味が湧く。

エジプトまでは3時間半くらい

 エチオピアギャルと遊んだその足でタクを拾い、ボレ空港へ行き深夜便でエジプトに飛んだ。アディスアベバとはアムハラ語で「新しい花」という意味だという。花のように美しい街と人々。また行ってみたい国だ。

エチオピア編<了>

【写真・文】バーガー菊池
岩手県出身。花巻東高校卒。 実話ナックルズ編集部在籍の編集者。不良からエロまで何でもやります精神の何でも屋。注射を打ちながら毎晩暴飲暴食を繰り返すハゲ巨漢。

https://twitter.com/kikuchi_BURGER