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アイスクリームフィーバー

映画館で1人で見た。

何にも知らずに藤原さんのこのツイート

がきっかけで、へ〜!こんなのあるんだ!しかも役者じゃない藤原さんが出てるんだ!面白いキャスティングするんだなぁ。見に行くか!という軽い気持ちで見に行った。

基本的には結構好きな雰囲気なんだけど、定期的にいる……?この演出……?と思ってた。
監督が水曜日のカンパネラの詩羽さんがとにかく好きなのは伝わった。
というかコムアイさんとかも出てたので水曜日のカンパネラ自体が好きなのかな。

監督はどうやらアートディレクターが本職の方らしく、その方のこだわりと自分の細かい細かい好みが合致しなかったと思われる。
いやでも終わってから色々思い返して言語化してたら全体的には結構好きな雰囲気の映画だったかも。

普段映画館に行かないのでハッキリとはいえないんだけど、あえて画面の横幅を狭くしていた気がする。
コンパクトになることで画面が見やすくて助かりました。おそらくそういう意図ではやってない。

この映画、川上未映子原作の映画らしいんだけどどうやら原作は10ページほどしかない短編小説らしく、内容もかなり違うらしい。
吉岡里帆と松本まりかという安心感のある柱を中心にそれぞれの場所でそれぞれの物語が展開されていく。
吉岡里帆演じる常田菜摘は元デザイナーで会社がとにかくキツくて退職、その後デザイナーは諦めきれないもののアイスクリーム屋でバイトする女性。ある日その店に来たモトーラ世理奈演じる橋本佐保に一目惚れをする。
一方松本まりか演じる高嶋優は、ある日会社から帰ってきたら実家に住んでいる高校生(たぶん)の姪っ子(南琴奈演じる高嶋美和)が家の前に立っていて、小学生の頃家を出て行ったお父さんを探したいから夏休みの間泊めてくれと突然申し出る。
この2つのストーリーが交わることなく進んでいくという構成の映画。
というのも最後の方に気付いたんだけど、この2つの物語の時間軸はどうやら多少のズレがあるっぽい。

美しい女をとにかく美しくスクリーンに映そうという強い気持ちが伝わってくるので、103分間美しいものを見続けられるのは間違いないです。
モトーラ世理奈さんや南琴奈さんの美しさはちょっと尋常じゃなかった。
モトーラ世理奈さんに魅了される吉岡里帆が見られるんだけど、あれはメロメロになってしまうよな……という納得感がある美しさだった。魅了された結果「たはは……」って言っちゃう吉岡里帆、本当に良かった。
南琴奈さん演じる高嶋美和は学生時代特有のまっすぐさや空気の読めなさ、それ故の無敵感などが痛いほど伝わってきた。とにかく美しいんだよ……

松本まりか演じる高嶋優が突然家に押しかけてきた美和に対して「なんでいるの?」「え?聞いてないんだけど?」の言い方が半笑いなのにかなり刺々しくてすごく良くて、その後も大人だから言葉には出さないけどものすごく迷惑だと思っているし早く家から出ていってほしいと思っている感じや、あえて美和が傷付くであろう言葉を選んでいるあたりがとても生々しかった。
でも優は姉(死去済み)に対してそもそも憎しみに近い感情を持っている上に普通に働いているので連絡もなく何泊するかもわからない姪の面倒を突然見事になったらこうもなる。このリアクションはものすごく妥当だよ。
でも美和が嫌悪感がない程度に図々しくふてぶてしさのある子なので流されちゃう。ほだされちゃう。
この嫌悪感のなさは美和を演じる南琴奈氏のものすごい美しさもあるだろうな……と思う。
最初はギスギスしてた姪との関係性が少しずつほぐれていく過程の描き方は芯があって本当に良かった。

美和のいなくなった父(美和が小学生の頃出て行ったダメ男)の役がジャルジャルの後藤氏で、見ためはシュッとしてて若々しいんだけど常にチェックのシャツを着ており、おそらく40代とかなのに20代の若い女の子引っかけて若者が行くようなカフェに行って大声で喋ってる描写の残念感の説得力がすごくあった。良かったです。

一方吉岡里帆演じる常田とモトーラ世理奈演じる橋本佐保の関係性って上記の2人に比べたらものすごくふわふわしている。だからこそお互いのストーリーが引き立つ。
この映画って全編通して余計な説明がかなり排除されていると思うんだけど、この2人の関係性もごちゃごちゃした説明が一切なかった。
女が女の事を好きとか関係なくて、ただ常田は橋本のことを好きになって、そんな橋本はアプローチしてきた常田のことをすごく気に入っている、それだけ。
橋本のコミュニケーションのとりかたもすごくグッと来た。人の機嫌を伺うという機能がない人のようで、自分の思った事を言いたいタイミングで相手にポンと放り投げる感じ。自由で身勝手でぶっきらぼうなんだけど、それでいて人を振り回すような力を感じる。
とびきり魅力的だし、めちゃくちゃにしてほしいという気持ちにさせられる。
常田が一目惚れした橋本に声をかけるようになって、常田が橋本に言った「私、アイスクリーム作れるよ」の言葉がきっかけで橋本の家に上がることになり、共に一夜を過ごして、目が覚めたら橋本はどこにもいなくて、それ以降一度も会うことがない。
常田が橋本にキスしようとして、唇が触れそうなタイミングで橋本がアイスクリームを差し出すので食べちゃう。2人はキスすらしない。
でも、一緒に過ごした時に常田が言った一言を元に後から橋本が小説として出版するという流れが良い。起こることは本当にそれだけなんだけど、その一瞬のきらめきのような儚い関係性がまぁ美しいこと。
あと2人がキスしそうなシーン、かなりかなりドキドキしました。2人とも目を閉じるか閉じないかで迷って瞬きをするたびにカールさせたまつ毛がひらひらとしていて、伏目の感じが芸術作品のように美しかった。
水曜日のカンパネラの詩羽さん演じる桑島は常田と同じアイスクリーム屋でバイトしており、おそらく、おそらくだけど、常田のことが好きなんだと思う。
この桑島→常田→→(←)橋本の関係性がさぁ!
女女女の関係性がさぁ!
桑島が橋本に「常田さんのことどう思ってるんですか?」って聞くシーンとか旨みが凄かった。
橋本は常田と付き合う気とか一切なくて、でも関わりたいという気持ちはあり、その場からすぐに去って彼女にとって夕立のような存在になりたいと語っていた時桑島が「ずるいなぁ。そんなん常田さんは一生忘れられないじゃないですか……」って言っていたのが凄かった。すごいですよ。

この映画、衣装や小物に対しておそらくめちゃくちゃこだわりがあり、屋外のベンチに腰掛けてアイスを食べる橋本の側に行くシーンの常田の私服のブラウスがとにかく素敵でほ、欲しい……と唸ってしまった。白のスタンドカラーシャツなんだけど袖のところはたっぷり布を使っていて膨らんだシルエットになっており、ボタンが真夏の空の色をしているの。爽やかで綺麗なシャツだった。どこのなんだろう。
あと美和がつけていたイヤリングもとにかく美しくてこれも欲しくなった。揺れるような長めのデザインで華奢なゴールドのリングが2つほど連なった下に深い緑色の石がついているの。
この辺のアイテムのこだわりとかが書かれていそうだしパンフレットを購入したいと思っていたんだけど、小さい映画館で見たのでおそらく取り扱っていなかったっぽい。残念。通販で購入できるかな。

なんか歌うまそうな顔をした男が出てきたな〜……歌うまい男ってこういう感じの顔してるよな……と思いながら見ていた人を鑑賞後調べたらマカロニえんぴつのボーカルの方だった。
そりゃ歌うまそうな顔してるよ。だって歌上手いんだもん。

途中何回かここで綺麗に終わりそう!みたいなところがあり、でもまだ続くみたいなのが2回ほどあって、RRRで体験したやつだ……って思いながら見ていた。
でも最後に一番冒頭のシーンの意味がようやくわかるの、美しくてよかったです。

全編通して美しい映画だからぜひ見てみて欲しいな。

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