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酒井透

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(さかい・とおる) 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイールやパ…
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2024年2月の記事一覧

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】長野県松本市の男根を担いで回る奇祭『道祖神まつり』

乗れば子宝に恵まれる  長野県松本市の美ヶ原温泉郷で行われている「道祖神まつり」は、人々にハピネスを分け与えてくれる祭りだ。  ご神体となっているのは、長さ4メートルあまりの『男根』。ハッピを着た10人ほどの男性陣がご神体を担いで20軒ほどの宿泊施設を回る。  クライマックスは、黒光りしたご神体に女性を乗せて、ユッサユッサと揺さぶるシーン。最初は、躊躇していた女性も、『エイッサ、ホイッサ。エイッサ、ホイッサ~』というかけ声に乗って揺られているうちに、笑みがこぼれるように

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】長崎県雲仙市の『鳥刺し踊り』

 真っ赤な九尺褌(きゅうしゃくふんどし)を身にまとい、竹竿を持った中年の男衆がステージに上がると、会場から笑い声と拍手が巻き起こった。  この男衆が登場するまでここで行われていたのは、神聖な会合だ。それが終わって今、金屏風の前に立っているのは、半裸状態の男たち…。良く見れば、ほっかぶりをしている。司会者が彼らの正体を明かすと、おもむろに踊りが始まった。 〝うらの竹藪押し分けへし分いたて見れば、クワッチョ1羽鳩1羽、毛くいじりの真最中~〟  男衆は、ヒョコヒョコと歩きなが

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】沖縄県石垣市の『ハブ獲り名人』

 真夜中の森は鳥獣に支配されていた。  月明かりの向こうから聞こえてくるのは、「ギャー、ギャーー」、「ギィー、ギィーー」という野生の声だ。鳴き声を発しているのが、どのような動物なのかは、まったく分からない。森の中を進むにつれて不安が膨らんでいく。  沖縄県石垣市内の中心部から車を走らせること約20分。奥深い森の中に入り込んで、野生のハブを捕まえている『ハブ獲り名人』がいる。伊良部AさんとBさん。2人は親子で、時間のあるときに山に入っている。  『名人』がハブを捕まえると

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】山形県の『ムカサリ絵馬』がある観音堂

死後に結ばれる  今から200年以上前に建てられたという観音堂に入ると、むせかえるような空気が漂っていた。その空気は重たく沈殿し、何十年も動いていないように感じられた。観音堂の壁には、結婚式の様子が描かれた絵馬がいくつも掲げられている。それらの絵馬に描かれた男女は、どことなく寂しげな表情をしている。  山形県の山形盆地を中心とする地域にある寺や観音堂には、「ムカサリ絵馬」と呼ばれる絵馬が奉納されている。絵馬に描かれているのは、新郎新婦やその親族の姿だ。  これらの絵馬を

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】中国・雲南省「昆明動物園」の『ウルトラマンプール』

無断で使用される人気キャラクター  中国・雲南省昆明市の昆明動物園にある「ウルトラマンプール」が閉鎖されていたことが分かった。毎年、夏になると金魚すくいができることでも知られていたこのプールには、ウルトラマンやウルトラセブンを模した巨大フィギュアが展示されていて、子どもたちにも人気があった。  初めて同動物園を訪れたとき、衝撃を受けたことがあった。それは、小さな遊園地にあるような遊具ばかりが並べられていたことだ。ミニトレインやメリーゴーランド、コーヒーカップ、お化け屋敷な