外為法事前届出対象業種の追加に際し、ベンチャーキャピタルが行うべき対応について〜3. 実行報告編、記入例付き〜

0.記事の目的


前回の記事から日があいてしまいました。。
実行報告書の提出方法については、文字数の関係上割愛させていただいたのですが、
「事前届出書と禁止期間の短縮まではやったけど、投資実行したら安心しちゃって、実行報告をうっかり忘れていた…!」というVCさんにもちらほらお会いすることがあり…。


この世界のどこかにいらっしゃる、当ブログを参考にしてくださっている方に向けて、備忘録を兼ねて書き方をご説明する記事を公開させていただこうと思い、当記事を作成しました。


※しつこいですが…本記事の内容につきまして、弊社として一切の法的責任は負いかねます。財務省様には、公開前に内容の正確性についてご相談をさせていただいたのですが、こういった記事などの確認については、全て断っていらっしゃるとのことであり、そのため一切の確認が入っておりません。添付している実行報告書の見本を含め、すべて参考程度とお考えください。

実際の届出の業務に際しましては、原則、LP内の法務ご担当者様、顧問弁護士様、日銀様、各省庁様など、各関係者と直接ご協議をされるようお願い申し上げます。



1.いつまでに、なにをする必要がある?

前回の記事をお読みいただいている方ならご存知かと思いますが、外国投資家が対内直接投資(国内の企業に出資。VCの場合は、外国LP等が含まれるファンドからスアートアップ企業への出資が起きる場合など)を行うにあたって「事前届出」に該当した場合は、取引実行前に事前届出書を提出するのに加えて、実際に取引を実行してから30 日以内に実行報告書の提出が必要となっています。


2-1. 実行報告書を記入するために必要な準備とは?


まず、この実行報告、とにかく忘れやすい!!!
事前届出書を出すときと比べて、投資実行後ってなんだか「一仕事終えたぜ」感があるのが原因でしょうか…。


・払込日が決定したら、そのタイミングで30日後の日付を確認してあらかじめカレンダー登録しておく
・もし時間に余裕があれば、実行したその日or当該週内で実行報告書を書いてしまう

などの対策をしましょう。

実行報告書を作るにあたって、必要となるのは以下のセットです。手元に用意しましょう。

・投資契約書(投資金額、取得株式数、払込日(取得日)等がわかるもの)
・キャップテーブル(取得株数や比率等がわかるもの)
・当該LPSに対する各外国LPの出資比率がわかる書類


2-2. 実行報告書を記入、提出する(記入例つき)


情報が揃ったところで、実際に報告書に記入してみましょう!

まずは日銀様のサイトに行き、実行報告書をダウンロードしましょう。
https://www.boj.or.jp/about/services/tame/t-redown2014.htm/
対内直接投資であれば、様式19の「株式又は持分(及び議決権)の取得等に関する報告書」です。
様式変更が時々ありますので、作成の都度DLしに行くのが無難かと思います。


なおファンドの場合は、GPが代理人として一枚の届出書で全外国投資家LP分をまとめて事前届出を行うことも可能となっていますので、当然、実行報告もGPが代理人としてひとまとめに行うことが可能です。

今回は、そのケースを想定した記載例を掲載しておきます。

実行報告書は、事前届出書に比べると記載項目も少なくて楽チンですね。

とはいえ、初めて作成した場合などは、事前届出書と同じように、ぜひ日銀様によるドラフトチェックを受けましょう。


2-3.ドラフトチェックを受ける(任意)

ドラフトチェックとは、実行報告書の内容について、明らかな間違いがないかを、日銀の担当者様が事前に確認してくださるという制度です。
実際に、ドラフトチェックなしで実行報告書を持ち込むVCで、書き方や内容などが間違っていたというケースは割と多いようです。
そうなると完全な無駄足になってしまいますので、積極的にドラフトチェックを利用するようにしましょう。

ドラフトチェックを受けたい場合、日本銀行国際局国際収支課外為法手続グループ宛に電話するか、メールで連絡しましょう。連絡先はこちらに記載されています。


2-4.実行報告書を提出する

ドラフトチェックで指摘を受けた箇所の修正が終わったら、いよいよ届出です。
提出部数は【財務大臣+事業所管大臣数+自社控え分】です。

そう、こちらは事前届出書と違って、日本銀行分が不要なんですね。なので枚数については「事前届出書の提出部数からマイナス1部」と覚えておきましょう。

必要な部数を印刷したら、すべてに押印をしましょう。コピーは不可です。

提出先は、日本銀行国際局国際収支課外為法手続グループ(50番窓口)への提出または直接郵送がベターです。
東京以外に拠点があるVCの方以外は、代理人として押印した印鑑を握りしめて、直接窓口に持っていくのがよいと思います。万が一記載内容にミスがあった場合に、そこで指摘してくださる&訂正印を押しての修正ができるのでより安心です。

弊社は窓口提出の方法を取っているのですが、その場合、実行報告書が受理されると、自社控え分が当日中に窓口で交付されます。

これで、事前届出業種に該当するスタートアップへの新規投資にあたり、VCが取るべき一連の対応は終了となります。



以上が、外為法事前届出対象業種の追加に際し、ベンチャーキャピタルが行うべき対応のうち、実行報告に関する弊社ナレッジの共有でした。皆様の実務において、すこしでもお役に立てる部分があれば幸いです。

なお、本記事に記載の内容は2020年1月時点のものであり、今後も外為法とそれに伴って必要な対応は常に更新されていきます。日銀様や各省庁様ホームページ等で、常に最新情報を確認して頂ければと思います。


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