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発熱時の対処法〜アセトアミノフェンは使ってもいいのか?〜


 解熱鎮痛剤(げねつちんつうざい)を飲むなというと、アセトアミノフェン(カロナール、アルピニー、アンヒバなど)はいいのか?とよく聞かれる。
 ナースは夜間電話での相談によく「坐薬さして様子を見て」と答える。
 坐薬とはアセトアミノフェンのことである。
 なぜそう言うかといえば、ただ『なるべく夜間受診しないでほしいから』だ。
 何か対策を言わないと納得させられないから「坐薬」と言ってるだけの悪しき風習だ。
 早く

「味噌汁飲んで様子を見て」

 に変わる日が来てほしい。


 アセトアミノフェンは他の解熱鎮痛剤より作用・副作用ともに弱いものの、発熱時に使うことを私はやはりおすすめしない。
 たしかに患者の多くはクスリを「使っても」治る
 本人や親や医者の多くは、一時的に熱が下がった=よくなった、としか認識しない。
 解熱剤のせいで治りが遅くなったとか、けいれんの原因になったとは考えない。
 たった一度の熱冷ましによってショックや脳症を起こしててんかんなどの後遺症を抱えてしまった子たちがいることも知らない。


 私は悲しい経験を何度もしているから、使わないし、すすめない。

 悪くなった人はほぼ熱冷ましをはじめクスリを使った人だ。

 逆に言えばクスリを使わないだけで重症化を大幅に減らせるのだ。


 第一に、熱を下げること自体がよくない。

 発熱は身体が必要だからわざわざエネルギーを使ってやっていることだ。

 発熱することで一時的に免疫力を高めているのだ。

 解熱剤で下げれば、身体はまた熱を上げなくてはならない。
 寒い日にせっかく温めた味噌汁にドライアイスをぶっこむようなものだ。
 エネルギーを消耗する、水分塩分も失う。(脱水が重症化の入り口であることはこれまで述べてきた通りだ)
 熱の上がりぎわには患者はまた悪寒がし、小さな子は熱けいれんをおこす機会が増える。


 アセトアミノフェンに特徴的な最大の副作用は肝障害だ。


 保険金殺人にも使われた(参考1)
 連用した患者の血液検査で肝障害があることは珍しくない

「飲んでいると調子がいい」
 と言って、総合感冒薬(パブロ○など)を毎日飲んでたおばあちゃんに重大な肝障害が見つかることがある。

 主成分はアセトアミノフェンだ。
 興奮剤が入っているから、調子良く感じるだけだ。
(すぐ風邪薬を飲む人を、私は影で「パブロ○の犬」と呼んでいる。)
 熱が上がるたびに坐薬を何度もさされて、ひどい脱水と肝障害で入院になる子もいる。
 少量なら検査上は出なくとも、風邪の時は脱水や尿量減少、他の薬の併用で血中濃度が上がりやすく、ただでさえ頑張らなくてはいけない肝臓に負担がかかる。
 過量に使わなければ問題ないというが、いくらが適量なのかわからない。
 相次ぐ肝障害や肝壊死に、アメリカではFDAが過量使用に警告を促し、1回量・使用回数ともに基準を引き下げた(参考2)


 クスリの副作用はまだ分かっていないものも多い。
 妊婦のアセトアミノフェン服用が胎児のADHDを倍加させる恐れも報告されている。(参考3)(さては俺の母ちゃん飲んだな?)


 リスクを冒して使わなくてはならないクスリもある。
 しかしアセトアミノフェンにそんなメリットはない(参考4)


 私たちの本来の目標は一時的に楽になることではなく、重症化せず安全確実に治ることだ。


 解熱剤を使わないで患者が悪くなって後悔したことはこれまで一度もない。

 私が解熱剤を使わずに入院させてから小児科医が解熱剤を使い、翌朝親から
「解熱剤を使ってもらって熱が下がりました」(あんたは使ってくれなかったけどね)
 と睨まれたことは一度や二度ではない。
 それでも私は、
「よかったですね」
 と笑って去るだけだ。(十分補液したから、熱冷まし使わなくても下がったよ、などと反論はしない)

 高熱は確かに辛いが、水分塩分さえ摂れていれば、自分で出した熱で脳障害が出ることはない。(熱中症は別)
 問題は、アセトアミノフェンに替わる対処法を知らないことだ。
 替わるものがなければどんなにダメでも使い続けてしまうことは、穴の空いたパンツから政権まで同様だ。

 解決策とは現状批判ではなく、より幸せな道の開拓である。


 熱が出た時の対処法は3つ。

1 水分塩分(味噌汁)を少しずつでもこまめに摂ること、

2 感染巣があればそこをきれいにすること(咽頭炎なら塩うがい・鼻うがい、肺炎なら痰を出すこと)

3 熱さまシート、水枕、濡れタオルなどで頭を外から『気持ちいいくらい』冷やしてやること
 頭を冷やすのは身体が熱を下げるためではなく、熱を上げるのを助けているのだ。
 頭以外は暑がらない限り冷やしてはいけない。
 暑がる時は、もう熱がいらなくなった時だ。

 あとは、
 水分が取れない、呼吸が苦しい、意識がおかしい、の3つがなければ、ゆっくり寝て熱が下がるのを待てばよい。
 もし万が一、解熱剤を飲まなかったせいで悪くなった、なんて人がいたら、いくらでもいしいのせいにしていい。

 熱は下げるな、下がるのを待とう。


(追記)便秘の解消も「感染巣があればそこをきれいにする」の一つ。


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