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【春の逃避行】3月の140字小説

こんにちは。Twitterで「140字のエッセイスト」を名乗っている者です。
3月も終わるということで、3月をテーマにTwitterに書き溜めた140字小説を、noteでまとめて公開してしまおうと思います。
現実社会は大変なことになっていますが、僕の140字小説の中では、できるだけいつも通りの春を感じられるように書きました。最初はいろいろと振り回された僕自身の逃避行のつもりで書いたのですが、読んでくださるあなたも、現実ですり減った心を少しでも癒したり潤したりしていただけたら、これ以上の喜びはありません。

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誕生花というものがあるらしい。私は3/28生まれで、ソメイヨシノだ。どうせ私は儚く散る運命なんだと思うと、桜も自分も好きになれなかった。
そんな私にも彼氏ができて、今日はじめて誕生日を祝ってもらえた。彼は9/17生まれ。誕生花はフウセンカズラ。花言葉は「あなたと一緒に飛びたい」



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「第一志望に合格したら、あの子に告白する」
そう決めて臨んだ大学受験。僕は合格を勝ち取った。典型的なフラグにも思えたが、そんなフラグはへし折ってやった。
さあ告白するぞ。今の僕ならなんでもできる気がする。大丈夫。絶対成功する。

……ところで、あの子彼氏とかいないよね?



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今日は彼女の大学入試の合格発表。結果はまだ聞けていない。合格なら、春からは離ればなれだ。ほんの少しだけ落ちてほしいと願ってしまう。けど、不合格で悲しむ彼女も見たくない。いや…でもやっぱり……
スマホの通知音。彼女からのメッセージ。その文末には、サクラの絵文字が添えられていた。



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2年前の秋、京都にライトアップされた紅葉を見に行ったのが、彼女との最後のデートだった。
季節は変わり、今日は大学の卒業式。僕と彼女は久しぶりに再会した。
頭の上には、咲き始めた桜が広がっている。晴着姿の彼女を見て、僕の心の中を、桃色の今と赤色の過去が埋め尽くした。



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「大人になりたい」
大学に入って、一つ年上のあなたに恋した僕の、健気な願いだった。
あれから4年。あなたが卒業式に来てくれた。
僕も少しは大人になったと思ってたのに。
あなたを見てときめくのも、自分の未熟さが嫌になるのも、あの頃と一緒だ。



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4月某日。私は想いを寄せていた相手とお付き合いすることになった。
きっかけは3月最後の週末。時節柄家から出られず、ずっと彼のことを考え悶えていたのだが、日曜日の夜、我慢できなくて電話をかけてしまった。
「どうしたの?」「明日会うまで待てなくて」電話越しに彼が優しく笑った。



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いつもの道を歩いていつもの駅へ行き、いつもの車両に乗り込むと、いつものイヤホンでいつものバンドを聴く。いつもと同じルーティン。だが、今日は珍しくいつも降りる駅を通り過ぎる。あといつもと違うことといえば、制服を着てないことと、手に大きなスーツケースを持ってることぐらい。


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