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80年代、リンダ・ロンシュタットのスタンダード・ナンバー・アルバムが次々と

 前回、紹介した和田誠「いつか聴いた歌」は、文庫版あとがきで”リンダ・ロンシュタットやシーナ・イーストンといった、やや分野の違う若手も、スタンダートに挑戦するアルバムを作っている”と述べている。今回はそのリンダ・ロンシュタットのスタンダード・ナンバーの話をしよう。

 それまでカントリーロック歌手のように思われていたリンダ・ロンシュタットは、1983年「What's New」、1984年「Lush Life」、1986年「For Sentimental Reasons」という三枚のスタンダード・ナンバーのアルバムをリリースした。

 これらアルバムの編曲を担当したのはネルソン・リドル、彼はフランクシナトラのために多くの編曲をし楽団の指揮も行っていた。いわゆるスタンダート・ナンバー・アルバム制作のレジェンドのような存在。その彼が参加したとなれば、アルバムの完成度が高かったのは当然だろう。結果として一枚目二枚目ともにダブルミリオン(200万枚)を超えるベストセラーになったことが三枚目のライナーノーツに記載されている。

 リンダ・ロンシュタットのスタンダード・ナンバー・アルバムの中で一番よく耳にした曲は、上に載せた「When you wish upon a star」。これは三枚目のアルバム「For Sentimental Reasons」の1曲目、日本語題名「星に願いを」で知られる1940年に制作されたディズニー映画ピノキオの主題歌。いまならアニソンと呼ばれたかもしれない歌だ。

 アルバムも三枚目となりネルソン・リドルとリンダ・ロンシュタットのコンビによるアルバムは一層洗練され、このシリーズのさらなる作品が期待された。しかしネルソン・リドルは三枚目のアルバム制作中の1985年に亡くなり、スタンダード・ナンバー・アルバムの制作は、三枚で終わった。

 それにしてもこれらアルバムへの専門家の評価はちょと微妙だった。もともとジャズアルバムは販売枚数が少なく、数十年を経てようやくベストセラーと呼ばれるものが多いなか、わずか数年でダブルミリオンを達成したリンダ・ロンシュタットのアルバムに戸惑いがあったのかもしれない。

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