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かも選書、読んだらここに追加していくの巻

このnoteは、私が浅生鴨さんの選書(かも書店)の本を読むたびに感想メモをその都度書きたしてていく、個人的読書記録てす。

作家の浅生鴨さんが選書した「かも書店」。国内外の文学から科学書まで幅広く200冊超もあり、ほぼ日でイベントや大阪ジュンク堂でフェアが開催されていました。フェアは終わっていますが、読んだことのない、読んでみたい本がたくさんあって、少しずつ入手しています。

以下、読んだメモでござい。

①『絶対製造工場』 カレル・チャペック、飯島周訳

二つの大戦に挟まれた時代、そこに生きた作者が、多様性を受容することのできない社会を訴えている。鴨さんの視点にとっても似ている。

作者本人の後書き、訳者解説を読むとさらに興味深いです。発表当時は内容の本質ではないところを批判されたようで、作者本人がわざわざ著作の意図を説明している。また、締め切りに追われながら書いていたこともそのまま表明していたり。あぁ既視感が。


②『氷』 アンナ・カヴァン、山田和子訳

冒頭から「私は道に迷ってしまった」ですからね。ふふっ。

物語の目的も行き先もわからない、謎は謎のまま、登場人物の名前すら最後まで記されない、その語りが現実か妄想かも明らかにされない。なかなか安心して読めないんですが、読後感はなんかいいんです、じんわりした興奮が残ります。だった、そんな話に感じました。起承転結やオチをまとめる必要はない、たどり着いたところが目的地。鴨さんの書き物の自由で自然な展開に通じる感じがします。


③『ソヴィエト旅行記』 ジッド

百聞は一見にしかず。素直な気持ちで実際を見て感じること。


④『月と篝火』 パヴェーゼ

これは生涯の友になるかも。解説がすばらしい。


⑤『英国諜報員アシェンデン』 モーム 

派手なアクションはないけど、スリリング。主人公は作家をしながらスパイ活動をしている。すべての作家さんがあやしくみえてくる。


⑥『白球残映』 赤瀬川隼

だんだん盛り上がる。最後の2篇で涙。


⑦『タコの心身問題―頭足類から考える意識の起源』 ピーター・ゴドフリー=スミス、訳夏目大

知的刺激。タコ型神経構造がこれからの社会のあり方なのかな、など妄想。


⑧『寛容についての手紙』 ジョン・ロック

今読んでもその問題意識の正当性に違和感を感じない。いまだに同じ課題があること、今の言葉のようにさえ感じる。


⑨『断片的なものの社会学』 岸政彦

浅生鴨さんが「かも書店」でどうしても一冊選ぶならこれ、と書いていた。言葉に残されない生活、暮らし、人生の断片がある。わかり会っていようがいまいが、それぞれの暮らしがそこにある。余韻が忘れられない。


⑩『三美スーパースターズ最後のファンクラブ』 パク・ミンギュ

面白かった。これを読んで韓国文学に俄然興味がわいた。


⑪『ノラや』 内田百閒

野良ネコが「先生」と呼ばれる人の家にやってきて、まるで夏目漱石の『吾輩は猫である』のような微笑ましい始まりだなぁと思ったら、早々に切ない展開となる。これは、犬猫を飼った経験のある人は涙なくして読めません。著者も泣きっぱなしだけど。文豪と呼ばれる人に失礼かもしれないけど、いい本。


⑫『ファクトフルネス』

売れている本には理由がある。こういう本がきちんと売れているのは嬉しい。世界は変わり続けていること、常にデータを更新して正しく見つめる姿勢が必要であることを教えてくれる。すばらしい教養書。


⑬『私たち異者は』スティーブン・ミルハウザー

浅生鴨さんが影響を受けた本とTwitterで語っていたので、ずっと気になっていた。ありきたりな風景の中で、ちょっとの違和感から描き出される心理描写にゾクッとする。異者・異物の存在によって、実は平凡な日常とは微妙なバランスで成り立っているものなんじゃないかと、考えさせられた。


○14『働くことがイヤな人のための本』中島義道 ※2021/2/9追記

なぜ働くのかという、働く意義に悩む人にあてた哲学者の思索。仕事との距離感、生きることの不条理さなど、働くうちに忘れかけていた哲学的な問いに正面からぶつかっていく。自分の心を見つめ直させられるわぁ。



※以下、選書前に読了済み

○『病原医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』 市原真

第一印象は口数の多いお医者さん。俯瞰で物事を理解しようとする視点にはハッとさせられる。


○『イン・ザ・プール』 奥田英朗

これ好き。強烈な個性的すぎる医者に接して、患者が勝手に気づいて変わっていく様は痛快。




作家さんのおすすめ本、選書を読んでいると、その作家さんの作品との相同性というか、共感や影響を感じることがあって、勝手にご本人に近づいた気分になります。

特に、これまでほとんど読んでこなかった海外作家の作品が幅広くて、新しい世界が広がりつつあります。


※とりあえず入手したけど、積ん読中
『オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里
『百鬼園随筆』内田百閒
『ジョゼと虎と魚たち』田辺聖子
『働くことがイヤな人のための本』中島義道
『自由思考』中村文則
『脳はなぜ「心」を作ったのか』前野隆司
『殺人犯はそこにいる』清水潔
『極東セレナーデ』小林信彦
『こちらあみ子』今村夏子
『いっぴき』高橋久美子
『料理の四面体』玉村豊男
『楽しい夜』岸本佐知子編訳
『図書室』岸政彦
『文学の哲学的基礎』夏目漱石
『文鳥・夢十夜』夏目漱石
『ネジの回転』恩田陸
『国を救った数学少女』ヨナス・ヨナソン
『窓から逃げた100歳老人』ヨナス・ヨナソン
『奴隷のしつけ方』マルクス・シドニウス・ファルクス
『湖』ビアンカ・ベロヴァー
『死に山』ドニー・アイカー
『賭博者』ドフトエフスキー
『オープン・シティ』テジュ・コール
『ハツカネズミと人間』スタインベック
『遺失物管理所』ジークフリート・レンツ
『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド
『殺人者の記憶法』キム・ヨンハ
『飛ぶ教室』エーリッヒ・ケストナー
『ヌメロ・ゼロ』ウンベルト・エーコ
『ひとはなぜ戦争をするのか』アインシュタイン、フロイト

「買うまでが読書」とはいえ、気が遠くなる。