万亀池の火の玉

高瀬 甚太

 時折、自転車で近隣の商店街を散歩することがある。人通りの多い商店街であったから、午前十時から午後八時まで自転車での通行は禁止されていたが、里村八太が走るのはもっぱら朝の早い時間帯で、人通りも少なく、安心して自転車を走らせることができた。
 商店街の先に大阪を代表する有名な神社があった。神社の近くに小さな池があり、その池は、千年も万年も生きている亀が棲んでいると噂されるほど古い池であった。
 自転車を停めて池のそばに立ち、里村が池面を眺めていると、突然、背後から声をかけられた。
 「この池はのう、百年に一度、災いの起きる池なんじゃよ」
 里村が驚いて振り返ると、八十歳は超えているだろうと思われる小柄な老婆が立っていた。
 「百年に一度?」
 聞き返すと、老婆はニタリと笑って、
 「今年がその年に当たる」
 としわがれた声で言う。
 「どうしてそれが?」
 尋ねると、老婆は、それ以上、何も言わずスタスタと北の方角に向かって歩いて行く。
 冗談か、もしくは少し頭がおかしいのかも知れない、そう思いながら里村は池を後にした。
 事務所に戻ると、郵便ポストに手紙が入っていた。白い封書を手に取った里村は、その封書に切手が貼られていないことに気が付いた。誰かがやって来て、留守だと思い、手紙を入れたのではないかと解釈し、部屋に戻って手紙を開封した。白い便箋には、
 「万亀池に注意せよ」
 と、朱文字で殴り書きがされてあった。
 「万亀池?」
 神社の近くの小さな池であることを知ったのは、翌朝のことである。その時は、悪戯だろうと里村は気にもせず放っておいたのだが、翌朝の新聞を見て驚いた。

『大阪市北区の万亀池で怪奇現象!』
 新聞記事で報道されているその場所は、紛れもなく、神社の傍にある小さな池のことであった。その記事を読んで、里村は、その池の名称が万亀池であることを初めて知った。
 万亀池の近くを通りかかった帰宅途中の女性が、火の玉のような物体を目撃し、警察に届け出たと記事に書かれており、同時に他にも数名の目撃者があったことをその記事は伝えていた。
 「この池はのう、百年に一度、災いの起きる池なんじゃよ」
 と言った老婆の言葉を思い出した里村は、俄然、万亀池に興味を持った。 都心のこの場所に池があること自体、不可思議なことであった。小さな池であるとはいえ、土地単価の高いこの地域に、なぜ、あのような池が存在するのか。
 図書館に行き、万亀池について書かれてある資料を漁った。しかし、どの資料にも万亀池に関する記述はなかった。唯一、大阪市北区に関する史書の中に、万亀池のことが数行記されていた。
 ――一千年以上前、神社創建の際、その地に元からあった池を埋めようとしたが、埋めようとするたびに災いがおよぶことから、池をそのままにして神社が創建された。池の名称である万亀池は、その池に、万年以上前から棲むと言われる亀に由来する、と記載されていた。
 里村は、この地のマンションの一室に事務所を構えて久しいが、神社の傍にある小さな池の名称や由来を知ったのは、この時が初めてである。
 「百年に一度、災いの起きる池、今年がその年にあたる」
 老婆の言葉が蘇り、万亀池に注意せよ、投函された手紙に書かれていた朱文字の言葉が蘇る。里村は、報道された新聞記事を再度、読み直した。
 ――火の玉、怪異現象。目撃者が数人いる。
 目撃者の証言によれば、午前0時過ぎから午前3時までの間に、池に浮かぶ火の玉を通りかかった数人の人が目撃している。眼の錯覚で起きたものではなかったようだ。複数の目撃者はすべて「火の玉」であったと断言している。
 一般的に火の玉と言われるものには、人魂、狐火や鬼火などがある。また、ファイアーボール現象は、密閉された可燃性のガスや水蒸気が空気に触れて急激に球状の炎を形成する現象をいう。
 目撃者の証言からみると、人魂が一番近いように思えるが、実際に目撃していないところから里村には正確な判断が下しにくかった。
 人魂とは、夜間に空中を浮遊する火の玉をいい、古来から「死人の体から離れた魂」と言われているものだ。墓地ならともかく、池に人魂が出るとは考えにくかった。
 文筆を生業とする里村は、依頼された原稿の期限を目の前にしていたが、好奇心が人一倍旺盛な里村は、それどころではなくなった。夜の更けるのを待って万亀池に急いだ。

    2

  神社の近くに商店街があり、そこにはさまざまな飲食店が軒を並べている。午前0時前後まで営業する店が少なくなく、そのうちの一軒、『嘉門亭』という店に立ち寄って、里村は食事をした。
 『嘉門亭』は、和風の料理を専門に出す居酒屋で、料理の味の確かなことと値段の安さで定評があった。火の玉の出現する時間まで、余裕があったことから、里村は、その店で腹ごしらえをしておくことにした。カウンターに座って食事をしている途中、里村は意外な話を耳にする。
 店の主人とカウンターに座った客との会話であった。
 「マスター、今日の新聞読んだかい」
 「今日の新聞――、ああ、万亀池の火の玉の話ですか?」
 「あくまで噂だけどね。あの池に死体が眠っているって話だよ」
 「死体が眠っている?」
 「ああ、浮かび上がらないように、重たい石かコンクリートの塊を括りつけられた死体が池の底に数体あるらしい」
 「まさか、死体が数体、池の底に沈められているなんて――」
 「おれもまさかとは思っているのだけれど、ただ、ここのところ、立て続けに火の玉を見た人がいるでしょ。何となく本当の話なんじゃないかと思ってね」
 そこで会話が途切れた。店に新しい客が入って来て、店の主人が新客の対応に忙しく、会話の相手をしておれなくなったようだ。
 「すみません。ちょっといいですか?」
 里村は、カウンターの客に声をかけた。
 「ええ……」
 戸惑いながらも、酒がまわっているせいか、客は愛想よく答えた。
 「今、万亀池の話をしておられたと思うのですが、池の底に死体が――」
 里村の問いに、客は手を左右に振り、笑って否定した。
 「冗談ですよ。冗談。聞いた話です。単なる噂話です」
 「ちなみに、その話はどなたから聞かれたのですか?」
 客は少し考える素振りをして、
 「会社に出入りしている業者からです」
 と言った。
 「業者? その業者はどのようなお仕事をなさっている方ですか?」
 客は怪訝な顔をして里村を見る。知らない男から、いきなり質問されて面食らっているのだろう。
 「これはどうも失礼しました。私、この近くに事務所を構えています、里村と申します。万亀池で怪異現象があったと新聞記事を読んで、興味を持って調べています。あなたがお話ししていたことを偶然、耳にして、お話を聞かせていただけないかと思いまして」
 「そうですか。物書きの方ですか」
 安心したのか、客は業者から聞いた話を里村に向かって饒舌に語り始めた。
 「私どもは金属を加工する会社をやっているのですが、昼食の弁当を運んでくる旭区の業者が、つい先日、万亀池の火の玉の話を知っていますか、と問いかけて来ました。新聞で読んだと答えると、先ほど、店の主人に話したように、池の底に死体が、と教えてくれました。笑って取り合いませんでしたが、業者の奴、えらく真剣な顔をして、本当らしいですよ、と言うもので、もし、本当だったら大変だ、と答えました。警察に連絡したらどうかと言ったが、業者は首を振って、警察はまともに取り合ってくれないと、こぼしていました。わしの知っているのはそこまでです。にわかには信じがたいが、あの池は、小さいが池の深さは相当のものと聞いています。それに水面からみてもわかるように、相当、汚れています。もし、死体があったとしても、見つけ出すのは困難でしょうね」
 と、客は神妙な顔をして里村に語った。
 「その弁当の業者ですが、なぜ、彼がその話を知っているのか、聞かれましたか?」
 「ああ、一応、聞きました。そんな話、なぜ知っているのかとね。すると、業者の奴、真っ青な顔をして、底に沈んでいるのは、私の妹かも知れない、と言うのです。えっと思って、妹って、妹さんは殺されたのか? と驚いて聞きました。業者は、それ以上、何も言いませんでしたが、何か深い事情がありそうな感じがしましたね」
 弁当の業者の名前と所在地を、その客から聞いた里村は、客に礼を言って店を出ると、神社に向かった。
 午前0時を回った神社周辺は、物静かで暗澹たる空気が立ちこめている。万亀池は、神社を通り抜けた裏手の場所にひっそりとある。一応、昼間は人通りのある場所だが、さすがにこの時間ともなると通行人の姿は見かけない。寂しく不気味な場所である。しかし、この池のそばを通らなければならない近隣の住人も多数いる。火の玉を見たのは、そのほとんどが近隣の人たちだと新聞記事には記されていた。
 里村が池のそばに立つが、一向に火の玉は現れない。幽霊でも出そうな場所である。ひんやりとした空気が里村の頬を過る。しばらく水面を凝視していると、急に水面がざわつき始めた。緊張して見守っていると、水面から何か大きなものが顔を覗かせたように見えた。驚いて後ずさりし、なおも見つめていると、どうやら亀のようであった。大きな亀である。これが万年生きているという亀なのか、そう思って里村が注目していると、しばらくして、姿を消した。
 30分が経過した。そろそろ引き上げようと思い、里村が池のそばを歩いていると、突如、光るものが水面に浮かび上がった。紛れもなく火の玉であった。人魂のようである。
 何かを訴えかけるように、しばらく火の玉は水面に浮かんでいたが、やがて音もなく消えた。

    3

  翌朝、里村は、昨夜聞いた、弁当業者の所在地のある旭区に向かい、客に、池の中に死体があると話したという桜橋惣一を訪ねた。弁当工場は、早朝から大忙しの様子であった。里村が桜橋惣一の所在を尋ねると、配達に出ていると、工場の責任者らしき人物が面倒臭そうに言った。
 簡素な造りの建物の中で、10数人の女性が弁当に惣菜を詰め込んでいた。かなりの需要があるのだろうか、止むことなく手が動いている。里村がしばらく待っていると、工場の駐車場にライトバンが停まり、男が一人出てきた。桜橋だと直感した里村は、工場の中に入ろうとする男を捕まえて、「桜橋惣一さんですか?」と聞いた。男は、怪訝な顔をして小さく頷き、
 「桜橋ですが、何か?」
 と不安げな表情で答えた。
 「万亀池の火の玉のことについて、桜橋さんに少しお伺いしたいことがありまして」
 と里村が伝えると、桜橋は顔を紅潮させて、
 「私は何も知りません」
 と答え、急ぎ足で工場の中に向かって歩き始めた。
 「私も昨夜、火の玉を見ました。何かを訴えかけているかのような火の玉でした。あなたが取引先で話したことを聞かせてくださいませんか。このまま放っておいてはいけないと思います」
 里村の言葉に、桜橋は歩を止め、少しの間、逡巡する様子を見せたが、 「わかりました。配達が一通り終わったら、お話しします。近くに喫茶店が一軒あります。そこで待っていてください」
 と答え、再び、工場内へ向かって歩き始めた。
 弁当工場からほど近い場所に喫茶店があった。ランチサービスの幟が2本、店の前にかけられている。昼食時には大そう賑わうのだろう店内は、午前十一時半を過ぎたばかりの今は、ガランとして客は一人もいない。
 里村は、奥まった場所に席を取ると、もう一人来ますのでと告げ、ホットコーヒーを注文した。
 30分ほど経過して、店内が昼食客で賑わい始めた頃、桜橋がやって来た。
 「よかったら食事をしてください」
 と里村が言うと、桜橋は、遠慮気味に、
 「じゃあ、定食のランチを注文します」
 と言って、店員を呼んだ。
 30代後半か、40代前半に見える桜橋は、実直な勤め人という感じの大人しいタイプの男性だった。
 「3歳違いの私の妹が行方不明になって1年半が経ちます。結婚をしていたのですが、2年前に、相手のDVがひどくて離婚しました。子供はいませんでしたが、お金を貯めてお店を持つのだと言って、昼も夜も働いていました。1週間に一度か二度、定期的に連絡があったのですが、急に途絶えたので気になって訪ねると、マンションの管理人が、二週間近く顔を見ていないと言います。気になって部屋を開けてもらい中に入りましたが、妹はおらず、しばらく帰っていない形跡がありました。警察に届け出ましたが、失踪人届を出すのが関の山で、事件に巻き込まれた可能性があると訴えても相手にしてもらえませんでした。元の亭主にも尋ねましたが、知らないの一点張りで、いなくなったことを告げても悲しむ顔一つ見せませんでした。あれこれ訪ね当たりましたが、何の手がかりもつかめず、今日まで来ました。ところが、つい先日のことです。夢の中に妹が現れて、『お兄ちゃん、助けて』と叫んでいるのです。水に濡れた髪の毛と、衣服が印象に残りました。目が覚めて、不吉な予感に襲われているところに、あの火の玉騒動です。私は、あの火の玉は、もしかしたら妹の歩美ではないか、そう思って、警察に行きました。もしかすると、歩美はあの池の底に沈んでいるのではないか、そう思ったからです。でも、警察は笑って相手にしてくれませんでした。何とかしたいと思いながらも、何ともできない歯がゆさから、私は、火の玉騒動に乗っかって、私の知っている人たちに、万亀池の底に死体が埋められている、と話して聞かせました。噂が立てば、警察も動かざるを得なくなるのでは、そう思ったからです」
 よほど兄妹仲が良かったのだろう。妹の安否を心配する、桜橋の悲嘆にくれた表情に打たれた里村は、
 「私が調査します。歩美さんの消息も調べますから」
 と桜橋の手を固く握って、約束をした。
 歩美の消息を調べるにあたって、働いていた職場の所在地と名称、そして歩美の知人、友人、元亭主の連絡先と所在地を桜橋から聞いた里村は、早速、その日から行動に移した。
 まず、里村が相談をしたいと思ったのが大阪府警の二宮警部補だ。二宮警部補は、里村の高校時代の同僚であった。府警に電話を入れると、生憎、二宮は会議中ということで連絡が付かなかった。二宮警部補に連絡が付けば、二宮の協力を得て、桜橋の妹の行方を追う手助けが得られるのではと思っていたが、それも出来ず、仕方なく、里村は、桜橋の妹が働いていた会社に足を向けた。

    4

 桜橋歩美の昼間の職場は、電話のオペレーターを専門とする会社で、歩美は、この会社で午前九時から午後五時まで勤務していた。
 「一年半ほど前から、急に出勤しなくなって、勝手に無断欠勤したり、辞めたりするような女性じゃなかったから、心配して住まいの方へ出かけたことがあったのですよ。でも、家にはおらず、管理人に聞いても要領を得なかったので、仕方なく自主退職扱いにしたのですが……、未だに安否が不明ですか。心配ですね」
 担当の課長、山崎幸四郎は、心配げな表情で里村に話した。課長に、職場の中で歩美と親しくしていた人を紹介してもらった里村は、個別に話を聞いたが、誰も歩美についての情報を有していなかった。
 歩美は会社では、親友と呼べるような友だちを持っていなかったようだ。続いて里村は、学生時代からの歩美の親友である浜崎みどりに電話をした。歩美の消息について、何か、知っていることはないかと尋ねると、浜崎みどりは、悲痛な声で応答した。
 ――急に姿を消して、何か事件に巻き込まれたのじゃないかと心配して、お兄さんと共に何度か警察に行ったことがあります。でも、警察は、はっきりと事件とわからないと動くことが出来ないと言って、話を聞いてくれただけで終わりました。歩美は、行方がわからなくなる直前まで、ひどく怯えていました。そのことも伝えたのですが、やはり、動いてくれませんでした。
 ――ひどく怯えていたとおっしゃいましたが、そのことについて何か、心当りがありませんか?
 ――ストーカーに付きまとわれていると言っていました。
 ――ストーカー?
 ――はっきりとストーカーだというわけじゃなかったようです。でも、常に誰かに見張られているようで気持ちが悪い。そう言っていました。
 ――あなたは、そのストーカーがどのような人物であるか、見当がつきませんか?
 ――こんなことを言ったら何ですが、元亭主はひどいDV男で、歩美は逃げるようにして離婚しています。その離婚の時も大変でした。元亭主は、『別れない』の一点張りで、『別れたら殺す』などと物騒なことを言っていましたから。でも裁判所でDVが認められて、歩美は別れることができました。元亭主には、所在地が知られないように気を付けていましたが、私は、何か起きるのではと常に心配して、歩美に注意するよう呼びかけていました。
 もう一つ、歩美は夜も仕事をしていました。ミナミの宗右衛門町にあるスナックで、『はるか』というお店です。会社の元先輩の店で、そこで午後七時から十一時まで務めていました。その店の客の一人が歩美に執拗に迫っていて、困っていると歩美に聞かされたことがあります。ストーカーとして思い浮かぶのは、その二人です。
 浜崎みどりは、一日も早く歩美を見つけてほしいと言って電話を切った。
 その夜、里村はミナミのスナック『はるか』に行き、ママの畠山梓に会った。雑居ビルの三階にある『はるか』はカウンターとボックス席が二つの小さな店であった。開店前の時間を狙って行ったのだが、歩美のことで、と話すと、ママは快く店内に迎え入れてくれた。
 「歩美ちゃんは、私が務めていた会社の後輩で、その頃から仲がよくてね。会社を退職してこの店を開いた時、真っ先に歩美に声をかけて、手伝ってくれないか、とお願いをしました。気立てがよくて、かわいい感じの子でしたからお客さんには人気がありました。でも、急に店に来なくなって、電話をしても通じないし、ずっと心配していたんですよ」
 「歩美さんは、ストーカーに怯えていたそうですが、心当りはありませんか?」
 「そう言えば、そんなことを言っていましたね。帰宅が遅くなるので、危険だと思い、タクシーで帰るようチケットを渡していました」
 「客の中で、一人、歩美さんに執心している人物がいたと聞いているのですが――」
 「ええ、近藤という大手の鉄鋼会社の課長です。店に来ても、歩美ちゃんがいないと、すぐに帰ってしまうような客で、酒に酔うと性質のよくない人でした。歩美ちゃんは近藤という客が大嫌いで敬遠していましたね。何度か待ち伏せされたと聞きましたが、その時は、度が過ぎると会社へ連絡すると言って私が近藤を一喝しました」
 「近藤ですか?」
 「ええ、奥さんも子供もいるのに、最低の男でした。会社でもいろいろあったようで、二年ほど前に北海道へ転勤になったと聞いています」
 「二年ほど前ですか――」
 歩美が消息を絶ったのは一年半前になる。では、近藤は無関係なのか。 「近藤の他にストーカーになりそうな人物に心当たりはありませんか?」 「常連客の中には、近藤ほどひどい客は、いなかったと思います。――そうそう、一人、歩美がこの店で働いているかどうか、尋ねてきた男がいましたね。大人しそうな男で、働いていません、と答えるとすぐに帰って行きました」
 「ママは、歩美さんの元亭主をご存じですか?」
 「直接、顔を合わせたことはありません。歩美に写真を見せてと言ったことがありますが、見せてはくれませんでした。話に聞くと、ひどいDV男だったようで、ずいぶん前から別れる決心をしていたのでしょうね。旦那の話になると、急に無口になりましたから」
 それだけ聞けば充分だった。残るはただ一人、歩美の元亭主、佐竹治夫だ。桜橋の話によれば、佐竹は、本町にあるアパレルの会社に勤務しているとのことだった。

    5

  会社の所在地を確認した里村は、翌日、その会社を訪問し、佐竹を訪ねた。
 受付で佐竹に面会したいと申し出たが、アポを取っていなかったため、すぐには会えなかったが、昼食時でよければということになり、その時間まで待つことにした。
 その間に、佐竹という人物について、さりげなく受付の女子に話を聞いた。会社の人間ということもあるのだろうが、おおむね評判は悪くなかった。
 課長職であり、部下を抱える身だ。そんな人間がDVを働き、ストーカーをするなど、信じ難かったが、人は表面を見ただけではわからない。心の中にどんな闇を抱えているか、当事者でなければ分かり得ないことだ。
 昼食時間になって、佐竹がやって来た。一見、穏やかな紳士風の男である。
 「お待たせしました。歩美のことで話を聞きたいということでしたが、一体、どういうことでしょう?」
 口調も性格も歩美にDVを働いていることが想像できない。本当にこの男が歩美にDVを働いたのか、疑いたくなるほど佐竹は紳士的な男だった。里村は、
 「一年半ほど前から歩美が行方不明になっている、消息に心当たりはないか」
 と尋ねた。佐竹は懐から煙草を取り出すと、
 「吸ってもいいですか?」
 と断って、タバコを口にし、ライターで火を点けると、ゆっくりとした口調で里村に言った。
 「知っているもいないも、私は二年前、歩美と協議離婚をしています。その後は、ほとんど付き合いがありませんのでわかりません。歩美は今、どうしていますか?」
 淡々とした口調で話す佐竹の表情は、能面のようで、内面を表に出さない。
 「先ほどからお話ししているように、歩美さんは一年半ほど前から行方不明になっています。あなたによく似た人が、歩美さんの夜の勤務先へ訪ねて来たことがあるようですが、心当りはありませんか?」
 鎌をかけてみたつもりだったが、佐竹は笑った。
 「私によく似た人間なんて、この世の中にはたくさんいます。きっと勘違いされたのでしょう。用はそれだけですか? なければ私はこれで失礼します」
 立ち上がると、佐竹は里村に軽く礼をして、そのままエレベータに乗り、里村の前から消えた。
 佐竹が歩美の失踪に関わりを持っているのかどうか、確証はなかった。だが、冷静沈着で、ポーカーフェースの佐竹を見ていると、否が応でも怪しく思ってしまう。あの落ち着き払った態度は何だ。元妻が行方不明なのだぞ、もっと感情の起伏があってもいいのではないか、里村の憤りは一通りではなかった。
 二宮警部補にようやく連絡が取れたのが、その日の夕方だった。里村が、会って相談をしたいと申し出ると、午後七時頃なら大丈夫だと言い、天満の居酒屋で待ち合わせをすることにした。
 歩美に関する調査内容をA4の用紙二枚にまとめ、二宮警部補に渡すべく整理をして、里村は待ち合わせ場所に急いだ。
 里村が居酒屋に到着すると、すでに二宮警部補が待っていて、カウンターでちびりちびりと酒を呑んでいた。
 里村の顔を見ると、二宮警部補は、早速、「相談とは一体何だ?」と聞いた。
 「万亀池に火の玉が出るというニュースを知っているだろ。その記事を読んだ男が、万亀池の底に人が沈められている、それが火の玉になっているのではないかと噂を立てた。調べてみると、その男の妹が一年半ほど前から行方不明になっていることがわかった。その男が言うのには、妹はストーカーに付け狙われていて、怯えていたようで、そのストーカーに妹が殺害されたのではないか、と言う。二宮に相談したかったのは、妹が、そのストーカーらしき男に殺害されて池に捨てられている可能性がある、調べてもらえないかということだ」
 「そのストーカーだが、目星は付いているのか?」
 二宮警部補はいくぶん関心を持ったようで、真剣な眼差しで里村に聞いた。
 「確証はないが、私は、歩美の元亭主の佐竹が怪しいと睨んでいる」
 呑みかけのビールを一気に呷ると、二宮警部補はグラスをドンとテーブルの上に置いた。
 「わかった。里村がそこまで確証を抱いているのなら、一度、その佐竹という男を調べてみることにする。一年半前の佐竹の行動がどこまで突き止められるか、難しいとは思うが――、万亀池の底をさらって死体が出るか、出ないかについても一応検討してみる」
 席を立った二宮警部補は、千円札をテーブルの上に置くと、
 「悪いが後は頼む」
 と言って足早に居酒屋を後にした。

    6

  大阪府警は、二宮警部補の先導の元、万亀池の水をポンプで一斉に抜き出すことになった。小さいとはいえ、千年以上前から存在する池である。池の中にどんな生物が棲んでいるのか、噂通り、万年亀が棲んでいるのか、深度はどれほどあるのか、すべてベールに包まれていたが、池の水を半分ほど吸い上げたところで、白骨化した遺体が発見された。コンクリートの塊を体に結びつけられていたが、最深部まで至っておらず、池の中間地点で藻にからまって浮遊していた。
 万亀は池の奥底に存在するのか、姿を現さなかった。死体を引き上げ、吸い取った水を池に戻そうとした時、突然、水面が噴き出し、巨大な亀が顔を覗かせて周囲にいた人たちを驚かせた。亀はゆっくりと周囲を見渡すと、そのまま水面に沈み、再び顔を出すことはなかった。
 ――あれが万亀なのか。
 と、里村は思った。先日の夜の亀よりもさらに大きな亀のような気がして、池の底に姿を隠した後も、里村はじっと波紋を浮かべる水面を眺めつづけていた。
 引き上げられた遺体は白骨化していて、身元を調べるのは困難なように思われたが、人体の骨格、顔の骨格、歯の治療跡などから行方不明になっている桜橋歩美であることが判明した。駆けつけた歩美の兄は、変わり果てた妹の姿に衝撃を受け、地べたに膝を落とすと、大声を上げて泣いた。
 「死亡したのが何時か、それさえもわからない。何しろ、彼女が行方不明になったのが、一年半も前のことだ。容疑者を特定しても、実証することは難しいだろう」
 二宮警部補は、鑑識の報告書を眺めながら、ため息を漏らした。
 「歩美の死亡に関わっている可能性のある、歩美の元夫である佐竹にしても、死亡時期も死因さえも特定できない状況ではどうすることもできない」
 そんな二宮警部補に里村が進言した。
 「二宮、この池で火の玉が発見されて、そのすぐ後に、俺はこの池を訪れている。その時、火の玉を見た。あの火の玉の出現が何を意味しているのか、ずっとそのことを考えてきた。しかも、その前日に私の事務所のポストに、『万亀池に注意せよ』と、朱文字で走り書きされた文書が投函されていた。誰が何のために俺の事務所に――。悪戯とは思えなかった。二宮は信じないだろうが、俺は、亡くなった歩美さんの霊が、火の玉や万亀池に関心を持った俺に、早く発見してほしい、犯人を捕まえてほしい、そう催促しているのではないかと思った。この事件は普通の捜査では犯人の特定は難しい。別の方法を用いたほうがいいのではないだろうか」
 里村の話を聞いて、二宮警部補が笑った。
 「里村、また、お得意の霊の話か。俺は信じないぞ。そんな馬鹿な話、あり得るはずがない」
 「そうだろうか。俺は、火の玉の出現や朱文字の文書には何か深い意味があると思う。この世の中には、人智を超えたものがたくさん存在する。俺は今回もその一つではないかと疑っている」
 二宮警部補の顔が奇妙に歪んだ。二宮は霊的なものに対するアレルギーがある。そうしたものを受け入れることのできない体質のようだ。
 「俺は、警察の人間として、科学的な捜査に基づいて必ず犯人を逮捕してみせる。いかに完璧を期そうとも、必ずどこかに穴が出来る。俺はその穴を見つけてやる」
 里村の話を打ち消すように、二宮が凄んでみせた。
 一年半も前の、死因も死亡時期もはっきりしない事件である。犯人究明が難航することは目に見えている。だが、警察はこれまで、そうした壁を突き崩して犯人逮捕にこぎつけている。二宮の自信は、あながち根拠のないものではなかった。
 しかし、里村は一般人である。何の力も有していない。個人で行える調査は限られている。それでも、里村はこのまま手をこまねいているわけには行かなかった。朱文字で書かれた文書や火の玉の存在――、この事件の死者の魂は、間違いなく自分に犯人捜しを求めている。そのためにも今一度、死者の声を聞いてやる必要がある。里村はそう思っていた。
 二宮が言った。
 「あの池の近くに、防犯カメラが一台あった。その防犯カメラを調べてみることにする。里村は里村の方法で当たればいいさ。どちらにしても殺人者を野放しにすることは出きない。必ず俺がこの手で捕まえて、死者の無念に報いてみせる」
 二宮は力強く言い切ってその場を去った。

    7

  その夜遅く、里村は、密教の僧である原大路玄白和尚に連絡をした。玄白和尚は、里村の師のような存在である。幾度か死地に陥ったことのある里村をその霊力で救い出してくれたこともあった、姫路の山中に在する鴻池本願寺の住職である。
 里村は、玄白和尚に万亀池の事件の一部始終を話して聞かせ、火の玉を見たこと、朱色の文書が届けられたことなどを説明した。
 里村の話を聞いた玄白和尚は、
 ――一度、その池を見てみたい。
 と言い、「これから行ってもいいか」と里村に尋ねた。時間が遅いこともあって、里村がためらっていると、しびれを切らした和尚は、「今から行く」と言って電話を切った。
 玄白和尚が里村の元にやって来たのは電話をしてから二時間後のことだった。里村の元を訪れた玄白和尚に、ポストに投函されていた朱文字の文書を見せると、玄白和尚の顔色が変わった。
 「これは、霊界から送られてきたものに違いない。もっとも、実際に書いたのは人間だが、霊的なものに書かされて、きみのポストに投函した可能性がある」
 と説明をして、やおら玄白和尚は朱文字で書かれた文書をライターの火で炙り始めた。
 「和尚、やめてください。それは大切な証拠品です」
 だが、時すでに遅く、文書はメラメラと炎を上げて燃えている。
 「これを見ろ!」 
 玄白和尚が燃え上がる文書を指さす。炎に包まれた文書の先が怪しく揺らめいて、やがて、それは一つの手の形になった。
 「亡くなった女性は死の直前、自分を襲った男の体のどこかに手の跡を残しているはずだ。それをこの文書は伝えようとしている」
 「手の跡――?」
 「そうだ。容疑者が浮かび上がったら、その容疑者の体を調べてみるといい。必ずどこかに亡くなった女性の恨みの手形が残されているはずだ」
 俄かには信じがたいことだったが、玄白和尚の霊力を信じないわけにはいかなかった。しかも里村は炎の先が手の形になるのをしっかりと見届けている。
 「警察にそのことを報告しておきます」
 と断って、早速、里村は、二宮に、
 「容疑者が特定されたら、その人物の体を調べてほしい。亡くなった歩美さんの残した手の跡が体のどこかに残っているはずだ」
 と告げた。二宮は、笑いながら、
 「一年半前だぞ。手の跡が残されているなんて――。信じられないが、容疑者が特定されたら、一応調べてみよう」
 と言って二宮は電話を切った。
 里村は、玄白和尚と共に万亀池に向かった。神社の近くまで来た時、玄白和尚は、里村より先に池に向かって歩きはじめた。
 「すさまじい霊気が漂っている。死者の怨念はよほど激しいものだったのだろう」
 歩美の無念を思うと、怨念の激しさは里村にも容易に理解できた。
 「しかし、一年半前に行方不明になり、殺された者が、どうして今頃になって――」
 「そういったことは別に不思議なことじゃない。生きている者の時間と死者の時間は異なる。同じ時間の単位では測れないものだ。さ迷える死者の魂が、何かの加減で蘇り、怨念を晴らしてほしいとこの世に出現したのだろう。恨みを晴らしてやらなければならない」
 万亀池の淵に立った玄白和尚は、死者の霊を癒すべく呪文を唱え始めた。すると、それまで静かだった池の水面が俄かに波立ち始め、やがて池の中央に大きな渦を作った。
 その瞬間、渦の中央から大きな亀が顔を覗かせた。亀は、呪文を唱える玄白和尚を見つめていたが、やがてゆっくりと池の淵に立つ玄白和尚のそばに近付いてきた。想像を超える甲羅の大きさであった。水面に巨大な甲羅を浮かび上がらせ、万年生きていると噂される亀は、ゆっくりと淵に辿り着き、大きな首をそらせて玄白和尚を見上げた。亀に構うことなく玄白眼和尚の呪文は続いている。
 一度は、淵に上りかけた亀であったが、玄白和尚の呪文が終わると、そっと淵を離れ、静かに池の底に沈んで行った。
 「この池の亀は、千年も万年も生きている。おそらく、生と死を超越した世界に生きているのだろう。生きている者の声も死者の声も聞こえているはずだ。亀が、私のそばにやって来て、私の耳に語りかけてきた。女性を殺害した者は、女性の身近にいる者だと」
 殺害は、この池の近くで行われたのだろうか。それを亀は目撃したのか――。
 「被害者の身近な人物で、被害者の手の跡が残っている者。それが玄白和尚の確認した犯人の正体ですね。早速、二宮警部補に伝えます」
 玄白和尚は深く頷くと、再び、池の水面に向かってしっかりと手を合わせた。

    8

  犯人が逮捕されたのは、それから数日後のことだ。二宮警部補から里村に電話があった。
 ――里村、いろいろすまなかったな。ようやく犯人逮捕にこぎつけたよ。 ――犯人が逮捕された? 犯人は一体、誰だったのですか?
 ――最初のうち、俺たちは歩美の元亭主、佐竹が怪しいと睨んで、捜査を開始した。佐竹は歩美にDVを働き、別れた後もストーカーのように付きまとっていた。それは佐竹も認めた。だが、歩美が殺害されたと思われる時期、佐竹は、その時期を含めて半年間、海外研修のため、上海へ出かけていたことがわかった。里村から聞いた歩美が付けたという手の跡だが、佐竹にはそんな跡はなかった。
 ――佐竹が犯人でないとすると、一体、誰が?
 ――行きずりの犯罪でないことは想像できた。あの池の近くで殺されたということは、まず、どう考えても夜の時間だ。それも人通りの途絶えた遅い時間帯に限られる。また、あの場所に、夜の時間帯に歩美さんが一人でやって来るとは思えない。呼び出されるか、その人物と会うためにあの場所を訪れた可能性が高い。
 防犯カメラを徹底的に調べたら、歩美が行方不明になった当日の夜、あの池の近くの防犯カメラに、気になる男が一人映っていた。同じ時間帯に、その男と一緒ではなかったが、歩美も映っていた。歩美の周辺を調査するうちに、防犯カメラに映っていた男と、よく似た男を見つけることができた。その男を参考人として警察に呼び、尋問したが、当然、否定した。当日の防犯カメラに映っている男とよく似ているだけでは、容疑者扱いすらできない。そこで、念のために体に残されているという歩美の手の跡を調べてみた。すると、腕の付け根の辺りに、五本の指跡がきれいに残されているのが見つかった。この跡は何だと、男に聞くと、男は、女房にやられました、という。奥さんを呼んで、手を合わせてみたが、大きさがまるで違う。嘘をつくなと、怒鳴ると、男は、今度はスナックの良美という女だと言う。その女を呼んで指の跡と合わせてみたが、やはり違っていた。しつこく尋問すると、ようやく男は落ちた。
 ――その男とは誰ですか?
 ――山崎幸四郎だ。歩美の勤務していた会社の課長で、見かけは真面目で大人しい男だが、歩美が勤務し始めた頃から、歩美に目を付け、付け狙っていたらしい。会社では控えめにしていたらしいが、会社の宴会や集まりなどがある時など、酒に酔ってセクハラまがいに言い寄っていたようだ。ストーカーの正体も彼だった。歩美が旦那と別れてからは、積極的に誘うようになったらしい。だが、歩美は歯牙にもかけなかったようで、これ以上、しつこく付きまとうと、会社に申し出ると言って、彼を脅したようだ。会社に告発されると困る山崎は、あの日、山崎は、歩美の作成した書類の件でクレームが出ている、と偽って呼び出し、神社近くで凶行におよび、重りを付けて池に放り込んだと自供した。
 ――山崎……、あの課長が犯人でしたか。それにしても、歩美はなぜ、あんな場所へあんな時間に行ったのでしょうか。山崎が危険な男と知っていたはずなのに。
 ――歩美が仕事でミスをしたというのは本当だったようだ。山崎がうまく処理をして、歩美にクレームが来ないようにしていたらしい。だが、歩美はそのことを知らなかったようで、クレーム対策の打ち合わせをしたいと山崎に呼ばれ、渋々やって来た。神社近くの商店街で食事をして、そこで、山崎は、自分にまかせておけば大丈夫だと言って、歩美を安心させ、少し散歩をしようと、あの場所へ連れ出した。そこで、自分と付き合うように歩美に言ったが、彼女は応じなかった。それどころか、これ以上、自分に関わると、ストーカーをしたことや、これまで散々、セクハラしてきたことを会社に報告すると逆襲した。頭に来た山崎は、クレーム処理までしてやって庇ってやったのにと、身に着けていたネクタイで衝動的に歩美の首を絞めた。その時、歩美は逃れようとして、山崎の腕を掴んだらしい。腕に残されていたのは、その時の跡だ。歩美を殺害し、池に放り込んだ山崎は、その指跡が消えないことをずっと不思議に思っていたようだ。結果的に歩美の指跡が、山崎の犯行を証明したようなわけだが、あれがなかったら、お手上げの状態だった。
 二宮警部は、一通り話し終えると、
 ――霊の存在など信じたくないが、今回ばかりはあんたに脱帽だ。あんたの助言がなければ難しいところだった。ありがとう。
 と言って電話を切った。

  万亀池は、事件以来、訪れる人が多くなった。しかし、万年生きているという亀には、その後、誰も出会ええていない。里村もあれ以来、目撃していなかった。同様に火の玉も、ご無沙汰だ。今はもう噂すら出ていない。

<了>

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