レトルト三角関係　＃毎週ショートショートnote

　自分で言うのもあれなんだけど、アタシはモテる。今も、アキラとユウキが「あーん」と言いながらスプーンをこちらに差し出して「どっちが好き？」なんて訊くから困っている。

　アキラは、仕事が忙しいらしく何日も会えないことなんてしょっちゅう。コンバットレーションとか言う缶詰やレトルトは食べ飽きたって言いながらも働き続け、給料と休日を嬉しそうにアタシに捧げてくれる。アタシのために山ほどの洋服を買って、アタシが喜んでいるのを眺めるのが至福なんだとか。一緒に遊ぶのは楽しいけれど、時々信じられないようなセンスの服を買ってくるからそれは勘弁してほしい。

　一方のユウキは、アタシが居ないとどこにも行けない。アキラが見ていないのを良いことに、朝から晩までアタシにべったり。アタシのことを一秒でも長く見つめていたいみたいで、自分の食事の時間を惜しんでレトルトでさっさと済ませていることが多いみたい。まあ、アタシも、ユウキがアタシに夢中なのをいいことに、頻繁に呼び出しちゃうのを悪いとは思っている。

　今日は久し振りにアキラも休みで、三人で食事をしているんだけど、やっぱりアタシの取り合いになってしまった。二人が差し出したスプーンに乗っているのは、アタシが大好きなレトルト「はじめてのごろごろ野菜カレー」だ。一方には、いびつな立方体のにんじんが、一方には小さなサイコロ型の豚ミンチが乗っている。

　アタシは二つのスプーンにぱくり、ぱくりとかぶりついた。だってアキラパパもユウキママも大好きで選べないんだもん。

＜了＞

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たらはかに（田原にか）様の下記の企画へ参加しています。