【次世代を担う障害者運動のリーダー】 油田優衣
障害者運動を担う「次世代」のリーダー
油田さんは、脊髄性筋萎縮症(SMA)という筋力低下と筋萎縮が発症する進行性の難病を持つ障害当事者です。京都大学に在籍しながら、現在は障害をもった当事者が中心となって地域の障害者の自立生活をサポートする「自立生活センター(CIL)」で活動されています。
論文執筆や、介助を使いながら暮らす障害当事者の生き方に迫る「当事者の語りプロジェクト」(一般社団法人わをん)での記事執筆、福祉に携わる人々でつくるZINE『潜福』などへの寄稿、多様な視点で「問い」を探求するNHK番組「toi-toi」出演など活躍を広げる「次世代」の障害者運動のリーダー的存在です。
そんな油田さんは、どんな「妄想」を抱いているのでしょうか。
「障害者」に世間は興味がない?
「私なんかのはなし(私的な妄想)に、誰が興味あるんかな〜」
編集部から「妄想」をテーマに投げかけた時、企画に興味を持ってくれたが、「障害当事者」の生活や、「自立生活」について福祉分野以外の人が興味を持つのだろうかと不安に思ったそう。
しかし、編集部としては油田さんの活動や考えは「次世代」に残したい知恵だと思うことを伝えた。これから人々の生活はもっと多様になる。視力矯正の器具「眼鏡」がここまで普及した現在、病気や障害を理由に身体に不自由がある人が使う器具「車いす」も偏見がなくなり、車いすユーザーの利用も念頭においた道路や施設の設計がされてほしい。そのためには障害当事者である油田さんの発想や「妄想」が開かれることで、そんな思いが実現に近づくのではないかと思ったのだ。
誰でも合法的に「家出」できる未来を妄想
そんな話をする中で、油田さんは「でも、そういう話なら、”社会がこうなったいいな”と妄想する未来はあるかも」と語った。そして真っ先に出てきたのが「家出をしたかった」という言葉であった。
「学生時代(とくに中学や高校)、学校帰りの寄り道や家出をしたかった。けど、介助者がいないとできない。いまの福祉制度は、障害のある人の介助は家族が担うものだという根底があるから親に依存せざるをえない。けど、親とギクシャクした時に、自由に家出もできないし、喧嘩もできない。それは苦しかった」
生まれつきの障害があり、介助者がいなければ外出ができない油田さん。今でこそ24時間介助者をつけて一人暮らしをしているが、幼少期は親頼みで、気を遣う場面が多かったという。
「自分の過去は変わらない。でも、これからの未来が変わって、これからの障害をもった子ども達にはもっと自由に生活してほしい」
油田さんの願いを文章にまとめてくれることになった。
それぞれの「自分」を大切にできる未来
油田さんの妄想は切実だ。そして実現しなければならない未来だと思う。障害の有無によらず、どんな家庭にも親やきょうだいと折り合いがつかない時はある。そんな時に自分を大切にする選択。自分の心や身体を守れる「トー横」ではないもっと安全な場所や仕組みがあったら、この世界の傷は少しい癒えるのではないだろうか。
油田さんの言葉は、「他人事」ではない。
誰でも自由にワクワクすることを思い描く「妄想」ができる未来をつくるために、著者の言葉が多くの人に届くことを願っている。
著者プロフィール
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