やさしく寄り添う医書のあり方 『あめいろぐ高齢者医療』・なんとなくの気づき

こんにちは。

いち編集部のリアルです。

「常にアップデートの激しい医療の現場において、医の専門家が取得しなければならない情報は過剰すぎます。その飽和状態の知の海において、医療者の「曲解」を除外する(つまり気づきへのアプローチを短縮する)、これが「医療者に寄り添うやさしい情報提供のあり方」なのではないか、(ちょっと無理やり感が否めませんが)と自分なりに考えてみました。でもそうしたことのくり返しが、しいては患者さんに寄り添うプロフェッションのあり方にもつながるのではないか。これがやさしい円環ではないかと…。」

前回のNOTE記事で、このような視点も加えて、『あめいろぐ高齢者医療』の紹介を投げかけてみたいと述べました。その前にすこしだけ、あめいろぐシリーズのお話をしてもよろしいでしょうか。

あめいろぐを知ったのは、現在厚生労働省の「DMAT(ディーマット);災害派遣医療チーム」に所属する超がつく勉強家のU医師に「【あめいろぐ】というサイトがある、「あめりかで・はたらく・りょうじゅうじしゃによる・ぶろぐ」で、あめいろぐ。日本の医療界ではあまり見られないさまざまな情報がアップされていて、とてもユニーク」と教えてもらったのが機縁です。設立者の1人が本シリーズの監修でもある反田篤志先生。これまで扱ってきたテーマは「予防医学」「ホスピタリスト」「臨床英語」「高齢者医療」「女性医師」(9月刊行)「医学教育」(未刊)です。

皆さん、このテーマをご覧になって、何か気づきませんか。

そう、日本の医療界では(どちらかというと)あまりメジャーでない(?)テーマのようです。むしろ、あえてメジャーでない路線を狙っているようにも見えますね。

「おいおい出版業である限り、売れてなんぼの本でしょ。」

はい。ですが、ニーズがすくない(かも)、売れない(かも)しれない領域にこそ、本当の意味での取りこぼしや大切なメッセージが隠されていやしないでしょうか。もっといえば、日本の医療において、

なぜ、メジャーのテーマ(領域)とならないのか…」。

ここに何らかの見落とし…がありませんでしょうか.

日本の社会も経済も医療も、昭和の右肩上がりの復興・成長を遂げて、平成の失われた数十年の停滞・成熟があって、まがりなりにも前へ進んでいる、私はそう思います。でもなかなか前に進めない領域もあります。

かたや医療は人の命や健康に直接アプローチする高度な専門職だけに誤魔化しがききません。誤魔化したら患者さんの健康が阻害されます。最新の科学的知見がもっとも重視され、旧弊なものの考え方や体質から遠くにあり(先進的)、つまり科学と人間生活の進歩の最前線の領域のはずです。

が、そんな最前線の領域でも、何かがある。

「医師の働き方改革」「医療ミス・医療訴訟」「自由診療問題」「高齢者問題」「利益相反」、そして「コロナ禍をめぐるディスカッション」。もっとできることがあるはずなのに…、もっと働きやすくしたいのに…、もっと患者さんの健康に寄与したいのに…、でも、それができない「何かがある」。そう思われている医療者はたくさんいるのではないでしょうか。

もし日本の医療界に構造的な問題やアンチな体質(最善解・最適解への到達や実践を阻害してしまう何か)があるとしたら、そうした問題をまずは指摘し、その問題を見つめよう。その解決のアイデアも考えてみよう(医療者の視点で)。これが、あめいろぐシリーズです。アンチ路線ですからね、そんなにたくさんは売れません(笑)。でもいいのです。これが、いち編集部のリアルチームが考える「やさしく寄り添う医書のあり方」、もとい「医療者に寄り添うやさしい情報提供のあり方」なのですから。

それと日本人は、仏教伝来や最澄・空海の時代、幕末もそうですが、海の向こうの外圧なるものにとても敏感な国民性ですよね。昔は中国や朝鮮半島などの大陸ルート、その後は英国やドイツ、アメリカなどの欧米ルートから先進的な考え方を積極的に摂取し、それを日本流にカスタマイズして、独自の文化なり仕組みをつくるのに長けた特性が日本にはあります。例えば,黒船的な情報のスパイス伝達の一手として,医学書とあめいろぐサイトがコラボレーションしてみたら、どのような化学反応が起こるのか。そんな期待感もあります。

さて、いよいよ本題です。『あめいろぐ高齢者医療』。著者は、老年医学発祥の地、アメリカで老年医学とホスピス・緩和ケアを体系的に学ばれたドクター樋口とドクター植村です。

なぜ、高齢者医療がテーマなのでしょうか。それは、世界一の高齢化の進んだ日本において、高齢者医療が医学教育においても、研修においても、その専門性について積極的に学ぶ機会が重視されていないように思われるからです。

もっといえば、老年医学のことをGeriatrics(じぇりあとりくす)というのですが、このじぇりあとりくすを引っ張る若きリーダーが日本には不在(?)のように思えるからです。

さらにいえば、若い医療者の中で、積極的にじぇりあとりくすの海に飛び込もうとする方があまりいらっしゃらないように思えるからです。

末期の高齢者や認知機能に問題を抱える高齢患者への対応、人の死と正対しなければならないシーンが多い現場、そもそも医療を施しても治らない高齢患者群、あるいは介護疲れした家族との付き合い方、そういうすべてのイメージが相まって、若い医療者がチャレンジするには「難しすぎる領域」なのかもしれません。

でも、本当にそれよいのでしょうか。そこに何か見落としはないでしょうか.それが、本書が提案する,なんとなくの気づきのヒントになります。

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次回に続きます。

ご清聴(読)ありがとうございました。

2020.8.14

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