はじめての繭期2023 summer

8/4 DステTRUMP  REVERSE

ソフィ・アンダーソン:三津谷亮
ウル・デリコ:西井幸人
ティーチャークラウス:山田裕貴
アレン・ストラウフ:陳内将
ティーチャーグスタフ:近江陽一郎
ティーチャーミケランジェロ:山口賢貴
ラファエロ・デリコ:志尊淳
アンジェリコ・フラ:阿久津愼太郎
ガ・バンリ:池岡亮介
ピエトロ・ロンド:土屋シオン
ジョルジュ:荒井敦史
モロー根岸拓哉/白又敦/大久保祥太郎
ダリ・デリコ:前山剛久
の回

ちなみに今回のTRUMPは過去はじ繭で見てるので物語の結末が全てわかっている上で見たキャラクターへの印象とか感想。

全体的にキャストがしっくりくるのはREVERSEの方かも。
TRUMPシリーズを知ったときのソフィが三津谷ソフィであるからというのもあるけど、山田クラウスと陳内アレンの組み合わせが良すぎるのもある。
ガ・バンリのウィッグだけもうちょっとお金かけてくれればなんの文句もなかった。
すごいノイズになるわけではないけどもっとこう……なんとかなりませんでしたか。

なんといっても陳内アレンの引力。
白の衣装や片耳につけている大きいシルバーのピアスや明るい茶髪でキッチリとセットされた髪型が相待ってホストのようだった。チャラい。陳内アレンはホストだと言われていた意味が見ただけで分かった。
ふわふわした夢見がちな儚い少年という印象を受けた山田アレンやCOCOONのアレンとはかなり対照的。
少しテンポの速いトーンで語尾を伸ばしたりせず短く切って「〜だぜ」「〜か?」って少し乱暴にも思えるような話し方をするけど、それを淡々と穏やかに話すから全く乱暴に聞こえない。

陳内アレンって真顔もしくは口角を少しだけ上げたような笑みを浮かべているけど、破顔したり心底悲しそうな顔はしないので、決して表情が豊かなタイプではない。
キザな雰囲気がずっとあって、山田アレンに比べたら圧倒的に地に足ついた印象があるにも関わらず、時々ものすごく浮世離れしたロマンチックなことを言うのでちぐはぐ。
でもそのちぐはぐさがアレンから目を離せない要因を作り出しているし、魅力の一つでもある。

アレンとクラウスとのダンスシーンが尋常ではなかった。
クラウスにダンスの授業に出ていないんだからアレンがクランフェストで踊れるわけがないと揶揄され、星に手を伸ばした後「ほら、クラウスにも届く」と言いながらクラウスの肩から手のひらに自分の手を滑らせるようにする。そして踊る気がないクラウスをクッと力を入れて自分の方に引き寄せてそのままワルツを踊り始める。
「なんだよ、クラウスより俺の方が全然上手いじゃないか。ほら、ちゃんと俺を掴んで」「その調子!1、2、3…1、2、3」「まだまだ!このまま俺とずっと踊ろうか?」なんて言うのにクラウスと永遠に生きることを拒む男。
クラウスはこの後永遠にこのダンスの幻影にしがみついて生きなきゃならなくて、ただの化け物となってしまっても、アレンの思い出だけを糧にして生き続けるんだろう。

この行動自体は強引さがあるのにこの後一通り踊った後「永遠に生きるなんて寂しいじゃないか」「永遠の命なんて、いらない」と言い残してメリーベルのところに行ってしまうあたり本当に罪な男。
このダンスシーンでクラウスが「いい加減にしてください!」と怒鳴るのってこれ以上アレンのことを魅力的に思いたくないからだろうと解釈したんですけど、オタクの邪推すぎるかな。
こんなアレンが過去にいたらそりゃクラウスはぞっこんになるなという説得力が桁違いだった。
そしてずっと謎だったソフィを噛んだ後その場に放置して姿をくらました理由もよくわかる。
ソフィはあくまでアレンと血縁関係があるというだけで、アレンの死に際噛むことができなかったという後悔の気持ちさえ満たせればソフィはアレンとは全く違う人だからそこにいようがいまいが関係がないんだ。
あんな鮮烈な光を放つアレンみたいな人と今後出会えるわけがないので、クラウスのこれからの永遠に思いを馳せてしまう。


山田クラウス
陳内クラウスよりお茶目で明るくて抜けている。とっつきやすそう。
陳内クラウスは全てへの諦観があるからかおじいちゃんのようだけど、山田クラウスには子どもっぽさがある。
TRUTHでも思ったけど山田裕貴氏の声って柔らかくて無理に大きい声を出している感じがないのに舞台でスッと通ってものすごく聴きやすい。耳馴染みがいい。かなり舞台向きの声してるんじゃないかな。
陳内クラウスは耄碌したおじいちゃんのような怖さがあったけど、山田クラウスはアレンを失ってしまったことでネジが取れてしまった結果狂った怖さがある。山田クラウスの方がニタニタ笑ったり急に今にも泣き出しそうな顔をしたりと表情がコロコロ変わるので話が通じない化け物感が強い。
最後のシーンは何も感情がない顔でウルを燃やそうと近付いていくものの、死にかけのソフィに「ウルを燃やしたらただじゃおかないぞ!」って凄まれた途端今にも泣きだしそうな子どもの顔をするところが不気味で怖かった。
その後のウルがソフィに襲いかかっているシーンでもソフィに叱られるのが怖いからか泣きそうな子どもの顔をしてそれをじっと静観している。
山田クラウスの終盤ってかなり不気味で良い。
見た目は充分大人なのにすごく子どもっぽいことを言うから尚更そう見えるのかもしれない。

上にも書いたように今までずっとソフィを噛んだ後クラウスはどうしてソフィを見捨てて行ってしまうんだろうというのが疑問だったんだけど、今回のこのクラウスを見てそりゃソフィ捨ててどこか行くわ!ってすごい納得があった。だってソフィってあまりにも性格や容姿がアレンと違うから……
クラウスはアレンと「友達になりたかったんだ」と嘆いていたけど、あくまで友達になりたかったのは、人の話を聞いているようで聞いていなくて、でも無理やりダンスを踊るように勝手に自分の都合でこっちを振り回して、かつ恨むことができない眩しいばかりの魅力を持った“アレン”だから。
別人だからそりゃ当たり前だろと思うんだけどソフィはアレンの性格とはかけ離れているから噛んだ後は当然姿をくらます。

ところで陳内アレンとなりたかったのって本当に友達って言葉で合ってる?2人の関係ってもう、言葉にできない深い何かじゃない?
今回はアレンが魅力的すぎてメロメロになってしまったのでクラウスの気持ちに寄り添うことができるという稀有な体験ができた。


三津谷ソフィと西井ウル
2人とも比較的小柄でかわい〜!となりながら見ていたんだけど、キャラクターとして見たらダンピール故の発育不全か?とか邪推してしまい、どんどん暗い気持ちになっていく。
最初に見たソフィが三津谷ソフィなのでやっぱりこっちがしっくりくると思いながら見ていた。
西井ソフィはポメラニアンが一生懸命吠えている感じがあったけど、三津谷ソフィは猫ちゃんだよね。
あと西井ウルがかわいすぎた。
西井ウル、見た目の愛らしさも相まっていいところの子という説得力がかなりある。いつもニコニコしていてくりくりの瞳でこっちを見てくるような子。三津谷ソフィは涼しくて切れ長な目をしているから対照的だ。
少し舌ったらずなのもウルのかわいさの相乗効果でなんとかなっている。
そんな子が心にいつも重たくて暗いものを背負っていたの、つらくなる。その原因は主に兄上とパパリンのせいなんだけど……
ソフィがクラウスに噛まれた時のシーンが好きなんだけど、三津谷ソフィの絶叫はとにかくなりふり構っていられない雄叫びでかなり好きでした。ありがとう。


志尊ラファエロ阿久津アンジェリコ
見た目がめちゃくちゃ良かった!志尊ラファエロは地毛かな?
阿久津アンジェリコ、かなりしっくりきてた!
花のような見た目の志尊アンジェリコが北斗の拳のモブ敵みたいなヒャッハー挙動をしてたのと比較して、阿久津アンジェリコはキリッとした顔つきではあるけど言動は貴族としての品を保っていた。
いやアンジェリコというキャラクターがそもそも危ういのでそれもかなりギリギリではあるけど。
志尊ラファエロ、今まで見たどのラファエロと比べても一番ふわふわしている。気の強さや堅さがなくて物腰が柔らかいよね。
カチッとセットされていないふわっとした髪やあの丸メガネもその柔らかい印象に加担している。抱いていたラファエロ像とはかなり違ったけど、可愛いらしいラファエロも趣がある。
勉強ができるタイプの優等生って感じなんだけど、ちゃんと剣術も強くてすごい。というか志尊ラファエロが剣術も強いのってかなり意外だ。
瞳の大きさから意思の強さが感じられて良い。

池岡ガ・バンリ
ちゃんとソフィの名付け親兼おじさんとして見守ってる感のあるガ・バンリだった。
心強くて頼もしくて優しさが感じられる。
中屋敷さんはこのガ・バンリのどこを見て雷山を思い付いたんだ?あのヤバ・自己紹介の時のお歌?それならまぁ……仕方ないか……
ソフィと適切な距離は保ちつつ、でもとても親切な雰囲気が伝わってきて良かった。黒髪ストレートロングのガ・バンリ。
そういえばピエトロとガ・バンリがキャストチェンジするということは知識として知っていたけど柳さんにそれを伝えてたら「あ〜職業的にね……」って言われてそこでようやくヴァンパイアハンター繋がりか!?って気付いた。遅い。

近江グスタフ山口ミケランジェロ
前回の近江ミケランジェロがあまりにも可愛かったので今回のグスタフはどうなんだ?と思っていたらまさかの虚弱設定になっていた。えげつない厨二病だし眼帯はものもらいって言ってたけど本当にこの人繭期終わっているの?
一方山口ミケランジェロは美しさもありつつ強そうで生徒からもある程度慕われているっぽかった。
このグスタフをCOCOONの白銀の髪の彼が見たら解釈違いで気が狂って死ぬんじゃないか?
いやでもまぁ……その方がこの世界は遥かに平和だったかもしれません……

ダリ・デリコについて
前山ダリでも上鶴ダリでもあんまり変わらんな、ここの質感だけはな……
息子たちに自分のことをパパリンと呼べ!と強要してくるシーン、「こんなダリ・デリコは嫌だ。どんな?」の答えだった。
強いていえば上鶴ダリの方が茶番多め?上鶴さんが愉快な人だからかな。
ダリ・デリコって基本的に愉快な人しかできないよね。
今年のはじ繭で初めてTRUMPシリーズを知った人は現状この愉快でトンチキな親父であるダリ・デリコしか知らないの笑ってしまう。
グランギニョルとCOCOONみたらショック受けない?平気?

8/5 初演SPECTER

中山義紘:臥萬里
三好大貴:石舟
竹下健人:クラナッハ
松井勇歩:ヒューゴ
星璃:サトクリフ
吉本考志:バルトロメ
山田知弘:グレコ
井上拓哉:ノーム
村川勁剛:カルロ
中村圭斗:シャド
岩崎真吾:トルステン
有馬純:ワシリー
近藤頌利:ココシュカ
早川丈二:ロダン
丹下真寿美:ハリエット
永津真奈:ローザ
山浦徹:クラウス

というキャスト。
こうして初演を見ると全体的な味付けは変化していないものの、細かい部分はかなり違うなと思いながら見ていた。
特にクラウスに関する演出はかなり違う。かなり後半まで出てこない。
しかもカーテンコールが終わった後にクランから脱走したヒューゴ率いる彼らがクラウスを滅多刺しにするシーンをやるのは意外だった。再演では時系列通りに冒頭に持ってきていたので。
おそらく舞台が始まるまでクラウスが出演すると明かさず、キャストもシークレットだったのが関係しているんだろう。現在もホームページでキャスト一覧を見てもクラウスの名前をはじめ、クラウス役のキャストの名前すら出ていないし。
順番でいえばTRUMP→LILIUM→SPECTERだと思うので確かにそれなら明かされない方がワクワクするかもしれない。

序盤の方で石舟がマゾと明かされるシーンがあったんだけど、そうなると粗暴な臥萬里と一緒に行動している理由が再演とかなり変わってしまうのでウケる。
ノームを見ながら「奴隷にしたいぜ…」って言う臥萬里に「私ですか……!」ってちょっと嬉しそうに言う石舟のシーンとか好きだった。
臥萬里の言葉選びはこの10年でだいぶ乱暴の方にチューニングが合っているため、この「奴隷にしたい」とかもノームに対して堂々と弟子を取ると言うのは恥ずかしいけど、側に居られるのは別にかまわないくらいのニュアンスだと思う。
というか臥萬里に奴隷にされたいんですか?四つん這いになった背中とかに乗られたら嬉しい感じですか?

臥萬里ってこの10年で思ってること全部言う人になったのかなと思うとクラナッハに向けて言った「野暮ったい癖にやることはやってんだな」みたいなセリフもかなり納得がいく。
いやでも思ってても言うな。そんなこと。

ハリエットが産気付いてから小屋にいるクラナッハを呼んできて!眼鏡の男だから!と言われたノームが小屋に駆け込み「クラ…何とかはどっち!?」って訊いたらちょうど小屋にいたクラナッハとクラウスがおもむろにス……と手を挙げて「エーッ!?しかもどっちも眼鏡!」って言われるところ、めちゃくちゃ笑ってしまった。
すごい良いシーンじゃない?
再演でもやってほしかったな〜

笑ったシーンといえばやたら元気なトルステン。
イニシアチブ効いてんのか?って言われて元気いっぱい「効いてる効いてる❗️」って返すんだけどそんな……栄養ドリンクじゃないんだからさ……
トルステンも最後ずっと一緒にいたシャドにサクッと刺されて死んでしまった。

初演サトクリフはヒューゴにかなり感化されている印象があった。治安が悪い。性格的にはヒューゴと同じように荒々しくて乱暴。
これを再演では丁寧敬語キャラに全振りしていたの、かなり良いアレンジで好き。
再演サトクリフはヒューゴから一歩引いた感じでずっと接していたけど、初演サトクリフはヒューゴと対等に接している印象を受けた。

LILIUMの後に上演されたからかLILIUMを踏襲している場面がやはり多くあって、なかでもエリ・エリ・レマ・サバクタニの歌詞がほぼそのままセリフとしてあったのにはびっくりした。ここ再演でもあったっけ。
でもネブラ村の人たちにかなり合う歌詞ではある。エリエリ。
神と呼び崇拝していたクラウスに「じゃあ死ねばいいじゃないですか」と見放されてみんな死に、全て燃え尽きる人々のお話だからかな……

再演ではシャドは一番愛する人を殺してしまった後、突き刺すような目をしながら生き残っていたけれど、初演ではローザの遺体と共に炎の中に消えていくという変化があった。
ローザに村人を殺せと言われて躊躇っていたシャドが最後ローザのイニシアチブによってローザを殺そうとする村人たちに躊躇なく刃物を向けて大量に殺していったけれど、最終的にローザに「お前でいいや」と言われてローザのことも手にかけることになってしまうの、何度観ても可哀想。
ローザの中では、カルロ>>>>>>(越えられない壁)村人>>>>>シャドなんだなとまざまざと突きつけられる。
もうあんなことになってしまったら初演のように全てを終わらせるために死ぬしかないよね……と思うけど、再演で生き残る決断をしたシャドはこの先ダンピールとしての短い生を抱えてどう生きていったんだろう。

臥萬里の死に際のセリフ「世話の焼けるクソガキだぜ」は再演では無いみたいなんだけど、つくづくいいセリフだ。
この10年で臥萬里はガラッと言動が変わってしまったんだろうけど、隠しきれない優しさっていうのは随所に滲み出ていて、このセリフなんてまさに臥萬里の口の悪さと優しさがいい塩梅で成り立っている。

どうやら初演と再演で最後生き残った石舟とノームのやりとりのセリフが違うらしく、

初演
「死んだ人間の名前です。あなたはそれを背負うと」
「……亡霊とは、死んでいったものたちが生きていくものに託す想いだ。僕こそ亡霊だ」

再演
「死んだ人間の名前です、あなたはそれを背負う」
「そんなんじゃないよ。この名前は僕を護ってくれた人の名前だ。だから僕も、この名前で、誰かを護るんだ」

となっているらしい。どっちもいいけど初演には亡霊にノームという名前の意味もかかっているような気がしていいよね。この物語は名前を大事にしているから尚更。
ノームもなんだかんだ臥萬里に褒められた名前ではあるし、臥萬里がノームに託した想いを継いでノームは臥萬里を名乗ったので、「死んでいったものたちが生きていくものに託す想いだ」という解釈はかなりしっくりくる。
臥萬里はもう自分の前で誰一人殺させやしないと決意してノームを守り抜いて死んでいったわけだし。

そのノームはガ・バンリを名乗ってクランで呆気なく死んでしまうけど、それでも臥萬里の名前に恥じないように生き抜いていたよ。

8/6 グランギニョル

ダリ・デリコ:染谷俊之
李春林:東 啓介
歌麿:松浦 司
マルコ・ヴァニタス:栗山 航
アンリ・ガトー:藤木 修
オズ ・ローナン:大久保祥太郎
キキ・ワトソン:田村芽実
ジャック・ブレア:服部武雄
執事ハンス:池村匡紀
情報屋黒猫:菊池祐太
レイン中級議員:吉田邑樹
ダミアン・ストーン:日南田顕久
スー・オールセン:田中真琴
スチューデント:後藤菊之介
フリーダ・デリコ:愛加あゆ
バルラハ・ベル:窪寺 昭
ヨハネス・ヴラド:陰山 泰
ゲルハルト・フラ:三浦涼介

というキャスト

何回見ても後半にかけての展開が壮絶だし、ずっと作画が枢やなだった。
こんな綺麗な人たちを無料で見ていいんですか!

殺陣が最初から最後までかっこよかった。
アクロバットできる人がいると画面が一気に華やかになる。
色々感想を読んでいたら「マルコ・ヴァニタス役の栗山さんがべらぼうに殺陣が得意な人なのに弱々しい性格で全然戦わないから何か裏があるキャラクターなんだろうなという察しはついていた」というのを見かけて、そういう見方があるんだ!?と驚いた。
でも確かにマルコ(ウル)、本当に動きが綺麗だったよね。特に片手で剣を扱う時の動きはフェンシングのようで美しかった。

マルコ(ウル)、ダリちゃんに仕えているときはダリ卿のことを従順に「ダリちゃん」と呼び、明るく元気で、椅子にされても文句の一つも言わずに受け入れ、傍若無人な態度でも気にせず、ダリちゃんが繭期になっても素早い椅子としての勤めを果たしていたので報酬とかかなり上乗せしてあげて欲しい。
ダリちゃんも結構気に入ってたでしょ、マルコ(ウル)のこと。
ダミアン・ストーンの性格が移されても元の人格が消え去るわけではなくて、おそらくウルの頃の人格や記憶とある程度混ざり合うんだと思うんだけど、こういうダリ卿へのあたりをみるとよっぽどウルの人柄が良かったんだろうな。

今回はミュージカルじゃないけど歌姫である愛加あゆさんや田村芽実さんが出演していたからか2曲も歌声が聴けて贅沢だった。
TRUMPシリーズではちょこちょこあるけど、人のために歌うというシチュエーションが好き。
アンリのために子守唄を歌うキキ、リリーのために少女純潔を歌うノク、ソフィに星の轍を捧げるウル(キャメリア)
どれも全部違う良さがある。

何かにつけて人々の匂いを嗅ぐダリ・デリコ、かなり猫ちゃんだった。
春林に握手を求められてその美しく伸ばされた指の匂いを嗅いでいる仕草なんか猫まんまでcute仕草。
そしてダリ・デリコって悪口を言うような人間では決してなくて、そんな悪口を言うような暇があったら正々堂々と本人に皮肉を言うような人間なので、ゲルハルトに対して咄嗟に出てくる悪口が「バーカバーカ!くるくる巻き毛!」になる。悪口の語彙が少ない。

ダミアン・ストーンTRUMPの横にいた人ならTRUMPの趣味嗜好とかある程度知っているはずで、残酷劇なんかお好みでないことは重々承知のはずなのにグランギニョルをおっぱじめてしまうの、どこかで確実に原初信仰者の変な思想が混ざっただろ。
そもそもダミアン・ストーンを継いでいる人はほとんどが原初信仰者だと思うのでそうなるのは妥当ではあるけど……原初信仰者ってダミアン由来じゃなくてもTRUMPは心臓捧げて喜ぶと思ってるような人たちだし……

ゲルハルト卿が君は僕で僕は君だ……を言っているところを見てめちゃくちゃアンジェリコのパパじゃん!ってと思った。アンジェリコって血は繋がっていなくても悪いところだけ引き継いでいる。
ゲルハルト卿は苛烈さとはかけ離れた人だけど、アンジェリコの苛烈さは誰に似て育った結果なんだろう。マルコ(ウル)?それともマリア?
知らないだけでゲルハルト卿はアンジェリコに強くあたってたりしたんだろうか。この辺はデリコズ・ナーサリーで明かされるのかな。

春林、手足が長すぎる。戦闘の時手足長すぎて持て余してない?あの長さがあるからこそ通用する戦闘スタイルではあるけど。
衣装も胴回りが体に沿うようにピタッとしているコートのようなものを羽織っており、スタイルの良さを際立たせていて美しかった。
メイクは頬の上の方にオレンジのチークを入れていたのが健康的で素敵。他のダンピールじゃまず見られないメイクだ。ダンピールって唇の色コンシーラーで消しがちなので、ポジティブダンピールならではだ。
歌麿の金のツンツン頭に吊り目も可愛いんだけど、特に動きやすいように足袋のような靴を履いていたのが素敵だった。
2人並んだ時の身長差があってこそ、この関係性は輝くよね〜
ポジティブダンピールと言いながらダブルピースするあたり最高だった。TRUMPシリーズのキャラクターにダブルピースするような陽気なやつ、ほとんどいないので……しかもダンピールだし。
弟子である歌麿は後天性吸血種で、乱暴だけど愚直で、それに対して敬語と敬称を忘れず丁寧に接しているの、いい。春林と歌麿の関係性嫌いなオタクいる?いないが?という感じだった。ここだけ連載誌が違う。
歌麿も春林と接するときは強気さもなりをひそめて、ただ言われたことに犬のように従うという設定もいいし、何よりも歌麿→春林へのイニシアチブによってこの関係性が完成するというのも美しい。
春林がダンピールの割には長生きだけどまぁおそらく短命でしょうと言っているところを見て寂しくなったので、春林にはネブラ村の村長くらい長生きしてほしい。
歌麿はいつ春林が死んでもおかしくないと思いながら行動を共にしてるんだろうか。
そもそもヴァンパイアハンターが危険と隣り合わせの仕事だからその辺の覚悟はできているのかな。

私が男女の友愛に弱いのは皆さんご存知でしょうが、だからこそキキとオズの関係性には胸を打たれた。
「僕は生きられないんだ。でもキキには未来が見える。だからキキだけでも逃げて」と言って逃すシーンも、オズの死の間際に「キキは今頃ちゃんと逃げられてるかな」と思いを馳せながら死んでしまうのも、愛じゃん……とグッとくる。
「いつか繭期じゃなくても愛せる人が見つかるといいね」とオズは言っていたけど、そんなオズと別れる時にキキは泣きながら抱きしめて「繭期じゃなくてもあんたたちのこと愛してるわ……!」って言う。そんなシーン嫌いな人いますか?
しかもこの後キキの血はマリーゴールドに繋がるのでキキは繭期を抜けてもちゃんと愛せる人を見つけられたところ含めていい。
ここ毎回あまりにも美しい友愛で泣いてしまう。

キキにちょこちょこマリーゴールドの姿がダブるような演出をするのが狡かった。
「もう泣かないと決めたの」と言うキキ、完全にLILIUMのマリーゴールドだったし、その後もう泣かないと決めたの曲もかかるしで胸がいっぱいになる。
そう言う彼女がオズとの別れのシーンではほろほろと涙をこぼしていたのには切なくなる。

ハンスのことずっと好きだった。
こちらですと言いながら親指を立てて首を切る仕草をする使用人。血気盛んすぎる。
あと「手紙?ラブレター!?ハァ〜〜〜↑!」(歌麿と片手ずつ手でハートを作る)のところも大好き。
なんで死んでしまったんだ。お前はこの後のデリコズ・ナーサリーに必要な人材だったよ。

レイン中級議員、こんなにイケメンなんだから他のキャラクターのように何か闇を抱えているんだろうと思いながら見ていたらただひたすらにイケメンであるだけの腕のたつ格好いい人だったので笑ってしまった。
もっとこの人のこと知りたいよ。

今回TRUMPのために!ってこんな凄惨なことが起こっているにも関わらず、当のTRUMPはネブラ村付近で猫を拾ってまったりしているのでかなり温度差がある。
グランギニョルで死んだ人はみんなTRUMPへの捧げものだけど、そのTRUMPはそんな生贄一つも欲していないので狂信者によって殺されたただの無駄死にでしかない。
そのためにあんな気高く優しく誇り高いフリーダ様が死ななければならなかったんですか?
ファルスであるアンリは出てきたけどクラウス由来のファルスではないため、一回もクラウスが出てこないというのも衝撃だった。
いや厳密には飾り的な感じで陳内クラウスは一瞬登場したけど……
クラウスがいなくても残酷劇は成り立つという事実。原初信仰なんて無くなってしまえ。

8/7 COCOON 月の翳り

アンジェリコ・フラ:安西慎太郎
ラファエロ:デリコ:荒木宏文(新木宏典)
ディエゴ・グラント:碓井将大
エミール(ウル):宮崎秋人
ジュリオ・ミラー:田中 亨
グスタフ:郷本直也
ミケランジェロ:鬼頭真也
ジョルジュ:大久保祥太郎
モロー:池村匡紀
ドナテルロ:細貝 圭
のキャスト

エミールの苗字を失念した……
COCOONって同じ期間に日替わりで月の翳りと星ひとつを公演していたらしいんだけど、共通かつ重要キャストであるラファエロ役の荒木さん、エミールとウルを演じた宮崎さん、アンジェリコ役の安西さんの稽古量の負担たるや凄まじかっただろうなと思う。
単純にセリフ量や覚えなければならないことが2倍あるわけだもんな……役者さんってすごい仕事だ。

クランの中に「貴族狩り」とかいう組織があるの、怖すぎるでしょ。ジョルジュとモローは何やってんだ。圧倒的な娯楽不足だよ。不良漫画の世界観か?
ディエゴやジュリオ、ラファエロやアンジェリコは特級&上級貴族の中でもかなり腕が立つので問題ないけど、エミールとかは戦闘シーンでやられる一方だったのでこういう貴族狩りみたいなやつらに対抗するのは難しいだろうな。
こういう貴族狩りから救ってくれたのがディエゴとジュリオで、それが3人の出会いだったらアツくないですか?

ドナテルロに対しては処女厨みたいなものだよね……と思ってたけどそう考えると気持ち悪さが増しますね。
ディエゴに対してお前の繭期はそんなものか……って突き放してたのに、ディエゴが自の聡さで本質的なことを突いてきたらすぐに「ディエゴ、君は僕だ……♡」するし、「グスタフだ♡」ってなるその切り替えの速さには感動すら覚える。ソフィにアレンを重ね合わせるのはまだ血縁関係があるからで納得できるけど、ディエゴにグスタフ重ね合わせるのはマジで意味わからんからな。
しかもこんなめちゃくちゃやっておいて月の翳りが終わった後も幸せに生きているんでしょう?報われないよ……

しかしジョルジュとモローは肝が据わっている。ディエゴやアンジェリコにボッコボコにされても何度でも立ち上がって自分の意思で挑もうとする姿勢は清々しさすらある。
しかも二重イニシアチブにも耐える男たち。
でも後で色々読んでたらダンピールって吸血鬼の混じり物だからアンジェリコの気持ちが強いのもあるけどそもそも純血より圧倒的にイニシアチブの威力が弱いのでは?というのを見て空虚な気持ちになった。
アンジェリコのことを「アンジェリコ」って呼んだら凄まじい剣幕で怒鳴られたところは不憫すぎて思わず笑ってしまった。
アンジェリコにイニシアチブを取られたシーンで「自分の意思で僕に従え」と言われて2人は跪くんだけど、結局これすらもアンジェリコのイニシアチブの影響下にあるんじゃないか?とか考えるともうキリがない。
ただちょっと喧嘩っぱやかっただけでその後の人生に甚大な被害が出た男たち。不憫。

キャスパレが本当に美しくて天才かと思った。
TRUMPシリーズの舞台のキャスパレってミュージカルともまた雰囲気が違ってすごく好きだ。
再演SPECTER、グランギニョル、COCOONあたりの美しさたるやすごいものがあるよね。
キャスパレでみんながそれぞれの形でお辞儀をするシーンがあるんだけど、そこでのディエゴのお辞儀が大仰なくらい綺麗で惚れ惚れしてしまう。
パキッパキッとお辞儀する人もいて、それも貴族仕草だなと思うんだけど、ディエゴのお辞儀は貴族としての余裕が感じられるゆったりとした美しいもので好きだ。
ディエゴはおそらく自力でこの美しいお辞儀ができるよう身に付けたんだよね。それってもう心身ともに貴族ってことなんじゃないのかな。
ディエゴは父親のイニシアチブをとってグラント家を乗っ取ったわけだけど、そこからは本当の息子のように愛してもらっていたし、その愛に応えようと懸命に貴族の勉強をしたんだろうなというのが垣間見えるシーンだった。

ディエゴのことを考えると苦しくなっちゃうよ……この月の翳りの裏の主人公は彼だよね。
養護院出身で家名のある父親をイニシアチブで操っている、愛されたけどそれは父親本人の意思ではない、自分はこの家にいるべき子じゃないので家を継げるわけもない、そもそもダンピールで長生きできないという葛藤を抱えながらなんでもない顔をして過ごしていたわけでしょ。
本来自分のアイデンティティはどこにある?って考えることって思春期によるあることだと思うけど、ディエゴの場合は生い立ちもあり人一倍その思想が強く、だからこそドナテルロに目をつけられてしまったところがある。
でもディエゴは腕が立って、賢くて、カリスマ性があって、顔も知らない生徒から握手を求められるくらい人気者でって事実は紛れもないディエゴのアイデンティティだったはず。
まぁディエゴにとっては築き上げた虚像の一つだったんだろうけどさ、そこに自信を持って良かったんだよ……
握手してる時は本当に嬉しそうなニコニコした顔をしているけどそれが自信になってないってことは握手した後、毎回自己嫌悪とかに陥るのかな。
終わってしまった後ならどうとでもいえるけど、ディエゴはウルと苦しみを分かち合えるいい友人になれたんじゃないかな……
いやでもウル以上の業を背負っているので流石に分かりあうのは難しいか。こじれるか。
ずっとジュリオとエミールと一緒にいられればよかったんだけどね……エミールならディエゴのこと赦してくれたんじゃないかな。秘密を受け止めた上でディエゴが本当に欲しい言葉をかけてくれたんじゃないか?越繭さえしていればディエゴの聡さが良い方向に働いたんじゃないかなと思うけど、そもそもダンピールであることを考えるとそれすらも難しかったのかな。
もっとどうにかならなかったのかな……

ラファエロ、あんた……あんた……ずっと父親の言葉に縛られて生きているじゃないの……と苦しくなる時間が多い。
でもそんな風にがんじがらめになって生きているラファエロのことをアンジェリコは愛していたし、そんなラファエロだったからこそ未来も一緒にいられるはずだと信じていたんだろうな。
ラファエロは最初からアンジェリコを見下すようなニュアンスの言動が多くて、特に「俺が上でお前が下だ!」のところなんて普通だったら感じ悪……友達付き合いちょっとよそうかな……くらいの言動にも関わらず盲目なアンジェリコはここで「お前ってやつは昔から負けず嫌いだ」(ニコニコ)で返しちゃうので最初のフィルターのかかりようったらとんでもないし、それはそれとしてラファエロは人と仲良くしなさい。
こういう言動もおそらくダリの教育の賜なんでしょうね……
作中ラファエロはディエゴという革新的な男に出会って、家柄に縛られる生活を送っていたという苦悩もありすぐに虜になってしまうんだけど、ここって作中で信念や気持ちが揺れていたツートップだよね。なので最終的に“ウル”を選んだという以外はラファエロのここの気持ちは必ずしもこうだ!って断言するのはかなり難しい気がする。
アンジェリコに対しても全く気を許していたわけじゃないけど、「僕たちは父親に愛されたかった」と明言された瞬間だけは強く心が揺らいでいたので本心はそこにあるんだろうな。
それに「お父様は自分の跡取りの道具としか俺を見ていない」と思い続けながら生きるのってすごくしんどかっただろうし……
だからこそ、そのお父様の愛情を一心に受けて育ったウルが憎くて、でも愛おしくて、守らなければならないという気持ちはあって……と大混乱しながら過ごしたんだよね。ウルの幻覚が見えた時他の生徒と話すときには全く見せないような笑顔で話しかけていたのはもう反射なんだろうな。
アンジェリコと天秤にかけるシーンでウルに手を伸ばして生まれたばかりのウルを初めて抱いた時を思い出してウルを選ぶシーンだけがかすかな救いかもしれない。
しかしその当のウルは兄に愛してもらったという自覚はない……

アンジェリコ、ずっと君は僕であり僕は君だ……の姿勢で一貫していたけど、これゲルハルト卿もやってたしウルもやってたんだよね。家族って……血って……と考えてしまう。
かなり冒頭でウルの名前を失念していたところや、「僕は兄弟がいないから(ラファエロが)羨ましいんだ」と朗らかに言っていたシーンですでに心臓が変な動き方していた。ウルって実は……種違いのあなたの弟で……あなたも実はフラ家の血なんてひとつも流れてなくて……
その家族の中でも一番苛烈なのってアンジェリコだよね。
安西アンジェリコ、見た目の高貴さを残しつつ、目をかっぴらいて「クズクズクズクズゥ!」ってヒステリックに叫んでいるのがものすごく似合うので見ていて惚れ惚れする。
実際貴族としての自覚やプライドが強すぎるあまり、差別意識がものすごく強いのもいいよね。アンジェリコには特級貴族で幼馴染の僕さえいれば良いのになんで他の取るに足らない奴らと話すんだ?という気持ちが痛いくらい伝わってくる。
特に「囀るな!下賎な者共め!気安く僕に話しかけるんじゃない!」の部分、いくら貴族として生きてたとしてもそんな言葉が咄嗟に出てくるような生活って、何?と思って圧倒される。
特に身元を明かしたディエゴに「僕には、フラの血が流れてる」と言ってマウントを取るシーンがあまりにも酷すぎてなんでそんなこと言うの……まぁアンジェリコなら言うか〜……の気持ちで吐きそうになっていた。
君に、フラの血は、流れて、いません……
「血よりも価値のあるものがあったら証明してみろ!」って言うけど、アンジェリコ本人がその体現者なのどういう皮肉!?すごいカリスマ性と自己暗示力と努力でここまでのし上がってきた男。結局は気持ちが強いものが勝つ。
でもその実身内にはめちゃくちゃ甘いのでラファエロがどんなに貴族に相応しくないことを言っていてもギリギリまで許してしまうのが極端。許すというか、自分を認めてもらいたいという感情の方が近いのかもしれないけど。
アンジェリコは父親に認められなかった分これから同じ位の高い貴族としてやっていくはずのラファエロに全てを賭けてたんだろうなと思うし、全てを受け入れようとしたし、そこにも僕たちはお父様たちみたいにならなければいけないな!という貴族意識が強くあったが故だろうと思う。
父親に避けられて生きてきたからこそ貴族であり続けねばならないという強迫観念が生まれたんだろうな。
結局立派な貴族になって父上に認められたいという願望の延長でしかない。
最後の選ぶシーンでは「僕を選べ!僕を選んでくれ!」と嘆願していた時点でウルに軍配が上がっていた。願うということはラファエロはウルを選ぶだろうなというのがなんとなくわかっていたからすることでしょう。
ここからアンジェリコは狂ってしまう。

ジュリオ、何度見てもべらぼうに可愛いな。
そもそもビジュアルが100点満点。何あの魅力的な見た目……そして一人称はボクちゃん。あざとさグランプリNo. 1狙ってる?
なんでも素直に言葉にするエミールの横で素直になれないところも可愛かったよね。でもディエゴに「一緒にいられて楽しかった」って言える前に離れ離れになってしまったのはやるせなかった。もうこの後の人生でディエゴに会える可能性なんてないもんね……
TRUMPシリーズは往々にしてこういうことがあるので、素直な性格の人が得をする。
特にエミールが僕のことウルで良いよとラファエロに言うシーンでは善意100%で「じゃあボクちゃんもウルだ」って言ってくれるところ大好き。優しいねぇ。ウルがいっぱいいた方がラファエロにとってはいいと思ったんだもんねぇ。可愛いねぇ。
それに対して「いや、お前はウルじゃない」ってマジレスされてしまいますけど……

エミール、ふわふわした喋り方とぽてぽてした動きが可愛くて大好きだ。お辞儀する時首を傾けるようにするのもお人形さんみたいで良い。
一貫していて何が起こっても「この世界は希望だよ」「友情はあるんだよ」と伝えているの、未だかつてないタイプですごい。
アンジェリコにクズクズ言われた後怒りも悲しみもない声色で「アンジェリコ、この世界には希望しかないんだ」というシーンでは寛大すぎて菩薩かと思った。
未来を悲観するのも、今起こってることに絶望するのもすごく簡単なんだけど、エミールは感情の起伏は出さずにそのドス黒い運命に争い続けている。ディエゴとジュリオと自分との間にも、ラファエロとアンジェリコの間にも友情はあるし、ラファエロはきっとウルを守れる。ウルだってなんだって守れるよ。そう言葉にして信じ続けることがどれだけ難しいか。それができなくてみんな関係が破綻してしまったわけだから……
そしてこのパターンで生き残るのでTRUMPシリーズではかなり稀有な人。
エミールのこの考え方って能天気とか楽観的とかそういう類のものなんだけど、ここまでくるとそういうのも突き抜けて信念であり、かっこいい。
「ぼくはウルでいいよ。ウルが必要だからラファエロには僕がウルに見えてるんだろうし」と微笑む彼がラファエロがウルとアンジェリコどちらか選ぶシーンでは「ぼくはウルじゃない……」って言うの、趣がある。どちらもエミール由来の優しさから来ている。
最後友情を信じ続けていたエミールは自分がウルに見えることでアンジェリコとラファエロの間に友情なんてなかった証明に使われてしまうけど、それでもなお庇ってディエゴの前に立ち塞がって刺されてしまう。エミールはそうすることでしか友情を証明できないから……でもここで「エミール、ごめんな」ってディエゴが言えたなら確かに友情はあったんじゃないかな……ねぇ……
エミールって物語の最初から最後まで本当に繭期?ってくらい一切のブレがなくて、大人の吸血鬼に比べてもかなり達観していたと思うんだけど、エミールの繭期の症状ってなんだったんだろう。
この穏やかで感情の起伏がなく、いつも希望に満ちている精神状態が繭期の症状だったら凹んでしまう。
物語の最初から最後まで「この世界は希望だ」と言い続けるエミールがラファエロにはウル(希望)に見えてるの、ものすごく良くない?良い。

血が飛び散る代わりに赤い花びらが舞う演出、あまりにも美しくて良かったですよね。
COCOONはみんな衣装が白いから赤が映える。
そんな白の衣装に包まれたうちのラファエロとアンジェリコは最後の決闘のシーンで真っ赤な衣装を着てくるのがあまりにも美しい。決別の赤。怒りを通り越した、血よりも赤い色。
そして負けてなおラファエロに縋りつこうとしたアンジェリコが残されて慟哭するシーンで上から溺れそうな量の花びらが落ちてくるのが幻想的だった。
その後ろで「昔の話だよ。泣き虫アンジェリコはもういない」って声が聞こえるの、あまりにも酷な終わり方だ。

8/8 COCOON 星ひとつ

ウル・デリコ:宮崎秋人
ラファエロ・デリコ:荒木宏文
アンジェリコ・フラ:安西慎太郎
ソフィ・アンダーソン:三津谷 亮
ガ・バンリ:木戸邑弥
グスタフ:郷本直也
ミケランジェロ:鬼頭真也
ジョルジュ:大久保祥太郎
モロー:池村匡紀
クラウス:陳内 将
ダリ・デリコ:染谷俊之
のキャスト

グランギニョルのラストシーンであるダリが赤子のウルを抱いて「負けるな」と言っている後ろで、成長したウルが登場する演出から物語は始まる。

レイン中級議員が14年経ったことによりレイン上級議員に昇格していて嬉しかった。相変わらずお美しいですね……
ウルの遺体を見たときレイン上級議員は涙を拭うような仕草をしていて、この人ももしかしたらウルやラファエロの子育てに関わってきた人なのかなと思いを馳せた。
デリコズ・ナーサリーに出演ありそうですね。

ガ・バンリ、見た目が大優勝。あのリボンと一緒に編み込まれた髪の毛何?毎朝自分でリボンと一緒に編み込んでるの?大変じゃない?可愛すぎる。
あと吸血種の人々よりもキュッと尖った犬歯をしていてよかった。確かにこれなら吸血種に紛れてもカモフラージュできるかも。

自己紹介時点からフルスロットルで面白かった。24歳にもかかわらず14〜18歳の子たちに対してキレッキレ。
「クソガキどもと馴れ合うつもりはありません」って宣言するガ・バンリは明確に臥萬里の姿を見て成長した子だった。
こんなキレッキレで尖りまくっている転入生に突然慈愛の微笑みを向けられてポカンとするソフィのシーンは少女漫画かと思った。こんなの一介のにんげんだった途端メロメロになってしまうよ。
そしてソフィを見てボソッと「姉さんに似ている……」とか言う。
任務だったから必要以上に近寄れなかったけど、本当はソフィを見てめちゃくちゃ可愛がりたかっただろうし、頭撫でたり抱きしめたりしたかったんじゃないかな。
なんだかんだガ・バンリがソフィに触れられたのは瀕死の状態でクラウスのもとから這いずり出てきたソフィを抱き止めたところのみだったね。
こんなことがなければ一生ソフィに会うことがなかったかと思うと、自らソフィのもとに行くと志願してくれてありがとう……という気持ちになる。
ソフィたちがアンジェリコのお友達諸君に絡まれている時「世話の焼けるクソガキだ!」って言いながら戦っていたところで胸が熱くなった。臥萬里の死の間際の言葉は、その精神性はガ・バンリの中でずっと生き続けている。
その命が終わるまでガ・バンリは真っ当にソフィを愛していた。
狂気に溺れたクラウスが死にかけのソフィに「アレン、アレン。永遠を望みなさい」と言っている間も丁寧に丁寧に「それはアレンじゃない」と諭し続けていた。本当はクラウスの側にいるソフィを奪いたかったけど、動くとソフィがどうなるかわからないから至極慎重に、でも確実な正論でクラウスを説得していた。
自分が貰った一番価値のある美しいものをあげたソフィをずっとソフィとして愛し続けたただ一人の人だった。
ソフィのその生い立ちや叔父からの愛が少しでも伝わっていたならソフィの未来は変わっていたのかな。

地下の書庫でソフィとウルがTRUMPについて会話するシーンで、「僕はTRUMPになりたいんだ。繭期のまま永遠に生き続けたい」「たった一人でか?」「君も一緒にいてくれる?」と話すところで胸がいっぱいになる。
結局繭期のまま永遠にたった1人で生き続けることになったのはソフィでしたね。君も一緒にいてくれる?って言ったウルから先にいなくなってしまった。
そして「じゃあかわいい女の子をたくさんだ!」って言ったウルの願望を叶えるようにしてソフィがウル(薬)を作り出し、少女たちを永遠の繭期に陥れたので、ここのウルはサラッと業の深いことを言っている。

ジョルジュとモローはアンジェリコに噛まれてかなり絶望的な状況だったはずなのにかなり楽しそうに生きていてかなり図太い。生きる才能がある。
アンジェリコとの関係も月の翳り以降3年かけて良好に築いてきたんだろうなというのが見てわかる。
アンジェリコのことをツンッ……ってして「オ〜ン……」とか言っても、剣の授業で負けてしまって跪くアンジェリコに近寄って行ってもお咎めがない。
以前のアンジェリコなら「下賎のものが僕に気安く触れるなァ!」ってヒステリックになっていたはずなのに。
ヒステリックさに関しては月の翳りより圧倒的に増しているけど、ジョルジュとモローはその対処法も3年でかなり心得たんだろうな。
アンジェリコの登場のパンクでロックな曲でゴリゴリ踊るシーンかなり好きなんだけど、ジョルジュとモローがアンジェリコの脇を支えてアンジェリコがちょっと飛ぶ振り付けが愉快で大好き。何回でも見たい。
でもウルを刺して狂ってしまったアンジェリコを見て怯えた顔をしているモローが映ってるシーンかなりよかった。
ずっと付き従っていた者ですら恐れをなしてしまうアンジェリコの狂気。
そしてアンジェリコとついでのように燃やされてしまうジョルジュとモロー……なんて不憫なんだ。
ジョルジュとモローの親の気持ちを考えるとゾッとする。ジョルジュとモローにも家族がいたかもしれないのに。
この2人は燃やさなくて良かったんじないか?って思ってしまうけど、クラウスには関係のないことなんだろうね。それでも教師か。

アンジェリコは月の翳りがあってからラファエロと確執があるのでウルのことを異常にこき下ろすし、ウルの死因である刺し傷を作り出した人だけど、その子血縁的には君の弟だよ……という気持ちがずっとあった。
アンジェリコは憧憬してたラファエロに見放され、大人になることもなく何が何だかわからないまま身体が燃えて、骨すら残らずフラ家の墓にその遺骨が埋葬されることもなく消失したけど、フラの血が自分に流れておらず、ダンピールであるウルと血が半分繋がっているということを知らずに死んだのはアンジェリコにとって幸福なことだったのかもしれない。
ラファエロが死んでから夢から覚めたように「僕が殺すはずだったんだ。いや違う。死んじゃダメだったんだ。僕とあいつは同じく血盟議会をおさめるものだったんだ……」と呻いていたところが全て手遅れで哀れで愛おしいよ。

ダンピール孤児院の院長がダミアン・コピーなんだけど、あまりにも至る所にダミアンコピーが存在しているので、そのうち地球上の人のほとんどがダミアンになるのかもしれない。ダミアン・世界征服。
グランギニョルを捧げるのもそこそこにクラウスがいるクランにソフィを送り込んだのはクラウス的にはかなりファインプレーだったのでは。
ダミアンから嬉しい贈り物貰えてよかったね。ここでソフィが送られなければ全ての惨劇はなかったはずだけど。

ダンピールだとバレることはデリコの家名に傷がつくことだから、お父様の名誉を傷つけるようなことはあってはならないと言い含められて育ってきたウルの情緒が安定しているはずがない。
全く血縁関係のないウルを引き取って育てたという点ではダリは賞賛に値するけれど、常に自分を否定されてきたウルの気持ちはどこにあったんだろう。
ウルにとってはずっと抑圧されてきたに過ぎないんだろうけど、そんなウルすらラファエロにとっては父の愛を奪った子に見える。愛って一体なんなんでしょうね。

そんなウルにとって、ダンピールであることを卑下せず、卑屈にならず、高潔で誇り高く孤独であり続けるソフィはどんなに眩しかったか。
ソフィと仲良くすることで、肯定することで、自分を重ね合わせることでウルはダンピールである自分を愛することができたし救われていたはず。
ソフィに「僕がいるだろ!君は1人なんかじゃない!」と言う時、ウルは僕をひとりにしないで!と言っていたはずなので。
でも側から見れば血統書付きの猫ちゃんが野良猫と関わってるようなものだもんな〜……周囲はあんな子と関わってるの!?って心配しちゃうし、ラファエロも自分さえいればウルには何もいらないはずなのでなんでそんな下賎な者と関わっているのか一切理解できないと思ってのことだったんだろうし……

そのラファエロは弟に拒絶され、「兄さんこそ僕に関わらないでくれ!父さんの言いつけだから!兄さんには自分ってものがない!」と言われるけど、一応刺さってはいるものの、ラファエロはもう月の翳りで何を言われても誰よりもウルのことを守り抜くと決めたからその程度の言葉じゃ揺らがないことが伝わってきた。
月の翳りを見た者からすればその気持ちの割り切りに感動するけど、ウルからしたら兄の感情が読めず自分の嫌なことしかしない人でしかないという差が悲しい。
その後名案のように「そうだ!ソフィみたいに僕もダンピールであることをみんなに明かせば!」と言った直後ラファエロにビンタされるところでウルは決定的に兄のことを信頼できない人という認定したんだろうな。
ラファエロも手を出すはずなんてなかったので動揺するけど、逆にぶたれたウルは一切の動揺を見せずにジト……とした目でラファエロを睨みつけるだけの対比。
もう限界だったウルが自分がダンピールだと告げてしまったことを知ったダリが「失望したぞラファエロ!ウルの秘密を守りきれんとは!行け!デリコ家の恥晒しが!」と言ったのがラファエロとの最後の会話になるんだけど、こんな酷なことある?
この後後悔したダリはガ・バンリに自分のこと殴らせるけど、その後悔は子どもには何も伝わらない。
その後ラファエロダリと鉢合わせて、他の議員が「何か応援の言葉をかけてはいかが?」と告げてもダリは後ろめたさからか何も言わずに立ち去ってしまうけど、これがダリと会う最後のチャンスになってしまったな……
ラファエロにとってはもうあまり余命がない弟がどうか安らかな最期を迎えられるように自分が守らなければならないという気持ちだったんだろうけど、結局ラファエロの方が弟より先に燃えて死んでしまうので何も残らない。ウルも兄への憎悪を残したまま死んでしまう。
最後まで父親に労われることもなく、抱きしめられることもなく、デリコ家の墓に骨を埋めることもできず、ラファエロは1人で死んでいった。

ダリ・デリコ、息子たちにいらん言葉しかかけられない。
ウルに「ダンピールのようなクズと関わっても碌なことにならない」とか言うし、ラファエロに「ウルのこと躾けとけ」とも言う。しかもこんなことを言っておいておそらく本人は息子たちの元気そうな顔を見られたしちょっと会話もできて良かった〜!と思っている。
クラウスにラファエロもウルもあなたに似ていないと言われた時「ラファエロは母親に似た。ウルは……俺に似て男前だ」と返すところ、ダンピールかつ全く血の繋がっていないウルが自分に似ていると言うのは愛に溢れていて大好きなんだけど、その愛が一切子どもに伝わっておらず、その子たちは2人とも自分は父親に愛されなかったという確固たる悲しみを抱いて死んでいったのでどうしようもない。

クラウスとダリの会話で「ソフィが望んだら永遠を与えるつもりです」「望まなかったら?」「私に2度も失えと言うのですか!?」と言うところがあるけど、もうこの時点で何があってもソフィのことを噛むというのはクラウスの中で決定していたんだというのがわかる。
クラウスとしては自分も被害者であるという意識なんだろうけど、ソフィからしたらたまったものじゃない。
その後もTRUMPに会いたがるウルに対して「ソフィはTRUMPです。そして君もTRUMPです。みんながTRUMPなのですよ」と言うクラウス、ふざけたことを……と思うけど、今までこうすることで全てうやむやにしてきたんだろうな。

この作中ずっと死に怯えていて、だからこそTRUMPを求めたウルだけど、瀕死の時にソフィがウルを抱きかかえて「僕が君を助けてやるからな」と言ったときも、ソフィじゃ不死にする力がないとわかったときも同じ穏やかな顔をしていた。
これって最後の最後にダリのイニシアチブが勝ったということなのかな。
そしてCOCOONはREVERSEがないので「もし生まれ変わることができたら、僕は、君に、」と言って事切れる。この2人が入れ替わることはできないからウルの世界はここでプツンと終わる。
その後まだ痛覚が残っているはずなのに、焼け落ちていく建物からウルの遺体を覆い被さるようにして守って、最後ウルの手まで組ませてやったソフィが大好きだ。親友を最後まで美しい姿のまま残してくれた、高潔で誇り高い少年。

カーテンコールでソフィがウルの死に際を看取った時にしていた抱くような手の形のままお辞儀をしているのも美しくて好きです。

今回見て気付いたことは、LILIUMのソフィって思いの外COCOONのクラウスまんまの言動をしているってことだった。
自分が最も憎んでいた人にどんどん近付いていっていくなんて正気を保てなさそう。自分の発した言葉にダブるようにクラウスの顔が重なったりするのかな。そりゃソフィは狂っちゃうよね。
リリーはこの負のループから抜け出せるのかな。黑世界はせいぜい不死になってから200年くらいの話だと思うので、1000年以上経った時、果たしてリリーは正気でいられるんだろうか。

ダリ・デリコとゲルハルト・フラは子育てに失敗して最も最悪な結果を招いたというのは周知の事実であるし今回のはじ繭SUMMERはその愛と失敗ピックアップだったけど、その上でアニメではどういうストーリーや演出をするのかが気になる。
みんなどうせ死ぬしな……と思いながら見るわけだけど、おそらくそれだけでは終わらないはず。
いつ放送かもキャストも出てないけど楽しみ。

「俺は特級貴族ダリ・デリコ!何?貴族の俺が子育てだと?フン、やってやるよ、見てな!アニメ、デリコズ・ナーサリー!○月○日放送開始!」みたいなCMが今後始まるんだろうけど、このCMをみんなどんな気持ちで見ればいいんだろう。

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