古本にはさまった物語
古本屋で手にした本には、元の持ち主を偲ばせるものがときどき挟まっている。
文庫本に、明らかに動物のものとおぼしき白い毛が一本ピョコっと挟まっていた。
その本の題名は「ノラや」、内田百閒の著書である。
ネコとの出会い、暮らしを綴った本というのは知っていた。猫好きの方が読んでいたに違いない。そしてあれは飼い猫のものに違いない。間違いない!
ちょっと楽しくなって、それだけで購入。
ただ、猫好きの方にはつらい描写もあるという。
本は(毛が挟まっていた以外は)とてもきれいな状態だった。折り目のひとつもついておらず、新品に近い状態だったので、途中でつらくなって処分したんじゃないだろうかと、勝手に想像してみたり。
その『ノラや』。未読本がたくさんあるので読む順番はまだ先と思っていたけど、やはり気になって読み始めた。
猫の質感までわかる描写。すごい。猫かわいい。
そして、、、うん、これは、つらい。
あとがきを読むと、フィクションではないらしい。普段素っ気なく見えても、痛々しいくらいに猫を愛している。
『吾輩は猫である』の苦沙味先生も、あとの後苦しんだんじゃないだろうかと想像してみたり。