『三四郎』雑感
夏目漱石の『三四郎』を読んだ。田舎から都会に出てきた大学生。なんだか自分のあの頃を思い出すようなシチュエーションだ。たぶん同じように、自分に重ねて読んだ人は多いのだろう。
有名な作品あので、あらすじや感想なんかは探せばいくらでも出てくるだろうから、くどくど書き連ねてもおもしろくはない。
話の本筋とは関係ない部分で、気づいたことを何点か記録しておく。
まず、読み進めて早々に思ったこと。
柔道の話ではなかった。
それは『1・2の三四郎』だ。
なんだ柔道は出てこないのか、と思ったら1ページだけ、「広田先生」が柔術使いの学士に技を掛けられている場面があった。ちょっとニヤッとしたけど、主人公の三四郎は何の技も繰り出さない。
上記の漫画と『坊ちゃん』あたりをごっちゃにして、けんかっ早くて柔道の得意な主人公を勝手に想像していた。知ったかぶって周りに言わなくて良かった。
もうひとつ、読んでハッとしたことがある。密な環境を避けるというのは、やはり一般的な風邪対策なのだ。
三四郎が芝居を見に行ったあとインフルエンザに感染する場面がある。三四郎が芝居に行く下りの直前、一緒に行きませんかと誘った「広田先生」にこう言われている。
「(略)日本の芝居小屋は下足があるから、天気の好いときですら大変な不便だ。それで小屋の中は、空気が通わなくって、煙草が烟って、頭痛がして、――――よく、みんな、彼(あれ)で我慢ができるものだ。」
最近よく耳にする「密」なやつじゃないか。
そういう意図の描写ではないが、そのようにも読めることに気づき、最近の話題につながってザワっとした。
同じ芝居を見に行った人はちょっと離れた席にいたが、同時期に感染した描写はない。たぶん、三四郎のほど近い席にだけ感染源がいたのだろう。また、見舞いに来た友人たちもその後風邪を引いた様子もないので、三四郎の感染力は低かった(R<1)と推察される。
ん?私は何を言っているのだ?
ともあれ、何歳になってから読んでも、名作は素晴らしいと思います。