二郎坊

何者でもない。

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青の蒼の藍の底

 コンクリート塀の上の金網をよじ登ると、  眼下にはしいんとした暗い水面が広がっていた。  私が通う県立東高のプールは今どき珍しい50メートルプールだ。  時刻は8月1日午前0時。  背後から届く街灯の光が私の影を水面に僅かに映す。  夜の闇とプールの端の境界が溶けて消え、延々と水面が広がっているようであり、それが如何にも不気味だが、立ち昇る塩素の匂いがプールだと気付かせて少しだけ安心させる。  夏の夜は嫌いだ。  じっとりと粘っこく暑さが絡みついてくる。  金網の上の空

    • 進藤さんちの柴コーン

       俺は柴犬。そしてユニコーンだ。  清き乙女を守るのは何も馬の専売特許じゃない。  俺は進藤家の愛玩犬として生まれた。  俺のモフッとした毛並み、クリっとした眉、笑顔に見える口元は進藤家の御歴々を魅了したようであり、大層可愛がられたが、それはいつまでも続かなかった。  その2年後、進藤家に末の娘のミキが生まれたからだ。  ミキはしょんべんタレでわあわあ泣いてばかりいたが、一目見て誰よりも純真で愛すべき存在であることは間違いなかった。  皆の興味が俺からミキに移ったことなど

    青の蒼の藍の底