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その名は一度きりではない

『浅生鴨短編小説集 すべては一度きり』を楽しんでいる。

50編の短パン、じゃない短編小説が詰め込まれており、バラエティに富んだ状況、笑いから恐怖までよりどりの楽しさがある。気楽に読めるばかりでなく、じっくり味わうと深みのある表現にゾクッとする。

それぞれが1話完結の物語であり、物語間の関係は基本的にはない。

関係ないのだが、登場人物の名前は何度も使用されている。何度も出てくることで、別人のはずなのに親しみが湧いてくるのが面白い。

そして、同じ名前が複数回登場すると、それを数えたくなるのが人情だ。

え?なりませんか?


一歩踏み出して、50編の登場人物を集計してみた。


なお、名前もネタバレと言われればそうかもしれないので、未読の方は以下ご注意ください。


それでは結果。

丸古三千男(丸古、マルコ、ミチオ含む):20回
渡師菱代(菱代含む):8回
青谷凪亮子(亮子含む):7回

この3つの名は第1話に登場し、総合での登場回数もトップ3である。

なかでも「丸古三千男」がズバ抜けて多く登場割合は40%に達した。話によって立場は多様だが、たいてい胡散臭いオジサンである。作家としても登場しており(3回)、おそらく著者自身の分身でもあるのだろう。しかし私が読むとどうしても筒井康隆氏の姿が浮かんでしまう。なお、1話目の描き方から、渡師菱代は「秘書」、青谷凪亮子は実在する編集者に因んでいると思われる。

以下、登場回数順に列記する。類似名(括弧内)はまとめて集計した。


7回(同率3位)
飯尾拓也(メシオ、タクヤ、拓也、含む):男性名。「メシを炊く」のダジャレか。少年~若者。
三葉里桜(里桜、三葉含む):女性名。「サンバ」「リオ」のダジャレか。主に若者。


6回
渡師伊輪(渡師、伊輪含む):男性名。「私ダーリン」のダジャレか。渡師菱代と夫婦で登場する場合がある。
井塚:男性名。主にベテラン社員。この名が出てくる話はだいたい好き。
伊福:男性名。
可児治夫(治夫、ハルオ、可児含む):男性名。登場年齢は幅広い。


5回
井間賀俊哉(シュンヤ、俊哉、井間賀含む):男性名。「今が旬」のダジャレか。登場年齢は幅広い。
砂原(サハラ、佐原含む):男性名。上記井塚の部下で2回登場。若者。


4回
木寺俊貫(木寺含む):男性名。重要人物~主役級。
甲斐寺:男性名。重要人物~主役級。
比嘉:男性名。主に脇役のオジサン。


3回
砂原茂禄子(佐原茂禄子、茂禄子含む):女性名。「サハラ」「モロッコ」。若いけど仕事が出来そう。
井塚有音(有音含む):姉妹の「姉」役で登場。間違いなく姉。
街野彩(彩、街野含む):若者。「街のあかり」のダジャレか。


2回
早麦(サバク含む):男性名。
デン:旧時代をモチーフとした幻想小説に登場。剛の者。

以上。

なお、集計した結果、現段階で新しい事実は発見されていない。


数え終わった達成感と、何やってたんだろうという徒労感。

これもまた、週末の醍醐味であろうか。



なお、「丸古三千男」と「井塚」の名は、同人誌『ココロギミック』にも寄稿者として登場する。

『すべては一度きり』と『ココロギミック』を両方持っていることで、楽しみが広がる。

あれ?
「井塚」って「匡」という名前だったの。いま『ココロギミック』を確認して知った。名字なしの「匡」って名前1回出てきたかも。再集計?!

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