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カーリングにおける確率の考え方

じりつくんでの期待勝率

じりつくんは、カーリングの過去の試合データにもとづいて、点差と残りエンド数、先攻/後攻の情報から期待勝率を算出して、以下のサイトで公開しています。

おおむね好評ですが、なかには、「カーリングの過去のデータは、アイスや相手チーム、その日の調子などによってぜんぜん違う結果になるのだから参考にならないのではないか」といった疑問をもったり、人が行うスポーツという世界に、確率という数値を持ち込むことに拒否反応を起こしたりする人がいるかもしれません。

データ分析はいろいろ使われている

しかし、スポーツの世界でも、たとえば野球では、打率や防御率などといった選手の過去の成績にもとづいた確率や数値が普通に使われています。これらの数値は、戦略立案に役立てたり、相手チームの分析に使用したりする他、観客も数値を見ながら観戦を楽しみます。こういった打率や防御率による分析は、相手チームも違えば、球場、相手投手/相手バッターも違うにも関わらず、有用だと考えられているのです。

実は、確率によるデータ分析の考え方は、スポーツに限らず、日常のいろいろな場面で使われています。例えば、あなたがある手術を受けることになったとします。A医師とB医師のどちらに執刀してもらうかを選べるとしたら、どういう基準で選びますか?A医師とB医師の年齢や外見、人柄などを基準にするでしょうか。

もし、仮にA医師とB医師の過去の手術成功率がそれぞれ、50%と90%である場合、成功率の高いB医師に執刀してもらうことを選ぶ人が多いのではないでしょうか。

実際には、「あなた」の手術をするのは初めてのことなので、過去のデータは意味がないと考えてしまうかもしれませんが、同じ種類の手術に対する成功率というデータは、それなりに意味を持っていると思える方が多いと思います。

データ分析で未来は予測できない

もちろん、過去のデータはあくまで「過去」のものであって、決して未来を予測するものではありません。必ずしも過去の手術成功率が高い医師を選んだとしても、あなたの手術は失敗してしまうかもしれません。

カーリングのデータ分析について取材を受けることがありますが、その際、次の試合の展開を予想できますか、と聞かれて困ってしまうことがあります。

指標の値などによって、過去の試合におけるそれぞれのチームの特徴を述べるくらいはできるかもしれませんが、そこはスポーツの世界、実際には何が起こるか分かりません。それがスポーツの魅力であり、データ分析は未来を予測するという意味では無力であるともいえるのです。

このように、過去のデータ分析というのは、参考データに過ぎないということを理解していれば、損になることはないと思います。むしろ、そのようなデータを知っておくことで有効な戦略を組み立てることが可能だったり、ある決断をするときの基準になったりします。

いずれにしても、データ分析というものは正しく理解すれば、戦略的な意味でも観戦の支援としても強力なツールとなりえると考えています。