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メタモルフォーゼの縁側

柳さんとアマプラで見た!

ここ最近ずっとハリーポッターを見ていたので柳さんと一緒に邦画を見たのはかなり久しぶりだったんだけど、これがとにかく良かった。
人生って、生活って、好きなことを見つければキラキラと輝いてすごく楽しくなるんだということを教えてもらえた。

この映画は全編を通して無駄な説明を一切しない。うららさんが片親で、おそらく母親と2人暮らしであることも、雪さんの娘さんが普段は外国に住んでいることも、幼馴染とクラス一の美女が付き合っていることも、どれも言葉にして説明はされない。
でもちゃんとわかる。会話のかけらで不自然でなく教えてくれる。視聴者への信頼を感じる。
そこで私たちは本当にうららさんと雪さんの生活を、交流を垣間見させてもらっているという気持ちになる。

そしてキャスティングが絶妙でほんとうにいい。
芦田愛菜さんは凛とした美しさのある女性だと思うんだけど、今回はその美しさは控えめに、地味な女の子役をしていた。それでも透明感は隠し切れてなかったけど。
オーバーサイズでボーイッシュな服ばかり着ていたのが新鮮でかなりよかったし、巻かれてない前髪に中途半端な高さのポニーテールが幼くて可愛かった。
BLについて語る時はつい早口になってしまうオタク仕草も様になっていて思わず微笑んでしまった。

宮本信子さんはとびきりチャーミングなご婦人を演じられていた。
旦那さんを亡くして1人で暮らしていて、普段は書道の教室をやっている綺麗なご婦人。
書店で表紙が綺麗だからという理由で手に取ったBLにハマって、キュンキュンしながら漫画を読み進めていくその過程にこっちまでキュンキュンしてしまった。
私もぜひお家で一緒にお茶させていただきたいです……
腰が痛くて立ち上がるのに難儀する仕草があまりにも完璧で離れて1人で暮らしている祖母を思い出した。祖母も脚が悪くて立ち上がるのが大変そうだったんだけど、立ち上がり方がまんま一緒だった。
普段座る椅子は座椅子じゃなくて地面から高さがある方が立ち上がりやすいんだよね……とか、色々考えながら見ていた。高めの机と椅子をプレゼントして差し上げたいよ。
つい夢女子になってご一緒に……と思ってしまうほど魅力的なご婦人だった。

とにかく優しい。登場人物がみんな善良。でもそれが良い。それを求めていた。
雪さん(77歳のご婦人)とうららさん(女子高生)の出会いから2人が書店でBL漫画がきっかけで仲良くなるまでをとにかく丁寧に描いている。描き方が本当に丁寧なので2人の過ごした時間の長さが良くわかるし、そこで培われた信頼や友情や楽しさも伺える。
出会ってから初めて雪さんのお家に行った時、縁側で一緒にカレーを食べていた場面があまりにも良かったので絵画にして美術館に飾りたかった。
雪さんの家でお茶を飲んでたまに一緒にご飯を食べながら2人で過ごした時間が余すことなくたっぷりと描かれている。ずっと飽きないしいつまでも見ていたいと思えるほど2人が楽しそうで微笑ましい。

雪さんがとにかくチャーミングで、うららさんと一緒に過ごして話をするのがとにかく楽しくて嬉しくて仕方がない!って感じだった。
うららさんから連絡が来ると嬉しくて嬉しくて思わずニコニコしてしまう雪さんの可愛さたるや。恋をしている乙女のようだった。

BLが好きでイラストに興味があるけどちゃんと描いたことがなかったうららさんが雪さんと出会って一緒にBLの話ができるようになり、「漫画、描いてみたら?」と後押しされてコミティアに漫画を出すことを決める流れ、本当に良かった。
一方雪さんもうららさんと出会ったことで昔好きな漫画家さんに出そうとして字が汚いからと諦めたファンレターを今一番好きなBL作家さんに出すことを決める。
お互いがお互いのおかげで一歩前に進む物語だなぁと思う。

本当はコミティアでうららさんと雪さんが2人で売り子をするはずだったんだけど、当日雪さんがギックリ腰になってしまって会場に行けないため、うららさん1人で売ることになる。
漫画は一生懸命描いたはずなのに周囲とつい比べてしまって、自分の本なんか……と急に自信が無くなってしまって、思わず売り場から立ち去って、結局幼馴染に1部しか売らないまま帰ってしまう。
帰ってきて雪さんのお家に行って、雪さんが本当はお弁当として持っていくはずだったカツサンドを食べながら自分の不出来さにしゃくりあげながら号泣するシーンはこっちもボロボロ泣いてしまった。
周りがあまりにもすごい人まみれで自分も急に1人で参加することになって心細くてせっかくお金出して刷ってもらった本なのに堂々と売ることもできなかった。
でもそんな泣いているうららさんを雪さんは励まし続ける。一般的に見たら拙い絵の漫画だけど、うららさんが自分の言葉きっかけで時間をかけて一生懸命描いた、愛の詰まった漫画だって知ってるから。その漫画の価値を誰よりも知っているから。

雪さんがギックリ腰になりながらもなんとかしてコミティアの会場に行こうとした道中で、コミティア帰りだという人とばったり出会って話しているうちに、その人がうららさんの本を買いたい!売ってくれませんか?と言うので、その場で売り渡すことになる。
後からその人が2人が敬愛するBL漫画家の先生で、先生の漫画がきっかけでうららさんが漫画を描き始めたと知ってその本を読んだことで先生も元気が貰えたということが判明する。もうこのシーンでボロ泣き。
うららさんの本、ちゃんといちばん欲しいと思っている人のところに届いているよ。うららさんの気持ちはちゃんと届いているよ。と思うともう……もう……

また、うららさんの幼馴染の男(紡)もめちゃくちゃ良かった!顔もよけりゃあとにかく性格もいい。
クラスで一番の人気者の女の子(スタイルがよく、容姿端麗)と付き合っているけど、おとなしめの性格のうららさんとも何も気にせず関わってくれる。

同じ団地に住んでいるので2人はご近所付き合いがあるのでうららさんの家に来た時は部屋に上がって漫画を読むんだけど、そこにBL本(普段は段ボールに入れて隠しているんだけど、雪さんに貸す本を選ぶために広げていた)が置かれたままになっていた。
私はあっ……これうららさんがBLを読んでいることを揶揄したり苦言を呈したりするんじゃないかと勝手に想像して悲しい気持ちになったりヒヤヒヤしたりしていたのだが、その幼馴染はペラペラと読んでそのあと特に言及せずにスルーしてうららさんが部屋に来る頃には他の漫画を読み始めてる。
この距離感がものすごく丁度いい。もうこの時点で株がかなり上がっていた。

この後うららさんが漫画を描いていることを知って「描きあげたら読ませてよ!」って声をかけるんだけど普通社交辞令かと思うじゃん。
だがこの男、おそらくオタクとかでもないのに、うららさんが参加したコミティアまでわざわざ向かって、参加者としてうららさんから本を買う。お金を払って。
本当にいい男。幼馴染が頑張って描いた本をお金払って買ってくれる男。そりゃクラスいちの美女と付き合う。

その美女は留学に行くことになり、別れてしまうんだけど、うららさんを団地の公園に呼び出して「彼女が今日空港に行くんだけど見送りに行かない方がいいよね……」って相談する。
うららさんはその幼馴染が綺麗な服を着ているのを見て、本当は行きたいんだろうなと察して「行った方がいいんじゃない?」と声をかけたら自信なさげに「途中まで一緒に着いてきてくれない…?」と言うので「わかった!ちょっと(この後会う約束してた雪さんに)電話かけてくる!」とうららさんが言ったら「うそうそうそごめんごめん!」と咄嗟に返すところも人柄の良さが出ていた。自分のわがままに友人の予定をずらしてまで付き合わせるわけには行かないという良心を持ち合わせている。
うららさんが困って迷っている時は本当にそれとなく、さりげなく声をかけてくれて、いざという時はうららさゆのことを頼りにしていてという2人の関係性がとても良かった。
何度でもいうけど私は恋愛関係では一切ないけど親密な男女の友情が大好き。

エンディングは芦田愛菜さんと宮本信子さんの2人が歌っており、最後の最後まで楽しい気分になれた。
本当にいい映画だったな。
多分これから何度も見返してしまうだろうな。
元気がない時こそこの映画を見たいな。
押し付けがましくなく優しく寄り添うように励ましてくれる映画だと思う。

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