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What is it ?

 夜空を彩る花火を居間で眺める二人。
 竜は、渉に言った。
「なぁ。俺たち。もう別れよう…」
「えっ。どうして?」
「俺。自分の子供が欲しくなった」
 その夜のフィナーレを飾る大輪の花火が二人の前でパッと、一際派手に散った。
          *
 猛烈な台風の朝。
 渉は、最近付き合い始めた彼氏の翔とベッドの中で話している。
「ゲイで子供欲しいかぁ…」
「そう言われるとね。別れる以外ないし」
「それで荒れてたんだ」
「うん。でも、どん底で翔に救われた」
 二人、苦笑。
「今日、仕事は?」
 翔は、犬のトリマーだ。
「こんな日。犬のトリミングに来る客なんて居ないじゃん。だから休んだ」
「ふーん」
 渉は店を出た瞬間にずぶ濡れとなる犬を想像して苦笑する。
「渉は?」
「台風上陸だもん。在宅勤務」
「ふーん」
 二人、ラブラブ。
          *
 木枯らしの夜。
 二人が帰宅すると玄関ドアの前で、渉の元彼の竜が蹲って眠っていた。
「誰?」
「元カレ」
 竜の前にしゃがむと鼻をクンクンさせ、渉を見て言った。
「こいつ。臭い」
 竜を担ぎ上げ、翔は部屋に入った。
「ちょっと、翔…」
 風呂場で、翔は竜を洗っていた。
「人を洗うのって犬より簡単。臭い奴とは話したくないから」
          *
 渉と別れた後、竜はクラブで意気投合した女と一緒に暮らし始めたが直ぐに棄てられ、現在はホームレス同様の暮らし。
 理由は、竜が彼女にプロポーズをしたことらしい。
「何で?」
「定職無いのに結婚なんて図々しいって」
 渉、唖然。
 翔、爆笑。
「お願いです。ここに居させて下さい」
「はぁ?」
 渉、マジ切れ寸前。
 翔、ニヤニヤ笑い。
「竜さぁ。何を言ってるか自覚してる?」
「はい。でも、お金も無くて、行くところが無いんです。お二人の邪魔はしませんから」
「もう、充分してるから」
 対峙する二人に翔が言った。
「まぁ、良いんじゃねぇ」
「えっ。翔。何言ってんだよ」
 竜、希望の眼差しで翔を見つめる。
「迷い犬みたいなもんだ。しばらく泊めてやれば」
「でも…」
「あんた。料理得意?」
「はい」
「料理と掃除。頼むわ」
「はい。洗濯もしますが…」
 竜、即答。
「絶対、しなくて良いから」
          *

 イブの夜。
 三人は、居間で初雪を眺めている。
 左に竜。
 右に翔。
 渉、二人の温もりにウキウキ。

 …妙な縁だけど心地好いかも…

(END)
(次回アップ予定:2021.5.6)


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