じん

読書記録、日記

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最近の記事

すごく雑感:激マブVTuber

 2023年には好きな企業VTuberがエッセイ本を出して、たしかそれは夏頃のことなのに、私はまだその混乱から立ち直れていない。発売の告知があった瞬間から「ヘン、えらくなったもんだな」みたいな気持ちで茶化しながら、それでも自分が数年にわたって気の遠くなるくらいの時間とある程度の金を注いで眩しく思いながら観察していたエンターテイナーのエッセイが楽しみでないはずもなく、私はそれを発売日の一ヶ月以上前から予約して待ち望んでいた。  初回限定版の、なんだっけ、Blu-rayだっけな

    • 寒いうちに眠りからさめたら

       体を起こして左を向くと、窓ガラスの向こうにシャラがある。硬く五裂した果実が枝にぽつりぽつり残っていて、もうひとり、落葉しそこねた枯れ葉も枝にしがみついている。鋭い風がこまかくそいつを揺らすのを見た。  肩からふとんがずり落ちたので、代わりに枕元に脱ぎ捨てた半纏を手繰り寄せる。長らく干せていないからしなしなで冷たくなっているのだが、彼にとってそれは重要でなかった。室内履きをつっかけて起きだす。  すっかり冬眠してしまおうと思い立ったのだ。  数日前、彼が珍しく早い時間に帰宅

      • ゆるゆる随想録:二次元美少女には毛穴がない

         二次元美少女には普通、毛穴がない。彼女らの肌はツルッと湯上がりたまご肌であったり、マットだったりとバリエーションがあるが、いずれにせよ要らぬ毛穴や余計な小ジワはない。それは彼女らが何もない空間から創られた存在だからである。  彼女らは、はじめ身体を持たない。卵子と精子から始めなくても存在することができる。設定書のなかに父母がおらずとも、存在が揺らぐことはない。彼女らの生はインクと紙とペン、あるいはペイントソフトとタブレットとタッチペンから始まる。輪郭の線が引かれ、その線の中

        • 『羊と鋼の森』を読んで

          宮下奈都さんの『羊と鋼の森』を読みました。 2016年の本屋大賞を受賞して平積みされていたものを購入していたのですが、当時受験生だったことから本棚に押し込んだままだったものを見つけたので読みました。駆け出しピアノ調律師の主人公が成長していく様を描いています。 読み味は軽く、話としてあまり大きなアップダウンは存在しません。その分ひとつひとつの文がみずみずしく、特にピアノの音色とそこから主人公が発想する森の風景の描写がごく絵画的です。 主題が主人公の人間としての成長であること

        すごく雑感:激マブVTuber