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【じんたろホカホカ壁新聞】日大理事長逮捕!でも辞めない?いったい何が問題なのか?

日大理事長逮捕!

ついに日大の田中理事長が逮捕された。

特捜部は今年9月、板橋病院を巡る背任事件で日大本部(千代田区)や田中容疑者の飲食店兼自宅(杉並区)などを捜索。同病院の建て替え計画や医療機器の調達に絡み、日大に計約4億2000万円の損害を与えたとして、10~11月、籔本被告と元日大理事・井ノ口忠男被告(64)を2度、逮捕・起訴した。

でも、逮捕容疑はそれとは違う。

所得税約5300万円を脱税した疑いがあるとして、東京地検特捜部は29日、日本大学の田中英寿理事長(74)を所得税法違反容疑で逮捕した。

あ、そう、背任ではなく、脱税でしか逮捕できなかったのね。

でも、すぐに日本大学のホームページにコメントが出た。

<本学理事長の逮捕について>
学生、生徒等、保護者、卒業生、教職員の皆様には大変御心配、御迷惑をおかけしていることを深くお詫びいたします。
さて、報道されておりますように、11月29日に東京地方検察庁により、本学理事長が所得税法違反容疑で逮捕されました。
本学理事長の逮捕は、誠に遺憾であります。本件につきましては、本学としても現在進められている東京地方検察庁の捜査に引き続き全面的に協力してまいります。また、今後本件に係る必要な検討、決定を行い、内容につきましては、早急に広報対応いたします。
授業など教育、研究については、これまでどおり実施してまいります。安心して学生生活をお送りいただけるよう、本学として最大限尽力してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
令和3年11月29日
学校法人日本大学

とか。
理事会は、理事長の解任はしていないし、本人の辞任もまだないみたい。

日本大学の内部事情に詳しい大学関係者は「大学内で理事長の存在は絶対だった。ただ本人が直接発言することはなく、取り巻きが伝えてきていた。意見すると左遷やパワハラによる退職を余儀なくされたのを多くの教職員が目の当たりにしていて、理事長の影におびえて従わざるをえない状況だった。13年間も大学のトップにいれば、ガバナンスが効かなくなってしまうと感じる。学内の多くが見ないふりをしてきたことが今回の結果につながったのではないか」と話していました。

日大って同族経営だっけ?

しかし、13年間、大学のトップにいる例は別に珍しくないと思う。
同族経営の学校法人だともっと長いケースもある。
最近では、外国の研究者が日本の学校法人の同族経営を高く評価した本が出たりしている。

数年前まで、日本の多くの私立大学において、経営破綻が続出するといわれていた。少子化で18歳人口が減少し、十分な入学者数を確保できず、学費収入が激減する大学が多くなると考えられたからだ。
ところが現実は違った。2000年に日本に存在した私立大学のうち、2018年までに完全消滅した大学は11校(1.5%未満)にすぎず、大学の数は過去20年間、むしろ増えている。なぜ、こんなことが起きたのか。
日本の教育・雇用システムを研究する豪州モナッシュ大学のジェレミー・ブレーデン准教授と、社会人類学者である英国オックスフォード大学日産現代日本研究所のロジャー・グッドマン教授が、『日本の私立大学はなぜ生き残るのか』(中公選書)で、その大きな「謎」に迫っている。
長きにわたる調査研究の結果、2人の著者が辿り着いたのは、日本の同族経営の私立大学が備える“レジリエンス(粘り強さ、回復力)”だ。同族経営と大学が結びつかない人がいるかもしれないが、特定の一族が所有、もしくは経営主体となっている日本の私立大学は、代替わりの予定が明確ではない新しめの大学を含めると、約4割にものぼるという。

日本の学校法人の同族経営は約4割か。それが経営を持続させる力があるんだとか。

しかし、日本大学は同族経営ではない。

田中英寿容疑者(74)はアマチュア相撲で名をはせ、その人脈を生かして一介の職員から理事長まで上り詰めた。徹底した恐怖人事で反対勢力を排除するなどし、トップに君臨。常につきまとってきた、カネにまつわる黒い噂に捜査のメスが入った。

そして、いったん理事長になった田中氏は意思決定の場所を理事会ではなく、実質的には妻の経営するちゃんこ料理店にしていたらしい。

JR阿佐ケ谷駅(東京都杉並区)からほど近い雑居ビルにある、ちゃんこ料理店。自身の妻が経営するこの店で、田中容疑者は鍋から立ち上る湯気を挟んで大学幹部らと向かい合い、頻繁に会合を開いていた。月1回開かれる理事会ではなく、人事から資金決済などの重要事項が、ここで決められていたという。

もうひとつは自分のお財布代わりに使っていた事業会社。

田中容疑者が理事長に就任した後の平成22年に設立された日大事業部は、25年12月期に約7億8千万円だった売り上げが、29年12月期には約69億6千万円に膨らんだ。
事業部関係者は「理事長は建設などあらゆる事業に事業部をかませようとしていた」と打ち明ける。井ノ口被告は田中容疑者の意を受けて暗躍。関係者からは「業者から不当なリベートをとっている」といった声が聞かれるようになった。

同族経営であれ、そうでない経営であれ、学校法人の場合、一度理事長になったら自分から辞めると言わない限り辞めることがないのが実情だ。

文科省はどう対応しているの?

今回の逮捕に対して文科省はどうしているのか?

日本大学・田中英壽理事長の逮捕について、文部科学省の幹部らは「極めて問題だ」としながらも冷静に受け止めています。
日本大学の元理事・井ノ口忠男被告の逮捕・起訴に続き、捜査が続いていた理事長の田中容疑者の逮捕に、文科省の幹部らは一様に、「当然だろう」などと、冷静に受け止めていました。
今後については、「まだ捜査当局の動きを待つとしか言えない」としていますが、田中容疑者と大学に対しては「理事長の逮捕はなかなかない」「逮捕されたからには、田中理事長は辞表を提出すべき。大学も理事長の逮捕を重く受け止め、自浄作用を働かせてほしい」などと厳しい言葉が聞かれました。
また、「大学の規模も大きく、高校も抱えているマンモス学校法人。学生や教育研究活動に影響が出ないように、早くガバナンスを整えるべきだ」など、学生への影響を懸念していました。

ガバナンスを整えるべき?

では、どうして、理事長を解任できないのか?

これは学校法人自体のガバナンスの問題があるのだ。
実はちょうど今、文科省が学校法人ガバナンス改革会議というのを開いて、専門家が議論している。
しかし、先日、こういうニュースがあった。

19日の会合では同省に提出する報告書の骨子案が議論され、おおむね了承された。現在は学校内の人も入っている評議員会のメンバーを学校外の人だけにしたうえで、理事の選任・解任や予算・決算、合併や解散などの重要な決定を行えるように、私立学校法などの法令の改正を提案するという内容だ。評議員を選ぶ際も、理事会や理事が選ぶのを認めず、選定のための委員会を設けることにし、プロセスを公開して透明性を確保するよう求めている。
私立大側は反発している。早稲田大や慶応義塾大などが加盟する日本私立大学連盟は10月に公表した意見書で「(学外者だけの評議員会では)長期的視野により責任をもって教育研究の支援・運営に関する経営判断の是非を議論するのは困難」と批判。全員を学外の人にするのではなく、「一定の割合以上」にするよう提案している。

私大側は、理事の選任・解任権を理事会の外にある評議員会に持たせることに反対している。
長期的視野で経営判断をするためという。

専門家会議は来月、報告書を取りまとめ、文部科学省は今後、学校法人の運営について定める「私立学校法」の改正を視野に、詳細に検討していくことにしています。

ガバナンスって何?

そもそも学校法人のガバナンスってどうなっているのかな?
これが今のガバナンスのしくみ。

スライド1

理事会の上に評議員会という会社では株主総会にあたるものがあるけど、株主総会のようにここが理事の選任・解任権をもっているわけではない。評議員会の評議員が教職員から選ばれているところも多い。日大なんかはそれが多くて理事長の手前、反対意見が言えないとか。

で、今、学校法人ガバナンス改革会議で考えられているのがこんな感じ。

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これは一部上場の株式会社と似た仕組みになっている。会社はこんな感じ。

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最近、日本政府は社会福祉法人も公益法人も税制優遇されていたり、補助金をもらっているからと、政府は法律を変えて、ガバナンス改革を行った。改正後は社会福祉法人も公益法人も会社に似たガバナンス組織になっている。

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ガバナンスの肝は、理事会や取締役の外にある組織が、理事や取締役の選任・解任ができるというところ。日本の学校法人もやっとその方向に行くのか? Youtubeを見ると、文科省の下に設置された学校法人ガバナンス改革会議ではいっしょうけんめいその議論をしているみたいた。

しかし、株式会社の形はアングロサクソン的だという批判もある。
ドイツの会社はちょっとこれとは違う。EU型とでも呼んでおこう。
こんな感じ。

スライド7

EU型では、社内のステークホルダーから取締役会の監督組織にあたる監査役会という組織のメンバーを選んでいる。そこに株主総会選出のメンバーも加わるという構図。今の日本の学校法人に少し近いとも思える。

しかし、ドイツでも1990年代後半からシュレーダー首相が、監査役会に外部委員メンバー比率を増やす改革を行ったらしい。それで選任・解任のガバナンスが効くようになったとか。

ガバナンスって、組織を健全に機能させる仕組みなのよね。

それは暴走や組織を私物化する経営者を取締役会や理事会が解任しないなら、株主総会や評議員会が解任する仕組みでもある。何もしない不作為の経営者に対しても同じ。日本の場合、好景気なのに内部留保をため込み投資に回さない経営者が問題になる。それを交代させることを「攻めのガバナンス」と呼んだりする。

それに対して監事や監査役が統制を行うのとかを「守りのガバナンス」と呼んだりする人もいる。けれど、「攻め」と「守り」は実は同じことなのだ。組織を健全にするのは経営者の暴走や不作為を止めさせることでもある。

辞めない理事長。辞めさせることのできない理事会と評議員会。私大の多くは今のほうがいいと思っている。学長選挙で揉めているところは、今や国立大学より私立大学のほうが多いという事実もある。これを評議員選任に持ち込みたくないという思惑。

さて、これから学校法人は、日本大学はどうなっていくのか?


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