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読書記録4『medium 霊媒探偵城塚翡翠/相沢 沙呼』

 「真実はいつも一つ」、有名なセリフです。
 しかし、その真実にたどり着くまでのルートは一つだけなのでしょうか。

 図書館で文庫本を物色していたある日、表紙に描かれている女性の城塚翡翠と目があいました。
 本の内容を無視して表紙だけで選ぶことがある私は、迷わずこの本を借りることにしました。
 いわゆる「表紙買い(ここでは「表紙借り」ですね)」というものです。

 家に帰ってからあらすじを読む。

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒として死者の言葉を伝えることができる。しかしそこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かう。一方、巷では連続殺人鬼が人々を脅かしていた。証拠を残さない殺人鬼を追い詰められるのは、翡翠の力のみ。だが殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた――。

講談社BOOK倶楽部より
(http://kodansha-novels.jp/1909/aizawasako/)

 なるほど、超能力で分かった犯人を捕まえてもらうために、証拠や理屈を駆使して導いていく話か。
 「こういうパターンもあるよね」と私は読み始めました。

 全四章のうち三章までは、連続殺人事件とは別の事件を解決していきます。
 時々「どういうことだっけ」とページを戻し、なんとなく違和感を覚えながら読み進めていきました。

 三つの事件を解決し、いよいよ最終章で連続殺人鬼と対峙します。
 「そういうことか」と納得したのもつかの間、「え?どういうこと?」とページをめくる手が止まらなくなりました。

 最終章はまさに一気読み。
 各章で得た違和感をすべて回収され、爽快感でいっぱいでした。

 ネタばれしないように表現すると難しいのですが、「ゴールが一緒でも前提条件によって見え方が変わるし、向かっていくルートも変わっていく」ということがわかる一冊でした。

 月並みな表現となりますが、
「この本を読んだ記憶を消してもう一度読みたい」、
「まだ読んだことない人はこの感覚をこれから味わうことができて羨ましい」と感じています。

 ミステリ小説はいくつか読んだことがありますが、このような読後感は初めてです。さすがミステリランキング五冠。

 次回作はすでに出ているとのことなので、近いうちに読もうと思います。


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