祖母からもらった二冊の本
12歳の誕生日に、突然祖母から本をプレゼントされた。町内で別の家に暮らしていて、僕の両親とは微妙な距離感があり、親しくしていたとは言い切れないところがある。祖母から誕生日に何かをもらった記憶はなかったので、ちょっと驚いた。直接ではなく、母を通してだったけど。
本は二冊、夏目漱石『吾輩は猫である』と菊池寛『恩讐の彼方に』。祖母への無意識的な反発もあってか、その二冊は結局読むことがないまま実家の書棚に眠っている。
なぜ急に誕生祝いをくれたのかは定かでない。その後も誕生日に何かをもらった記憶はないので、お年玉以外で祖母から何かをもらったのは、その一度きりだ。礼のひとつも言わなかったからかもしれないが。
最近、文庫で夏目漱石を読み始めた。それで祖母に本をもらったことを思い出した。
『吾輩は猫である』はまだ読み終えていないが、噂に違わぬ名作だ。そういえば、一人暮らしの祖母の家には猫がいた。その猫は、彼か彼女かも全く覚えていない。祖母以外にはまったく懐かなかった。
『恩讐の彼方に』は青空文庫で触りしか読んでいないが、親の仇を最終的に赦す話らしい。どうして祖母はこの本を選んだのか。
祖母は読んだことがあったのだろうか。今となっては知る由もないが、ともかく読んでみようという気持ちになっている。果たして何を感じられるだろうか。