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『恩讐の彼方に』菊池寛

ああ、こういう話だったのか。

親の仇を赦す話だというのは、なんとなく知っていたけど、やはりちゃんと読むと印象が違うなぁ。

江戸時代、主殺しは重罪、仇討ちは正当という時代。

『恩讐の彼方に』という題名は、仇討ちをしようとする息子からの視点だが、物語の主役は罪を犯した側である。

主殺しを犯した主人公は自らの罪を悔いて、殺めた以上の人々の命を救う仕事に残りの人生を真摯に捧げた。読みながら次第にその過酷な姿に同情を覚えていく。しかし、物語終盤、被害者の息子が登場することで、罪そのものは消えないという事実を読者に思い起こさせる。そして、恩讐を越えた二人の和解がクライマックスとなる。

最初の事件が起こったときは息子が3歳ということだから、父親の顔はほとんど覚えていないに等しい。物心がついてから目前で事件が起こっていたのであれば、はたして仇敵と和解できただろうか。そう考えると、かなり巧妙に話の構成が練り込まれているように思われる。


無駄な修辞がなくスイスイ読めて物語が展開していくのは、読んでいて気持ちが良かった。青空文庫でも読めるようです。


さて、「吾輩は猫である」とあわせて、祖母からもらった本はようやく読めたことになる。

読んだよ。