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ショーシャンクの空に

柳さんと見た!

あまりにも名作なので書くことがほとんどない。何をいっても蛇足になってしまう気がする。

原作がスティーブン・キングであること、名作であること、大雨の中脱獄するシーンがあることしか知らない状態で見た。
いやここまで知っていればほぼ全てか。

しかし冒頭主人公が無実にも関わらず終身刑を言い渡されるシーンには驚いたし、それが最後まで覆らないことも衝撃だった。
しかも途中で主人公の罪が覆るような証言ができそうな囚人が入ってきたと思ったら所長に利用されて殺されてしまうという……
どうしようもないという絶望感が常に間近にある。

最初アンディが屋上作業の時に看守に自分の持ちうる知識を持ってお金の節税の仕方を教えてやった際はアンディ!お前〜!と嬉しい気持ちになったし、やっぱり学があるっていうのはどんな極限状態でも武器になるんだとわかって物語もすごく良い雰囲気だった。
特に毎週手紙を書いて本を買うお金がほしいとお願いする生活を6年続けた結果本が届いて、そしてその次にアンディを納得させられなかったと追加の本が届いたくだりが大好き。
でもだんだんアンディ無しでは刑務所が成り立たなくなっていった結果、刑務所がなんとしてもアンディを手放すまいと試行錯誤してきたあたりの嫌さはさすがスティーブン・キングだった。
処世術としての学が、つちかってきた物が自分を刑務所に縛り付ける鎖になる瞬間。

でもアンディは刑務所暮らしや所長の犬で終わる男ではないので、その縛り付ける鎖すらも武器にして所長にやれと言われてやっていた違法のものたちを武器にして悠々と刑務所を出ていくし、盗んだ現金もマルッと自分のものにしちゃう。
その上で刑務所の問題点を告発して腐り切った看守や所長たちを追放する。
アンディはずっと学や品があったから刑務所を出て、パリッとしたスーツなんかを着てしまえばその辺のサラリーマンとなんら見分けが付かなくなるのも本当にクールだった。誰がこの男が無実の罪で20年も刑務所に入っていたと思うだろう。
ここの流れがあまりにも爽快で見ていて気持ちが良かった。
20年近くずっとそばにいたレッドもアンディが脱獄しようとしていることに一切気付かないんだもの。すごいよ。

でも決してレッドのことを信用していなかったとかそういうわけではないというのがわかるところもいい。
レッドはここを出たらメキシコに行ってホテルを経営してボートを買うんだと言うアンディに、俺たちはずっとこの刑務所の中なんだから希望を持つな、希望は危険だ、と進言するんだけど、アンディはでられる勝算があったからこんなことをレッドに話しているし、その希望があったからこそアンディはこのクソッタレな刑務所で暮らしていけた。
それにアンディが脱獄する前にレッドにもし君がここを出たら大きな樫の木が生えている牧草地の黒曜石の下を見てみてほしいと言い残す。
その後アンディは脱獄するんだけど、レッドに脱獄のことを話さなかったのは信頼してないからじゃ無くて、確実に2人逃がせる保証がなかったこと、何かあった際にレッドに疑いが向くのを防ぐためだったんじゃないかなと思う。

そしてアンディは置き土産として刑務者の看守たちをしょっぴいて腐り切った内情を変えていく。
レッドはおじいちゃんのように刑務所から出た後、社会では自分がただのちっぽけな元囚人であるという絶望感に耐えられなくなる可能性があったけど、アンディが残してくれた希望を頼りに牧草地に辿り着いて、メキシコにいく宛てを見つけるシーンはものすごく良かったし、最後清々しい青空の下でアンディとレッドがハグするシーンで終わったのがあまりにも美しかった。
アンディに持つなと言った希望に最後レッド自身が救われる。
ショーシャンクの空にってブロマンス映画としての関係性の描き方がかなり最高。

途中までの嫌さの描き方はかなり流石だった。
アンディは童顔だけど身長が195センチもあって、髪型もいつもカッコよく前髪を上げて分けており、しかも元銀行の副頭取で学も知識もたくさんあるので、確かに……モテるのも仕方ないのかもしれない……
特に終盤の方でゆるいオールバックに前髪をひとふさ分だけ垂らしたアンディはかなり魅力的だった。
アンディを襲う時の場面、アンディ1人に4〜5人くらいで向かうんだけど、確かに195センチ中肉中背の漢が大暴れしたらそりゃ手がつけられないのでそのくらいの人数で向かうしかないのも納得できる。でも性的暴行はするな。

アンディを襲っていた男が看守からボッコボコにされて流動食しか食べられない状態にされた時、アンディが看守に節税の話とかして助けてあげたからアンディのことも助けてくれたのかなと呑気に思っていたけど、今思えば使える駒を最後まで使わずにダメにしてしまうのが勿体無いという意識からアンディのことを助けたんだなとわかり、血も涙もない。
そもそも刑務所に入ってきて早々啜り泣く囚人にめちゃくちゃ暴力を振るって頭を割って殺してしまうような人だし……

アンディがレコードを放送で流して懲罰房に入れられた時、頭の中に音楽があったから大丈夫だったよと言うシーンで岡野大嗣という歌人の『サイレンと犀』という歌集に収録されている「脳みそがあってよかった電源がなくても好きな曲を鳴らせる」という短歌を思い出した。
こんなに究極の場所であっても、音楽は変わらずそばにいてくれる。
アンディが刑務所暮らしの中でも絶望せずにいられたのはこういう逃げ道のようなものを持っていてたからこそ人に優しくあれたし、強いんだろうな。

アンディって繊細そうに見えてかなり豪胆で、ロックハンマーを聖書の中に隠し持っていたり、ポスターで隠された壁に脱獄のための穴を掘っていたり、所長室から靴をとっぱらって堂々と履いて自分の部屋に戻ってきたりする。
でも基本的には気のいいやつなので看守もそこまで警戒しないし、部屋を隅々まで探したりしないあたりがアンディの計画勝ちだなと思う。
アンディという男、本当にかっこいいよ。

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