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12.腸内細菌はビタミンDを吸収するパートナー


 ポイント
1 ビタミンDを腸から吸収するためには腸内細菌(乳酸菌)が必要。
2 乳酸菌のエサは食物繊維。
3 抗生物質は腸内細菌も殺してしまう。

 乳がんを減らす行動
1 発酵食品(味噌、ぬか漬けなど)で乳酸菌を補う。
2 食物繊維を食べて乳酸菌にエサをあげる。
3 抗生物質は必要最小限しか使わない。
4 抗生物質を使った時は特に注意して腸内細菌を補う。
5 お肌、気分、便の状態で腸内環境をチェック。

 腸からビタミンDを吸収するには、パートナーが要ります。
 腸内細菌です。
 例えば、ラクトバチルス ・ロイテリという乳酸菌を経口摂取するだけで、ビタミンDの吸収量が25%アップすることが報告されています。(参考文献1)


 1人の人に腸内細菌は100種から3000種いると言われますが、たった1種の菌で25%違うのです。
 腸内細菌によっては、口からビタミンDを同じ量摂ってもたくさん吸収できる人と、ほとんど吸収できない人がいることになります。


 腸内細菌は、誰もが持っていて、一緒に生活しているパートナーです。
 腸内細菌は、私たちが生きるために必要な様々な栄養素の吸収を助けてくれたり、ビタミンをつくってくれたりしています。
 コアラが毒のあるユーカリを食べられるのも、パンダが硬い竹を消化できるのも、ゴリラが草食でマッチョになれるのも、腸内細菌のおかげです。
 そして、最近の研究では、腸内細菌が私たちの身体の健康だけでなく、脳、性格や嗜好、行動、にも大きな影響を与えていることがわかってきました。
 腸内細菌は基本的には母親から受け継ぎます。
 胎児の時は無菌です。
 産道を通る時に全身に塗られ、母乳を通して母親の腸から赤ちゃんの腸へ与えられるのです。(腸とおっぱいは繋がっているのです)
 腸内細菌の種類は人類どころか哺乳類になった頃から母から子へと受け継ぎ、一緒に進化を続けてきた大いなる遺産ということができます。
 ところが、2億年続いたその遺産相続がうまくいかなくなってしまいました。
 帝王切開が増え、人工乳が増えたことにより、母親から受け取りにくくなったことが一つの要因です。
 ただし、それはもう過ぎたこと
 今からお母さんに「もう一回産んでくれ」とか、「母乳を飲ませて」と言うわけにもいきません。


 もう一つの重大な要因は、抗生物質の出現です。
 抗生物質は、肺炎や尿路感染症などの細菌感染の治療には必要な薬ですが、使用すると腸内細菌も大虐殺してしまいます。
 そして、腸内細菌のバランスが崩れると、肥満に繋がったり、様々な病気の原因になったりするのです。
 家畜に対しては、肥満につながるいわゆるデブ菌を増やして太らせるために抗生物質が使われています。


 抗生物質の使用が多いほど、乳がんにかかるリスクも、乳がんで死亡するリスクも上がることが報告されています。(参考文献2)


 日本では、ちょっとした風邪や胃腸炎でも抗生物質を処方されることが珍しくありません。
 それらの病の多くはウイルス性であり、抗生物質は効きません。
 念のため、で飲んだ薬が将来の重大な病気につながっているのです。
 抗生物質の使用は必要最低限にすることです。
 もちろん必要な時はありがたく使います。
 そして使った時は、特に注意して腸内細菌を補充しましょう。


 腸内細菌は、発酵食品から補うことができます。
 一番のお勧めは味噌です。
 ぬか漬けにもたくさんの乳酸菌が含まれています。


 発酵食品としてはヨーグルトが有名で、確かに発酵食品なのですが、日本人は乳糖を分解できない人が多く腸内環境を悪化させる恐れがあること、牛乳は女性ホルモン過剰にする恐れがあること、乳牛に抗生物質が使用されていることなどから、乳がんを防ぐ目的ではあまりお勧めできません。(参考書籍1)(牛乳・乳製品と乳がんの関係は否定する報告もあります。)
 ドクター中松が前立腺癌を克服されたニュースでは、魚油、ヨーグルト、玄米が中心的な役割を果たしたそうです。
 それはまさにビタミンD、乳酸菌、食物繊維を補給したのです。
 前立腺癌など女性ホルモンが問題にならない癌で、乳糖を代謝できる人では、ヨーグルトは力強い味方になると思います。
 プロバイオティクスと呼ばれるサプリメントもあります。
 菌の種類はそれこそ数えきれないほどあり、それぞれ特徴があります。
 プロバイオティクスを飲むときに大切なことは、そのサプリメントを飲んでから自分の体調、心の調子、そして便の様子をよく観察することです。
 プロバイオティクスは高濃度の細菌の塊ですから、言うなれば、ご町内に突然大量の移民を連れてくるようなものです。
 人によって持つ腸内細菌の種類やバランスは異なります。
 もともといた腸内細菌とのバランスによって、合う合わないがありますから、身体、心、便の変化に気をつけて、調子の良いものを、調子の良い量、摂ってください。
 そして、腸内細菌を取り入れても、エサがなくては住みついて増えてくれません。


 善玉菌の餌は、食物繊維、簡単にいえば野菜や海藻です。


 味噌やぬか漬けなら、乳酸菌と食物繊維を一緒に摂ることができます。
 セロリなどの野菜スティックに、味噌マヨとアンチョビソースなどを着けて食べるのも最高です。
 腸内環境が良くなっているのか、どうしたらわかるでしょうか?
 ポイントはお肌(『肌は腸の鏡』と言われます)、気分(基本的に腸内がいい時は気分も落ち着いてストレスに強くなります)、便の出やすさや色、匂い、太さ長さなどです。
(一瞬でもいいので便を見る習慣をつけましょう)


 次は、ビタミンDをサプリメントで摂る方法をお伝えします。

👇につづく


(参考文献1)Oral supplementation with probiotic L. reuteri NCIMB 30242 increases mean circulating 25-hydroxyvitamin D: a post hoc analysis of a randomized controlled trial. J Clin Endocrinol Metab. 2013, 10, 2012-4262
(参考文献2)Antibiotic Use in Relation to the Risk of Breast Cancer
(参考書籍1)『乳がんと牛乳』(ジェイン・プラント著 径書房)

(Facebook 2018年10月29日より)

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