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TFSアカデミー『新たな成長産業創造とイノベーション』を受講しました。

1.はじめに
 5月21日にTFSアカデミーに参加しました。A.T.カーニー日本法人の会長、CIC Japanの会長でご高名な梅澤高明さんから、①2022年末、政府から発表されたスタートアップ投資額を10倍に増やすという目標の「スタートアップ育成5か年計画」の解説、②これからのグローバルイノベーション競争における日本の勝機、③2020年虎ノ門ヒルズにオープンした国内最大級のスタートアップ集積拠点「CIC Tokyo」を立ち上げから主導してきた、スタートアップ支援の最前線、といった内容の演題『新たな成長産業創造とイノベーション~スタートアップの現状と日本の活路、CICの取組み~』でお話を頂きました。以下に概要を記します。

2.日本のスタートアップエコシステムの現状と課題
 日本企業の時価総額ランキングが低迷している現状があり、その原因には、ベンチャーキャピタル投資額やユニコーン企業数の少なさ、新陳代謝の欠如、小粒上場、M&A市場の整備の遅れなどを挙げられました。また、日本のビジネスモデルの特徴が有形資産中心であり、無形資産を軸としたビジネスモデルでは世界と伍していけない現状も挙げられました。

3.日本のイノベーションを促進するための取り組み
 そういった状況の打開に向けて日本の産業のイノベーション促進にあたっては、梅澤さんは私見との前置きをしつつ、ディープテック分野への参入が重要だろうと述べられました。具体的には、ロボティクス、ライフサイエンス、材料・素材、気候変動テックなどの分野を有望視されていました。また、大企業が抱える経営資源の活用を如何にして促進するか、グローバル市場への展開へのマインドセットもポイントとして挙げておられました。

4.政府の「スタートアップ育成5か年計画」
 そういった背景の下で発表された政府の「スタートアップ育成5か年計画」では、大学発ベンチャーの増加、ベンチャーキャピタル投資の拡大、オープンイノベーションの推進などが施策の柱です。しかし、この計画だけでは不十分として、さらなる施策と実行が必要になります。

5.CIC Japanの取り組み紹介
 CIC Japanでは、スタートアップ向けのシェアオフィスの提供、ピッチイベントの開催、グローバルアクセラレーションプログラムの実施などの各種の取り組みが行われており、これらの活動を通じて、スタートアップのグローバル展開や大企業との連携を支援しています。

6.梅澤さんの講話からの学び
 日本は依然として科学技術分野での優位な立ち位置を保ってはいるものの、無形資産の割合が低いことがグローバル競争力の課題となっています。研究開発投資やデジタル化、知的財産の活用などを通じて、無形資産へのシフトを図ること、持続的成長と競争力強化が不可欠です。
 また、基礎技術において高い評価を受けているものの、それを商業化して収益を上げる力が不足しています。ユニコーン企業の数やVCクラスターランキングの結果からも、この課題が明らかになっています。リスクテイクの文化の醸成、VCの活性化、起業エコシステムの構築など、日本企業がイノベーションを促進し、競争力を強化すること、そのあと押しが求められるのが現状です。
 スタートアップ企業のすそ野拡大とユニコーン企業の増加に向けて、更なる起業支援の強化、事業再生支援の充実、政府支援の見直し、上場基準の見直しなどの包括的な取り組みが必要となります。経済の新陳代謝を促進し得るスタートアップエコシステムの活性化は世界におけるイノベーション競争での競争力を発揮する上でも必須となります。
 スタートアップエコシステムは、まだまだ多くの課題を抱えていますが、効果的な政策実施とスタートアップ支援の体制強化があれば、成功する可能性が高まります。具体的にはM&Aの促進、上場後の成長支援などが必要となります。スタートアップが成長しやすい環境を整えることにより日本でもユニコーン企業が排出されていき、グローバルなイノベーション競争でも世界での重要な役割を担えることになります。

7.次回(7月18日)のご案内
 これら充実した内容の梅澤さんのお話をいただき、また、参加者の自己紹介などでも上場企業経営者や学生起業家などを含む素晴らしい方々からの熱のこもった自己紹介や質問が飛び交う場に身を置き、刺激を頂きました。自分の日常の業務範囲とは異なる、参加者の多様で広範なスケールに圧倒される場面もありました。とはいえ、こういう学びの場は貴重です。主催者のTFSグループ代表の山崎泰先生、TFSアカデミー校長の田村謙治さんからも、次回7月18日のお誘いもいただきました。参加して一流講師の知見を学ばせていただきます。なおビジター参加も可能とのことです。


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