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「貧困でかわいそうな歌舞伎町の立ちんぼ女子を救って結婚したい」と妄想する婚活おじさんは自分が最下層のオヤジであることを理解してください【中村淳彦の名前のないコラム】

大規模摘発もあり、歌舞伎町の立ちんぼ女子が話題です。なぜ彼女らが路上売春しているのか、その実態を知らずに「貧困で生活が厳しいかわいそうな女の子」だと決めつけて、あわよくば結婚相手にと近づく中年男性も多いようです。しかしアラフィフオヤジは絶対に若い女子とは結婚できません。10/30発売『中年婚活 50歳、年収450万円からの結婚に必要な30の法則』著者・中村淳彦が解説します。

「売春女子はアラフィフオヤジの自分より下」という勘違い

 ノンフィクションライターの中村淳彦です。
 先日、『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)っていう新刊が出て、著者のライター高木瑞穂さんと、歌舞伎町超人の仙頭正教さんがトークするってことで行ってきました。
 仙頭さんは歌舞伎町研究家で、1日も欠かさず歌舞伎町に通われている方、高木さんもめちゃめちゃ詳しくて、一言一句が最新情報だし、やっぱそういう人が話すと面白い。2時間話すって、僕も出版イベントたまにやるから難しさがわかるけど、仙頭さんが喋っているだけで2時間余裕でもちましたね。本当にすごい人ですね。

  歌舞伎町の路上売春ブームは、2022年3月からはじまった。僕も歌舞伎町通るたびに一応見ているけど、確かにその辺りから小さな規模で女子が立ちだして、僕が『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社新書)の取材で2週間、3週間程度だけど、そのときはブームがはじまって4カ月後の状態だったわけです。今の1/3ぐらいの規模で、女の子が15人から20人並んで、オヤジがその倍ぐらいだった。今は女子もオヤジも当時の数倍の規模になっているので、夜は女の子が50、60人、オヤジが100人、150人は集まっている。縁日みたいな状態で、本当にブームだったのです。ちなみに9月から強烈な摘発が繰り返されて、下火になってしまいましたが。
  立つ女の子たちは90%~95%ぐらいがホスト狂いとかメンズ地下アイドルとか、推し活にお金がかかることがきっかけで立ちんぼをやっていて、貧困は5%~10%ぐらいじゃないかってことで、高木さんも仙頭さんも、路上売春がここまで流行るのはいいこととは思ってなくて、特に仙頭さんはホストクラブと、ホストに対してかなり憤りがあるようでした。ホストは諸悪の根源で、このまま放置はよくないみたいな意識でした。

  で、イベント会場でいろんな人に声かけられて、よくよく見たら知り合いだらけだった。知っている人たくさんいて、久しぶりに何人かの人と話した。で、婚活系の話も聞いてきました。歌舞伎町の売春の出版イベントの場なので、底辺系の知り合いです。底辺系の知り合いは僕よりちょっと下の人たち、主に40代の人たちで、婚活とか恋活している人が結構いた。そういう話が僕にも伝わってくるけど、どうも芳しくないみたいですね。
  ひとりは50歳の友人だけど、男同士ではその人がどういう婚活しているのか、ちょっとわからない。その人は結婚相談所で婚活していて上手くいってないみたいで、どうも最近、歌舞伎町で立つ女の子に声をかけて、その子と結婚できないかみたいなことを言い出しているようだった。そういうニュアンスを僕も聞かされたことがあったけど、「婚活中にそんなバカなことを考えるのやめてください」と、一言で終わらせてしまった。
 それ冗談じゃなくて本当に思っているみたいで、いくらなんでも無理。なにを考えたら、そんな発想になるのか驚きました。その人からしたら歌舞伎町で立つ女子は、貧困で、苦しくて、できれば辞めたいけど、生活とか生きるためにしょうがないから立っているのだろうって思い込みがあった。だから自分が手を差し伸べて、水揚げをしてあげたら感謝されるし、結婚にもつながるんじゃないかみたいな妄想をしていたわけです。

 団塊ジュニアは親の影響が強い。団塊世代とか昭和10年代生まれの男尊女卑の親がいて、苦しい女性が転落するみたいな昔ながらの売春の意識がある。推し活が理由でやっている歌舞伎町の女子たちは、辞めたいなんて思ってないし、本当に深く考えないで、ホストやメンズ地下アイドルのために手軽にお金をつくりたいから立っている。
 どうしてホストとかメンズ地下アイドルが好きかというと、オヤジみたいな気持ち悪い人は本当に嫌だ、不細工は嫌だ、オヤジは嫌だっていうことが強くある。そんな女子に50歳のモテないオヤジが声かけて有り難がるわけないじゃないですか。冗談だと思っていたけど、それを教えてくれた人は「彼は本気です」と言うからあきれましたね。

 その人がどうしてそういう発想になるかというと、自分より風俗嬢とか立ちんぼの子たちはかわいそうだ、という意識がある。下に見ているわけです。収入はそんな高くなくても、結婚してちゃんと一緒に生活すれば、十分に水揚げになるんじゃないか、みたいな感覚がある。だからそういう発想をするのだけど、オヤジが風俗嬢とか立ちんぼを自分より下に思うのはズレているんですね。
 その男性は50歳で価値というか、階層的には売春している女性よりも50歳のオヤジのほうが遥かに下なわけです。オヤジは現役世代のなかでは最下層なので、そこを理解しないで、上から目線でかわいそうな子たちみたいな意識を持っても、そのオヤジのほうがかわいそうなわけです。
 自分の階層に対する意識が現実とずれてしまうと、結婚どころか、会話することすら難しいと思いますね。彼はよく知っている人で、本当に心を入れ替えてほしい。自分が最下層のオヤジであることを、いつ理解するのかなと思って見ています。

中年婚活で狙うべきは同年代キャリアウーマン。若い子は諦める

 もうひとり25歳の知り合いの女子がいて、久しぶりですと挨拶したら、40代後半の男性から求愛されている話を聞かされた。女性も、男性もよく知っている人で、婚活しているのは知っていたけど、彼はその25歳女子を狙ったみたいなんですね。
 その40代後半男性はコミュニケーション能力高くて、昔は少しモテていたみたいなタイプ。女性に対してはそんなに弱くないタイプです。モテはしないけれども、全く駄目ってことはないおじさんですね。その彼が25歳女子を一線を越えて口説きすぎたみたいでした。
 25歳女子は本当に参りましたって言っていて、攻め攻めで求愛して近づいて、半年間ぐらいに及んで頑張ったらしい。最終的にその子が耐えられなくて逃げたってことなのです。それはそうなるよね。
 どうして、そんなことがわからないのか?と思って、あきれて聞いていたけど、結局その人は、年齢はオヤジだけど、心が若い自分はいけるだろうって踏んだ。それで2まわり年下の身近な女の子にガチで攻めたのです。
 でも、よくよく考えてください。25歳の女子とうまくいったとして、10年後その人は60歳。彼女が35歳のときに夫60歳っていうのは、どうなのですか? まともな感覚があれば、そんな選択はするはずがないんです。

 その男性の方と居酒屋で飲んだことあるけど、そのときに婚活の話になって、僕ね、同年代の上流系の、仕事をずっとやってきたキャリアウーマンが余ってるから狙いはそこ一択だと伝えました。年齢だけはどうにもならない、おじさんは本当に嫌われているから、若い子だけは絶対に難しい。厄介なことになるっていう話をしたのだけど、彼は理解していたはずなのが、そういうことをやっていたってことなんですね。
 彼はコミュニケーション能力高いから同年代のキャリアウーマンいこうと思ったら全然いけるはず。年収は高くないだろうけど、お金のことは自分で自分のことやってくれるんだったら別にいいっていう、年収が高い女性はたくさんいると思うので、そういう人に狙い定めて普通の婚活すればいいのにって。本当に心を入れ替えて、オヤジは最下層であるという自覚をしないと、こんなトラブルが起こり続けますよ。

 20代の尻を追いまわすおじさんは、同年代女性が一番嫌う行動。本当は狙うべき人から本当に嫌われる行動をやっている。いま40代後半だから、そういう無謀な時間を過ごして50代に突入してしまうと、さらにモテなくなる。
 取り返しがつかなくなる前に、若い女子は不可能だという意識の正常化をはからないと、人生の後半を潰しかねないわけです。

婚活成功のためには抜本的な意識改革が重要です。
中村淳彦最新刊
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<著者プロフィール>
中村淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』、『悪魔の傾聴』などヒット作多数。花房観音との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』(大洋図書)が絶賛発売中。Voicy「名前のない女たちの話」日々更新中!https://voicy.jp/channel/2962