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『隣のずこずこ』柿村将彦著

某ジブリ的なヤツがモチーフになっているのは、書名からなんとなく想像される。人里離れた山村が舞台、主人公が女の子、人ではないものが重要な存在として登場する物語、といったところが共通点か。といってもジブリ的なヤツをちゃんと観たことはないので、それ以上語ることは出来ません、ごめんなさい。

女の子の視点で話が進み、文体は軽くて読みやすい。けど書かれていることは怖い。文体が違ったらただただ気味の悪い話になったかもしれない。すごく恐ろしい情景なのに、軽く感じる違和感。ファンタジーに分類されるらしいけど、安易な赦しも救いもない。そして、本当に恐ろしいことは詳細には書かれない。心理的にじわじわ来る。

横溝正史が書いたら、おどろおどろしい描写になるんだろうな。

解説で森見登美彦さんが少し触れているけど、明かされていない設定がたくさんありそう。

幻想の内と外、破滅を前にした人間のあり方、思い出と忘却、そういう哲学的な問いも内包されている。面白かった。

これを読んだら、信楽焼の狸を正視できなくなるかもしれない。と言いつつ上の写真で気づいたけど、この狸たち、立派なおっぱいしてるな。



本書は札幌駅構内の弘栄堂書店で購入した。この本を大きく展開している書店は見かけないが、ここでは目立つところに平積みし、手描きのポップが添えられていた。書店員が実際に読んで強くプッシュしているのが感じられられ、好感を持って購入した。こういう書店は好きだ。


なお、本書を読む間に中田翔がマー君から1号ホームランを打った。

記念ボールならぬ記念本にしておく。