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【特別公開】一人暮らしの歳時記 6月

【注意】この記事は、自由炊事党機関誌「自炊のひろば」第3号に掲載されるはずだった(が諸々間に合わなくて発行中止になってしまった)記事を、特別に公開するものです。都合により予告なく公開範囲を変更しまたは公開を取りやめる場合がありますので、ご了承ください。

6月

カツオ

初夏になるとスーパーの鮮魚売り場に生のカツオが並ぶ。解凍品のたたきは通年食べられてハズレがないが、生のカツオを見ると夏の訪れを感じて食べたくなる。一度だけ、水っぽくてまったく味のしないハズレを引いたことがあるが、懲りずに買ってしまう。
生のカツオはそのままではやや水っぽくて鉄臭いから、漬けにすることが多い。醤油と料理酒を同量混ぜた漬けダレに一晩漬け込んで、丼にして食べる。青唐辛子を漬けておいたべっ甲醤油にすれば、爽やかな辛さのべっ甲漬けにもなる。
友達を呼んで、島寿司を作ったこともある。伊豆諸島の名物で、大島風にべっ甲醤油で漬けたピリ辛のべっ甲寿司と、八丈島風にみりんを利かせた甘いタレに漬けて洋辛子をのせて食べるものと、二通り。本当はシマアジやタイなど新鮮な白身で作るのだが、カツオは醤油ダレと相性が良いからなかなか美味しくなるものだ。
素人が握った寿司は大きくてかたい。それでもタネが美味しいからなんとか体裁を保ってくれる。物珍しさもあいまって、あっという間に皿が空になった。
もう一つ、カツオの漬けで毎年欠かせないのがカツオの手こね寿司だ。弁当にナマ物が良くないことは重々承知だが、なぜか毎年弁当に持っていってしまう。
大葉やミョウガなど、薬味がスーパーに並び始めると、そろそろ手こね寿司の季節だと思う。硬めに炊いた米に砂糖と酢を混ぜて寿司飯を作り、漬けタレも混ぜ込む。ご飯が一合くらい入るタッパーを弁当箱として使っているから、2/3くらい寿司飯を詰める。千切りのきゅうりを散らし、カツオの漬けを敷き詰め、千切りの大葉やミョウガ、刻んだ生姜を散らしたら出来上がりだ。

カツオの手こね寿司

よく冷ましてから保冷剤をたっぷり入れた袋に入れて持っていき、職場に着いたらすぐに冷蔵庫に入れる。頭の中は手こね寿司でいっぱいだが、なんとか昼まで耐えて冷蔵庫から取り出す。冷えた米は美味しくないから、解凍モードで少しだけ温めて食べると、タレの染み込んだ寿司飯に、漬けのカツオの食感と旨味、そして薬味の爽やかさが合わさって素晴らしい。本場のものを食べたことはないが、「風」を作るだけでも大満足だ。

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