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自分・家族・子どもを他害自害から守るためにできること 〜川崎殺傷事件はなぜ5月28日に起きたのか?

 以下は昨年6月に書いた文章ですが、上のニュースにあるように女性の自殺が急増中とのことでシェアします。

 どうか、今は早まったことしないで、

(あ〜なるほど、こんなに嫌な気分なのは、天気のせいもあるんだな〜、ちょっと待ってみよう。なんならビタミンDサプリでも飲んでみようかな/飲ませてみようかな)

 と思っていただければ幸いです。

 自殺と他害自害はビタミンD・セロトニンバランスについては同様に考えていいと思います。

 今年は4月からの自粛と7月の長梅雨でビタミンD低下。続く8月の猛暑でセロトニンが急上昇。その後の曇りの日にはセロトニン急降下から自殺や他害自害が起こりやすい条件だったと言えます。(詳しくは5を参照)

 この秋も引き続き低ビタミンD・セロトニン急降下が起こりやすい条件が続くと考えられます。

 前半ややまどろっこしく救いようがない感じなので、まずは5~7だけ読むことをお勧めします。(前半で言いたいことを一言でまとめると「これまでの対策じゃダメ」です)


目次

1.刑罰は抑止力にならない

2.『一人で死ね』論争からわかること

3.つながりは抑止力になるか?

4.精神医学は抑止力になるか?

5.事件が5月28日に起きた理由

6.セロトニン-ビタミンDバランス

7.大切な人を守るためにできること

あとがき なぜ日本人のビタミンDは不足するようになったのか?


まえがき

 川崎市登戸の殺傷事件、多くの人がショックを受けていることと思います。
 それ以降も凶悪事件が続発しています。
 近年、自らも命を断つ、あるいは逮捕されて社会とのつながりを断つことを前提として、他人に危害を加える事件が世界的に増加しています。
 日本では、通り魔・ストーカー・交番襲撃・いわゆる無理心中(無理な時点で心中という言葉はおかしいのですが)など。
 海外では、学校などでの銃乱射・自爆テロなど。
 これらをまとめる言葉がないので、ここでは他人を害して自分を害するという文字通り『他害自害』と呼ぶことにします。

 「拡大自殺」という言葉もあるようですが、実行者は必ずしも自殺するとは限らず、また主目的も自殺よりむしろ他害にあると考えられるケースも多いので、語弊があると思います。
 他害自害から自分の大切な人を守るにはどういう方法があるでしょうか?
 救急医療で様々な自傷他害で負傷した人や、種々の精神障害やいわゆる「ひきこもり」の人に対応してきた経験と最新の医学研究から考えてみます。

1. 刑罰は抑止力にならない

 他害自害の最大の特徴は、刑罰がその再発防止への抑止力とならないことです。

 刑法は「目には目を、歯には歯を」のハンムラビ法典以来、基本的には復讐法です。嫌なことをされたくないなら人に嫌なことをするな、殺されたくないなら殺すな、ということで成り立ちます。
 ところが、他害自害の場合、この「殺されたくないなら」が通用しません。
 すでに死んでいる犯人を死刑にすることはできません。極刑といわれる死刑が無意味なら、懲役刑も罰金刑も、さらには刑事罰以外のあらゆる社会的な非難も、犯人の親族への迫害も、何の抑止力もありません。
「死刑になりたかった」
 と言って通り魔をしたり、
「刑務所にもどりたかった」
 と言って再犯したりする人がいることを考えると、刑罰はむしろモチベーションを高めている可能性すらあります。
 というと、死刑廃止とか、厳罰化反対とかの主張と混同されるかもしれませんが、全くちがいます。
 刑罰は、刑罰を恐れる多くの人には抑止力になっているでしょう。
 ただ、こと自分の死を覚悟した他害自害に限っては、刑罰は抑止力にならない、実行した人をいくら罰したり責めたりしても、別の誰かが起こす次の他害自害から自分や家族を守ることには繋がらない、という厳然たる事実。
 まずはそれを認めることが1つの関門です。
 多くの人は恐怖と怒りで反応して、犯人を責めることで頭がいっぱいになってしまうからです。
 この文章の目的は犯人への報復ではなく、自分・家族子どもといった大切な人の命を守ること。そのために、まずは自分自身が冷静にならなくてはなりません。
 刑罰が抑止力にならないということは、現行の刑法や警察権力では他害自害を防ぐことができないということです。
 たとえどんなに法改正による厳罰化をしても、警官や監視カメラを増やしても、至近距離でいきなり刃物を抜いたり、クルマで突っ込んだり、爆発したり、毒を撒いたりする他害自害を抑止することは現実的ではありません。
 つまり、他害自害から自分の家族や子どもを守る根本的解決法は、他害自害する人を減らさなくてはならないということです。


ポイント1  他害自害の被害者を減らすためには他害自害する人を減らさなくてはならない。


2. 「一人で死ね」論争からわかること


 事件後、『一人で死ね』論争なるものが起こりました。
「『死にたいなら他人を巻き込まず一人で死ね』というのは当然の感情」
 という人と、
「社会的な疎外感が背景にある人に、つながりを断つような物言いは疎外感を強めて次の犯行を促す危険があるからやめて」
 という人がいます。
 まず、『一人で死ね』という言葉は、恐怖と怒りから他害自害した人を非難する報復の言葉と考えられます。
 実際には、すでに死んでいる犯人に一人で死ねと言っても意味がありませんし、これからする人が「はい、そうします」と聞いてくれるとも思えません。
 それでも言いたくなるのが多くの人の感情です。
「『一人で死ね』と言うな」と言われても、言う人はそう言いたい感情を抑えられず、指摘されるとさらに
「悪魔の身になれというのか!」
 などと却って怒りを募らせてしまいます。

 同様に、他害自害する人も他害したい感情を抑えられません。
 人間は感情に従って行動する生き物なのです。
 もちろん中には感情を抑えられる人もいますが、抑えられない人も多くいて、抑えられない人が言うし、やるのです。
 出来事に反応して、人々の感情は揺れ動きます。「一人で死ね」論争はまさにその反応の波紋と言えます。
 他害自害する人も論争する人も感情で反応して行動する生き物であり、いったん湧き上がった感情を合理的に抑え込むことは困難であるとわかります。
 他害自害する人はその入念な計画や装備からただ一人で死ぬことが目的ではなく、どんなに逆恨みや身勝手であっても、感情的に恐怖や怒りを抱えていて報復として他害することを目的としていると考えられます。
 一人でひっそり死にたいわけではないのです。
 ということは、他害自害させないためには他害自害したくなる感情にさせないことが必要ということです。


ポイント2 人は感情の生き物であり、他害自害を減らすためには他害自害したくなる感情にならないようにすることが必要。



3. つながりは抑止力になるか?


 では、他害自害したい感情にならないためには何ができるでしょうか?
「『一人で死ね』と言わないで」という考え方は、孤立がそうした感情になる原因であり、人と人のつながりが他害自害の抑止力になるということを前提にしていると思われます。それは本当でしょうか?


 実際は、他害自害を起こすの人の多くは完全に孤立した人ではありません。
 無理心中やストーカーは、人間関係があるからこそ起こります。
 自爆テロする人はそれを正義とする集団に属します。

 いわゆるひきこもりであっても、世話をしてくれる人(多くは親)がいたからこそ引きこもれたのです。


 救急医療の現場で、自傷行為をしてくる人の多くは「かまってくれる」付き添い人を伴って受診します
 自殺未遂既遂で搬送される人の多くは、発見する人へ当てつけるようなやり方をします。医療者は、動かない本人以上に痛々しい家族の姿を見ることになります。
 そうした自害は精神的ダメージを与える他害自害であるとさえ言えるでしょう。


 他害自害には、ムチャクチャにして他者に対して何かを主張したい、自分の存在を示したい、という欲求が透けて見えます。


 そもそも人間関係はうまくいけば大きな喜びをもたらしますが、うまくいかないとこれほど当事者のストレスになることはありません。どんなに仲の良い人でもお互いに気に入らないところがあるもので、そこを交渉したり資源を出し合ったりして自分の居場所をつくりつつ、人と共存を図ることで関係が成り立つものです。
 多くの人は成熟に伴い、経験とともにそうした社会的スキルを身につけていきます。
 気に入らないことがあれば暴れたり騒いだりして関係を築いてもらえるのは、乳幼児だけです。
 乳幼児はかまってほしい時、泣きわめいたり駄々をこねたりして自分の存在をアピールします。
 そのやり方を見ると、他害自害する人も自分をアピールしたがっている。孤立しているからというより、そこにかまってほしい人がいるからこそ他害自害すると考えられるのです。
 しかし、そうした欲求やいわゆる動機に焦点を当てることは他害自害を防ぐことにはつながりません。
 登戸の事件では、差別した従姉妹の通った小学校の子どもたちを狙ったのが動機という報道もあります。
 子どもの頃に差別されて性格が歪んだのだろう、などという推測がされていますが「差別されて歪んだら他害自害してもしかたない」ことにはできません。
 逆に、そうした共感・情状酌量ともいった態度は、同じような感情を抱えた人に、他害自害すればそうやって意を汲んでもらえると思わせることにつながりかねません
 他害自害をする人は、人間関係がうまく築けない原因を抱えているので、人と関わるほどに疎外感を感じてしまいがちです。
 周りの人は実際は疎外などしているつもりがなくとも、疎外感を感じるのは本人の勝手です。
 さらにその疎外感を妄想の連鎖によって増幅させてしまうことを、周りの人が止めることは困難です。何を言われても言われなくても、どう受け取るかは受け取る人次第だからです。
 そもそもリスクのある相手と人間関係を築こうとすることは他害の対象となる危険を伴いますから、関わりたくない周りの人が多くなっていくこともまた無理からぬことです。
 人間関係は全ての人にとって、もちろん大切なものです。ただ、他害自害の抑止力とするには、単に人間関係を増やせばいいというものではなく、そもそも人間関係を築きにくい原因を改善し、人間関係の質を改善しなくてはならないことがわかります。

ポイント3 人間関係を増やすことは必ずしも他害自害の抑止力とはならず、関係をうまく築けない原因の改善が必要


4. 精神医学は抑止力となるか?


 凄惨な事件を起こした人が生きている場合、精神鑑定が行われて責任能力の有無が問われることが多くあります。
 しかし他害自害の場合、すでに死んでいる人に責任能力の有無を問うことも精神鑑定することもできません。
 「他害自害を起こすような人は精神を病んでいるのだから精神病院に隔離せよ」という考え方は、これから他害自害を起こす人がわかっていれば有効ですが、実際には誰が起こすかわかりません。
 他害自害を未然に防ぐ薬、というのはあるでしょうか?
 妄想や幻覚を抑える薬はあるにはあるのですが、あらゆる薬の共通点は、時間とともに効果が失われていくことです。


 実は、この薬の切れぎわ、というのが一番危ないのです。

 中でも、アメリカでは1988年、日本では1999年から抗うつ剤として使用されているSSRIと呼ばれる薬物は、セロトニンというホルモンを増やす作用があります。
 セロトニンは幸福ホルモンとも呼ばれ、高まると気分が高揚します。
 SSRIは、薬が効いている間はセロトニンを高め、気分を高める作用があります。
ところが、薬が切れてきてセロトニンが下がる時、こんどは逆に猛烈な不機嫌になりやすくなります。
 破壊的な妄想や攻撃的な衝動を引き起こすのです。
 

代表的なSSRIの添付文書には、


「警告
海外で実施した7~18歳の大うつ病性障害患者を対象としたプラセボ対照試験において有効性が確認できなかったとの報告、また、自殺に関するリスクが増加するとの報告もある
不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されている。
家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。」


 などとあります。
 実際、少なくとも1999年の全日空ハイジャック事件、2001年大阪の池田小事件、1999年アメリカのコロンバイン高校銃乱射事件の実行者がこの系統の薬を飲んでいたことがわかっています
 その一部はアメリカでは訴訟となり2002年に販売が中止となりましたが、日本では小児に適応が拡大され使用が続いています。

 私自身、これまでこの系統の薬を飲んでいる人の激しい自傷行為、自殺未遂既遂を何度も診ました。
 特に小児にSSRIが使われるようになるまでは、小学生に同じような自傷行為や自殺未遂を診ることはありませんでした。
 2000年代SSRIは頻用され、日本で年間約100万人に投与されたと言われます。
 そして日本の自殺者は年間3万人を超え続けました
 SSRIが自殺リスクを全体で80%上げるという報告もあります。


 実際の薬効のみならず、山口連続殺人放火事件の犯人が
「俺は薬を飲んでいるのだから、10人や20人殺したって罪にならない」
などと言っていたように、精神医学的なシステムが他害のハードルを下げている側面もうかがわれます。
 そうすると、精神医学的な「診断して薬物を投与する」というシステムは、他害自害の抑止力どころか原因の一端となっている可能性さえ疑われるのです。


ポイント4  精神医学的な診断と薬物投与は、他害自害の抑止力とはならず、原因を助長していることが危惧される。


5. 川崎殺傷事件が5月28日に起きた理由


 では何が他害自害の抑止力となるのか?
 刑罰も人間関係も精神医学的な薬物投与も抑止力とならないとすると、絶望的に感じるかもしれません。
 ここまで、他害自害の被害を防ぐために必要なことは、


1. 他害自害する人を減らす
2. 他害自害したくなる感情にならないようにする


 とわかりました。


 そして精神医学のところで、そうした感情になる原因の一端が見えてきました。
 原因がわかれば、解決の糸口も見つかるかもしれません。

 原因の一端とは、セロトニンの上昇と降下です。

 セロトニンは、薬を使わなくても誰もが分泌しているホルモン(神経伝達物質)です。
 日光などの強い光を浴びることで、脳や腸など全身の様々な臓器や神経でアミノ酸から合成されて分泌されます。
 セロトニンが高まる時、人は浮かれて機嫌がよくなります。
 晴れた朝に気分も晴れやかになることは、多くの人が感じるでしょう。曇りの日、雨の日と天気で気分が変わることにはセロトニンが大きく関係しています。
 逆に上がったセロトニンが下がる時、人は不機嫌になります。
 わかりやすいのは、幼児がお出かけなどで興奮した後、寝しなにグズって何を言っても聞かなくなる状態です。
 大人もパーティなどから帰った後、むやみに沈んだ気分になって「なんであんなこと言っちゃったんだろう」とか、自分の言動がやたらと後悔されたりすることがあります
 そんな時は、セロトニンの下りぎわと考えられます。上昇したセロトニンの下りぎわで気分が落ちたからクヨクヨしているので、言動への後悔は後付けです。
 その証拠に、その夜ちゃんと眠って翌朝晴れていれば、もう後悔は忘れていたりします。

 それが他害自害となんの関係があるのでしょうか?

 他害自害の動機となった(例えば従姉妹への恨みや嫉妬などの)動機も後付けで、セロトニンの上下動が不機嫌のきっかけとして先にあった可能性があるのです
 つまり慢性的に不機嫌だったから、恨んだり妬んだり殺したくなったりしたということです。


 登戸の事件が起こる前、5月23日~27日川崎(横浜)は晴れて日照は連続して10時間を超えました。
 そして事件発生の28日は曇りで日照時間は0.2時間に下がったのです。
 事件はその曇った朝に起きました
 実行者の脳内では、前日までセロトニンが高い状態が続き、5月28日に低下して実行に至った可能性があります。
 数日前に現場を「下見」していた、という報道がありますが、それは下見ではなくその時も実行しに出かけたけれども、その日は晴れていたのでセロトニンが上昇し、気分が改善して犯行を思いとどまることができた...のかもしれません。(確かめることはできませんが)


 晴れの日と曇りの日や雨の日、明るいところと暗いところ、私たちは誰でも気分が変わることを感じています


 同じ5月28日には同じ関東の埼玉でも刃物を持った男が警官に向かっていって射殺される事件が起きました。登戸の事件の影響とも言われますが、セロトニン分泌などが似た状況になっていたことも考えられます。


 過去の他害自害も見てみましょう。

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2018年9月19日午前4時の仙台交番襲撃事件
前々日は晴れ、前日は曇り。
2018年6月26日午後2時の富山の交番襲撃事件
前日前々日は30℃まで上がる晴れ。当日は曇り。
2018年6月9日21時の東海道新幹線車内事件
前日、前々日は晴れ。当日は曇り。
2016年7月26日午前2時の相模原障害者施設事件
前々日は晴れ。前日は曇り。
2015年6月30日午前11時の東海道新幹線焼身事件
前日、前々日は晴れ。当日は曇り。

少し古い事件では

2008年6月8日昼12時の秋葉原事件
前々日は晴れ。前日は曇り。当日は曇り。
2001年6月8日午前10時の大阪池田小事件
前日は晴れのち曇り。当日朝は曇り。
(いずれもgoo天気 過去の天気より)

 いずれも晴れの後の曇りの日、またはその夜、セロトニンが上昇した後に下りぎわになりやすい時に起こっています
追記:その後、福岡の他害自害事件、大阪の拳銃強奪事件も晴れの後の曇りに発生

 もちろん、晴れの後の曇りなんて他にもたくさんあって、ほとんどは事件なんて起きません。また、今年5月28日にもほとんどの人は事件なんて起こしませんでした。
 ここではあくまでも、セロトニンの上下動が他害自害を起こす最終的引き金になる可能性があることを知ってください。


ポイント5 セロトニンが上がって下りぎわ、晴れに続く曇りの日に他害自害が起きやすい


6. ビタミンD-セロトニン バランス


 セロトニンだけで他害自害を説明することはできません。
 こうした事件を並べると5月から6月、春から初夏に多いことに気づきます。
 これは近年に限らず、1938年の津山事件は5月21日です。


 セロトニンは気分のアクセルに例えられます。
 セロトニンが高まると、人は積極的になり行動しやすくなるのです。
 うつの人はうつが軽くなったように感じ、うつでない人も多くの人はウキウキして気分が良くなります。
 ところが、強い怒りや破壊的な妄想を抱いている場合、積極的になることは凶行を実行することにつながる可能性があります。
 一方、気分のブレーキやハンドルといった作用を持つ物質もあります。
 ビタミンD
です。
 ビタミンDはビタミンと名がついていますが、体内で作られるホルモンの一種でもあります。
 ビタミンDは気分を安定させる作用があります。ビタミンDを増やすことで、うつ病や統合失調症、認知症の多くを予防・改善できること、逆にビタミンDが不足するとそれらの精神疾患が増えることがわかっています。

 
 ビタミンDは日光を浴びることで、皮膚でつくられます。ただし、以下の点でセロトニンとは異なります。


 セロトニンは可視光線、ビタミンDはβ紫外線

 セロトニンは目に見える光、可視光線が目に入ることで分泌されます。ガラス越しの日光でもセロトニンはつくられます。
 ビタミンDはβ紫外線(UVB)を皮膚に浴びることでつくられます。ガラス越しや衣服越し、日焼け止めクリームを塗った皮膚ではビタミンDはつくれません


 セロトニンは日内変動、ビタミンDは年間変動

 セロトニンはその時の分泌量が気分に影響し、朝昼夜という日内リズムが重要です。
 ビタミンDは貯蓄量が気分に影響し、夏につくり貯めて冬を越す年内リズムが重要です。

 クマなどの動物は、秋になって日光が減り、体内のビタミンDが減ってくると、たくさん食べて脂肪を蓄え、冬眠に入ります。
 人間もビタミンDが減ってくると、食欲のコントロールが難しくなり、太りやすくなります。さらに、運動したり出歩いたりする気がしなくなります。


 ビタミンDは全身の細胞にとって正常に機能するために不可欠な物質であり、書ききれないほどの役割があります。気分の安定について最も重要なことは、ストレスに耐えるホルモンであるコルチゾールや命の危機を回避するアドレナリン・ノルアドレナリンなどのホルモンを作るために欠かせないことです。
 コルチゾールが適切に分泌されるからこそ、私たちはストレスに耐えることができます。
 困難に直面しても生き抜こう!死にたくない!という感情が湧いてくるのは、アドレナリンやノルアドレナリンがあるからこそです。
 ビタミンDが不足すると、コルチゾール・アドレナリン・ノルアドレナリンなどがつくれず、ストレスにとても弱く、生きる欲求は弱まってしまいます
 さらに、コルチゾール・アドレナリンらは血糖をあげるためにも重要なホルモンです。
 血糖が下がると不機嫌になりやすいことは、多くの人が空腹時に経験しているでしょう。
 低血糖がさらにひどくなると、幻覚や妄想、異常行動があらわれ、ついには意識を失ってしまいます
 妄想と幻聴をおこす代表的な疾患に統合失調症があります。
 統合失調症は1つの病気というより、そうした症状をきたす病態の総称(症候群)です。原因は様々ですが、いずれも低血糖・糖代謝異常と深い関連があります。
 中でもビタミンDは、胎児期に母親のビタミンDが不足していると、将来、統合失調症を発症するリスクが高まり、乳児期のビタミンD補給でそのリスクを下げられる(Int Rev Neurobiol. 2004)など、長期的に強い関連があることがわかっています。


 人が不機嫌になる理由は、赤ちゃんから大人まで実はかなり共通しています。
 お腹が空いた時、眠い時、便が出せない時です。
 ビタミンD欠乏はホルモン不足から低血糖を起こし、覚醒を不十分にします。覚醒が不十分だと、睡眠も障害されます。
 一方、セロトニンの乱高下も体内時計・日内リズムを乱し睡眠を障害します。
 眠い時の不機嫌は、いわゆる乳幼児の夜泣き・グズリです。何を言っても聞きません。
 全てが気に入らないかのように、少しのことで不寛容に当たり散らします。

 これは子どもに限らず、大人では海外旅行時の時差ボケに当たります。
 当直明けの医師やナースなどには、特によく見られる現象です。


 もう1つ、便秘も、不機嫌の原因としては珍しくありません。
 救急外来を受診する乳幼児の原因不明の不機嫌・頭痛などの大人の原因不明の不定愁訴が、排便によってケロッと治ってしまうことはよくあります
 本人には便秘の自覚がなく、子どもはただただイヤイヤとぐずり、大人は不機嫌に
「昨日でました!」
 などと抵抗するのですが、どうしても必要ならレントゲン撮影して便を貯め込んでいる証拠写真を見せて浣腸します。便秘による症状なら、便を出さない限り改善しないからです。
 日中に他院で痛み止めなど出されて良くならないと言って夜中に救急で来る人もよくいます。
 ドッサリ出すとさっきまでの不機嫌はどこへやら、スッキリした顔で拍子抜けしたように帰っていきます。
 ビタミンD欠乏は腸の動きも悪くし、消化吸収を妨げ慢性の下痢や便秘の原因にもなります。
 こうした便秘による不機嫌も、ビタミンDが欠乏しやすく脱水にもなりやすい暑くなり始め、初夏に多いのです。
 子どもの夜泣きグズリと他害自害を同列に考えるのは抵抗があるかもしれませんが、不機嫌の原因は脳内・体内では同じメカニズムで説明できるのです。


 太古から多くの人が農業など外仕事に従事していたほんの50年ほど前まで、人は日中は外で生活する時間が長く、特に春は戸外で忙しく働いて日光を浴びる時期でした。
 すると、セロトニンが上がると同時にビタミンDも急速に貯蓄されます。
 現代社会では、人はあまり屋外で日光を浴びません。するとガラス越しの日光でセロトニンは上がるものの、ビタミンDはつくられず枯渇したままになります。
 こうした人の脳内は極端に言えばハンドルやブレーキが効かず、アクセルだけよく効く車のようなものです。
 ビタミンD-セロトニンバランスと気分への影響を、表にしてみましょう。

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 ビタミンDが少ないと、気分は不安定でコントロールが難しくなります。

 そしてビタミンDが少ない状態でセロトニンが高まった状態からの下りぎわに、SSRI使用後と同様、猛烈な不機嫌と破壊的な衝動・妄想がおき、他害自害につながりやすいと考えられます。


 東京以北では、冬はβ紫外線が弱すぎて戸外へ出てもビタミンDが十分につくれません。
 特に日本海側では、冬は雪が多くあまり日光が出ません。
 ビタミンDが枯渇しやすい状況です。
 そして春になり数日は日光が戻っても、また天気が悪くなって冬に逆戻りしたように暗くなる。自殺者が搬送されてくるのはそんな日に多いのです。
 2017年夏は全国的に日照が少なく、特に関東以北では広く平年の50%以下になりました。東北では25%でした。
 私は2017年のうちから2018年春は自殺が増えそうだと危惧していました。
 実際に2018年春先に近隣で他害自害事件が起こったので、自治体の議員や有力者、地方のラジオ番組などに警鐘を促しました。(無視されましたが)
 ところがそれから2018年春~夏は自殺以上に、交番襲撃事件、新幹線車内事件など凶悪事件や暴走事故が多発しました。
 これは2018年春がとても日照が多かったため、低ビタミンD高セロトニンになる人が多かったことで説明がつきます。
 特に2017年に日照が下がった地域在住の人が起こした事件が多かったことも特徴的でした。
 そして今年2019年春も非常に日照が多く、セロトニンが高まりやすい(下がりぎわができやすい)状況となりました。
 しかし2018年夏は日照が多かったではないか?と思われるかもしれませんが、ビタミンDは日光を皮膚に浴びなくてはつくられません。
 いくら外で日が出ていても、日中屋内にいる人や日焼け止めを塗っている人では夏になっても回復せずビタミンD欠乏が続くことになります。
 いわゆる「ひきこもり」は最もビタミンDが不足する状態と言えるでしょう。
 クマの冬眠を思えば、そもそもビタミンDが低いからこそひきこもりたくなるとも考えられます。
 ひきこもりの人や精神障害を抱える人の多くは、真っ白な皮膚をしています。これは身体がビタミンDを欲して日光を受け入れようとしている状態といえます。


ポイント6 他害自害を起こす破壊的な感情はビタミンD-セロトニン バランスの乱れ、低ビタミンD高セロトニンからのセロトニンの低下によってもたらされる。


7. 大切な人を守るためにできること


 さて、ここまで読まれた方はもうおわかりでしょう。
 他害自害から自分や家族や子どもを守るために、何が必要か?
 他害自害の被害者を減らすためには、他害自害する人を減らさなくてはならない。
 他害自害する人を減らすためには、他害自害したくなる感情にならないようにしなくてはならない。
 他害自害したくなる感情にならないようにするために必要なのは、そう、ビタミンDです。


 ビタミンDが体内に十分に貯蓄されていれば、セロトニンが高まろうと低まろうと他害自害を起こしたくなるような破壊衝動・被害妄想にはなりにくいと考えられます。
 脳はビタミンDというブレーキとハンドルを使って、何かあっても少なくとも安全に路肩停止できるのです。
 ビタミンDが十分に貯蓄されている時、気分は安定します。感情的になりにくく寛容になります
 コルチゾールが必要に応じてつくられ、ストレスに耐えることができます
 アドレナリンやノルアドレナリンが生きる意欲、死んでたまるかという生命力を当然のことと感じさせます
 誰に「一人で死ね」とか「死ぬな」とか言われようと言われなかろうと、そもそも死にたくならない。『当然生きたい』のです。

 それは難しいことではなく、ある程度は外出して日光を浴びているほとんどの人は、ほとんどの時そうでしょう。
 生きる意欲がある人は、少なくとも自害はしません。社会で生きていくためには人間関係を築く必要もあり、他害もしにくくなります。そういう人にはもちろん刑罰も抑止力となります。
 ビタミンDが十分にある人は、低血糖になりにくく、日中は活動的になり、夜はよく眠れます。ビタミンDは腸にも作用し、消化吸収を助け、便通も良くなります。
 つまり、不機嫌になりにくいのです。
 ビタミンDによって脳機能・身体機能も向上します。
 人間関係を築く能力や、仕事の能力も向上させやすくなります。

 機嫌よく、怒りにくく、小さなことにこだわらず、寛容になれます。
 人間関係を築くことによってひきこもりの人を助けることができるのは、ビタミンDの補充が前提と言ってもいいでしょう。

ビタミンDの増やし方


 いいことずくめのようなビタミンDですが、ではどのように増やせば良いでしょうか?
 ビタミンDは戸外で日光を皮膚に浴びればコレステロールを原料に知らないうちに作られます
 しかし、今すでにビタミンDが不足している人の多くは日光を避ける生活を習慣にしており、そのパターンを変えることに抵抗します。
 クマの例のように、ビタミンDが低いこと自体が感情的に穴にこもりたくさせるのです。
 そういう人を無理に外に連れ出して日光を浴びさせたりすることは、冬眠している熊を叩き起こすようなものでとても危険です。
 ビタミンDが貯まるより先にセロトニンが上昇して、低ビタミンD高セロトニンの暴走モードになってしまう恐れがあります。
 こうした人は、まずビタミンDを腸から補うことが必要です。
 ビタミンDは、体内でつくられるホルモンであると同時に、口から食べて腸で吸収できる栄養素でもあるのです。
 食べ物では、ビタミンDは魚とキノコ類に多く含まれています。
ただし、日光でつくれる量に比べれば食品のビタミンDはとても少なく、すでに不足している人のビタミンDを食べ物だけで補うことは現実的ではありません。
 幸い、今ではビタミンD含有量の多いサプリメントが安価で手に入ります。
 例えば、インターネット通販サイトiherbでNOW社のビタミンD 1粒5000IU(IU:国際単位)の120粒入りは、現在701円です。(夏は日光を浴びれば必ずしもサプリは要らないので1年分と考えてもいいでしょう。)


 これをとりあえず1日1粒摂ることは多くの人にとって安全で有益な選択です。
 数日~数週間で、気分の安定をはじめ心身様々な面で調子の改善を実感するでしょう。
 ビタミンDに副作用はないのでしょうか?
 この程度の量では、基本的にありません。
 ビタミンD5000IUというのは、地域にもよりますが、夏の晴れた日中に半袖短パンで外に出れば1時間ほどで作られてしまう量にすぎません。(厚労省基準などについては、あとで説明します)
 またビタミンDで重要なのは1日の摂取量ではなく貯蓄量なので、不足している人ははじめは多く摂ってかまいません。長期的に摂りすぎて、万が一過剰になって動悸や吐き気などの症状が出たとしても、摂取を止めれば治ります。

 より大量にサプリメントで摂った場合は、他のビタミンとの兼ね合いで問題が起こることがあります。
 最も重要なのはビタミンKです。ビタミンDとビタミンKはカルシウム代謝で拮抗関係にあり、ビタミンD過剰とされる症状のほとんどが、実は相対的ビタミンK不足です。(ビタミンD過剰症の自体がそもそもほとんどありませんが)
ビタミンKの最高の供給源は納豆そしてワカメなどの海藻類です。
 ビタミンDをサプリメントで大量に口に入れても、腸から吸収される量にはとても大きな個人差があります。
 まず年齢が高くなるほどビタミンDの吸収率は下がる傾向があります。皮膚で日光からビタミンDをつくる効率も年齢とともに低下する傾向があります。
 そしてビタミンDの吸収には腸内細菌の助けが必要です。大雑把に言うと、乳酸菌です。
 ある1種の菌が腸内にいるかどうかでビタミンDの吸収率に25%の差がでるという報告もあります。便秘や腸内環境の悪化とビタミンD欠乏は悪循環でお互いを助長します。
 乳酸菌の供給源として最もおすすめできるのは味噌です。


 実は、ひきこもりの人にビタミンDのサプリメントを飲ませることはあまり成功しません。
 すでにビタミンD不足で慢性不機嫌になっている人は被害妄想を抱きやすく、疑り深くなっているからです。
 これまでの自分のパターンにないものは警戒して受け入れようとしません。
 アルコール依存症の夫に悩む女性が夫にビタミンDのサプリメントをわたしたところ、
「こんな毒で俺を殺す気だな!」
 とサプリメントを放り投げられてしまったそうです。


 もし家族にビタミンDを補充させたいなら、無理に外に連れ出す必要もサプリメントを飲むように説得する必要も全くありません
 食事にサプリメントを混ぜれば良いだけです。
 もちろん、相手だけでなく自分も食べる食事にです。
 ご飯に入れて炊くビタミン剤とかあるでしょう。同じです。おすすめは味噌汁にビタミンDサプリメントを入れることです。
 味噌の乳酸菌と一緒に摂ることで吸収率アップが期待できます。ワカメなどのビタミンKも一緒に摂りやすくなります。
 ビタミンDのサプリメントはたいていオリーブオイルなど油でコーティングされていて、温かい味噌汁に入れればすぐに溶けます。


 疑われないように、自分も同じ味噌汁を飲みましょう。
 ひきこもりや精神障害の家族を抱えていなくても、現代人のほとんどはビタミンDが不足しています。
 ビタミンDを補給することで認知症、うつ病などの精神疾患のみならず、がん・花粉症などのアレルギー・自己免疫疾患・インフルエンザなどの感染症を予防したり、進行を遅らせたり改善しやすくなる効果が期待できます。
 福岡でひきこもりの息子が母親と口論の末に他害自害した事件や、ひきこもりの息子を殺害した事件は、母親や父親もビタミンD不足による感情の不安定を抱えていたのではないかと疑われます。

 妊娠中にビタミンD不足の母親の子に統合失調症が多いように、ビタミンD不足は日光を浴びる習慣や食習慣なども通じて家族内で共有されていることが多々あります。
 以上のようにしてビタミンDを補充し、体内のビタミンD貯蓄を増やすこと、それが気分を安定させ他害自害したくなる感情を避ける方法、つまり他害自害を減らし自分や家族や子どもを守る方法です。
 日本人は、韓国人・イギリス人とともに、世界主要国でも最もビタミンD欠乏が多いワーストスリーに入ると言われます。
 自分は大丈夫と思わずに、全ての人が意識的にビタミンDを補給することです。
 お気づきのように、これは他害自害をする人、加害者になるのを防ぐ方法です。はじめに、他害自害の被害者を減らすには、加害者を減らす必要があるとわかった通り、そうして自分や周りの人が加害者にならないようにすることが普及すれば、被害者も減らせるということです。
 ぜひビタミンDを日光やサプリメントで補充を実行してみよう、と思われた方は、ここまでで結構です。さっそく実行に移ってください。
 理屈はわかったけど、実際やる気はしない、という方はあとがきをお読みください。


ポイント7 他害自害を防ぐためには、ビタミンDの補給する。多くの人がビタミンDを補給することで、他害自害する人が減り、ひいては被害者を減らすことができる。


あとがき

 なぜ日本人のビタミンDは不足するようになったのか?


 さて、ここまで来て、ビタミンD欠乏が他害自害につながりうるメカニズムと、他害自害を防ぐために行うべき具体的な行動がわかりました。
 それでもおそらく多くの人は実際には何の行動も起こさないかもしれません。日光を浴びようとすることも、サプリメントでビタミンDを補給することもないでしょう
 気を悪くされないでほしいのですが、それは「一人で死ね」論争で触れたように、人間は感情の生き物であり感情で動くからです。
 そのような人間にとって、合理的に行動を変えることはなかなか難しいのです。
 これは記憶力や学歴など、世間的ないわゆる頭の良し悪しには関係ありません。
 私は色白でいつも不機嫌で慢性下痢の同僚医師にビタミンDのサプリメントをプレゼントしたところ、
「僕は日光浴びないから効かないでしょ」
 と突き返されてしまったことがあります。(日光を浴びないから必要なのに…)
 高学歴な人々は、若い頃から室内で勉強している時間が長かったり、夜勤などで体内時計が乱れたりして、ビタミンD不足や睡眠障害を抱えていることが珍しくありません。
 エリートが起こす様々な不祥事はその影響が疑われます。
 人の感情はその人の固定観念、いわゆる「普通」のパターンに従うことを好みます。
 パターンを変えるには、脳内に新たな神経のつながり、シナプスを作る必要があります。ビタミンDが足りないと、新しいシナプスを作ることが難しくなり思考パターンが変えられなくなります。簡単に言えば、頭が固くなるのです。
 その人の「普通」は主に、それまでの「習慣」・「周囲」の人への同調・「権威」への従属によって構成されます。
 どんなに合理的でも有益でも、自分の「普通」に反することを人はなかなかしようしないものなのです。
 逆に、「習慣」「周囲」「権威」によって「普通」となったことは、どんなに不合理で有害でも、人は無批判に繰り返し、やめることは難しいことも、個人的な依存症から国家的な事業まで枚挙に暇がありません。

 このうち、「習慣」は、経験によって作られますから、とにかく一度ビタミンDを補給する機会があり、それがいいと感じられれば、すぐに変わります。
 ビタミンDを補給してみれば、数週間のうちに、気分が落ち着き、頭脳的にも身体的にも調子が良くなることを実感するでしょう。


 「周囲」は、明らかに変わりつつあります。
 ビタミンD補給は世界的に急速に広まりつつあり、常識となりつつあります。
 冬季うつ病が多かった北欧諸国ではサプリメントが常識

 インドネシアの女性医師が集中力低下、イライラで受診したら検査でビタミンD欠乏が見つかり、サプリメントを飲んでいるという話も聞きました。(日本より進んでますね)赤道付近でも、ムスリム女性にはビタミンD欠乏が多いのです。
 日本では美容業界でいち早く取り入れられ、有名モデルや女優さんがサプリメントを摂っていることが知られています。


 一方で、認めようとしないのは「権威」です。
 医師の多くはビタミンDは脂溶性ビタミンであり過剰摂取は危険である、と学生時代に習った知識を全くアップデートしていません

 厚労省のビタミンDの摂取基準は0才児で1日400IU、1才~70才まで600IUに過ぎません。(追記:本文章執筆当時。2020年改訂)

日本人の食事摂取基準(2020年版)(p178~)

これはもともと子どもの骨の発達障害である「くる病」を予防するために作られた基準で、全身の細胞が必要としていることがわかった今、全く足りないことは明らかです。

(追記:日本人の食事摂取基準(2020年版)を読むと、そもそもビタミンD不足の基準は血中濃度30ng/ml未満であるのにもかかわらず、この目安は20ng/mlを維持するための必要量を求めていることがわかる。

 また、p185「1,250 μg/日にて高カルシウム血症を来した症例報告 があり 78),79)」とあるが、1,250μg=50,000IU(五万である)であり、その報告をもって4,000IU(四千である)を耐用上限とする根拠にはならない。桁を間違えているのか?

 また引用された症例報告は活性型ビタミンD [1,25-dihydroxyvitamin D (1,25-OH2 D) ]とカルシウムサプリメントの併用を勧めている。ビタミンDは本来、各細胞が必要に応じて活性化するものであり、活性型ビタミンDの投与は灯油を求める人に火のついた灯油を差し出すようなものである。カルシウムサプリメントと併用すれば当然、高カルシウム血症をきたす。不活型のビタミンD3と活性型ビタミンDの区別すらつかない人が栄養摂取基準を策定しているのか、わざと誤解したフリをして基準を下げているのか、いずれにしても国民に与える損害は甚大と言わざるを得ない。ビタミンDはカルシウムとではなくマグネシウムと一緒に摂ることで活性化されるのでマグネシウムを多く含む味噌汁などと一緒に摂るべきである。)

 現在では、ビタミンDは1日4000IU(100μg)以上必要と言われており、それにより、精神疾患、がん、感染症、自己免疫疾患など1990年代以降増えている疾患を発症、死亡ともに減らすことが期待できます。
 それは素晴らしいことだと思われますが、一見、大きな不利益を被りそうな人々、業界があります。


 医療業界・製薬業界です。


 人が健康になり、病気が減れば、売り上げが下がることが懸念されるからです。
 ビタミンDの重要性が医療機関や厚労省によって全く周知されないのは、この売り上げ低下を恐れてのことかもしれません。
 さらに言えば、こんなにも多くの人がビタミンD不足になったのは、医学的なデマ(と言って悪ければ「欺瞞」、よく言って「間違い」)のためとも考えられます。
 ビタミンDは、皮膚に紫外線を浴びることで、コレステロールから作られます。
 紫外線とコレステロール、どちらも、健康を脅かす悪者の代表、と思っている人が多いのではないでしょうか?
 日本で紫外線が悪者にされ出したのは1990年代、美白ブームが始まってからです。
 それまでは、「子どもは風の子」と言われ、外で遊ぶことは健康に良いと知られていました。
 アニメ『ちびまる子ちゃん』を見ても、藤木くんを筆頭に、精神的に不安定な丸尾くん、野口さん、みぎわさんなどは、色白なインドア派、いつも明るく元気な、はまじ、大野くん、杉山くんなどは日焼けしたアウトドア派として描かれます。
 芸能人も、男性は高倉健さん、岩城滉一さんから、反町隆史さん、木村拓哉さんと、1990年代初頭までは、日焼けしているのがかっこいいと思われていました。
 女性も松田聖子さんから中山美穂さん、浅野ゆう子さんまで、今の芸能人よりずっと日焼けしていました。
 1990年台半ばから、日焼け止めクリームが発売され、化粧品の中にも入れられるようになりました。するとメディアで美白ブームがもてはやされるようになり、その普及とともに、女性を中心にうつ病などの精神疾患や乳がん、子どもの発達障害、くる病、不妊症など、ビタミンD不足が原因となる病気が増えたのです。
 紫外線を浴びると皮膚癌になるから紫外線を避けよ、これは赤道付近に移住した白人ならいざ知らず、日本人にとってはデマと言っても過言ではありません。
 もともと、皮膚癌は死亡率の低い癌で、亡くなるのは高齢者に限られていました。
 さらに皮膚癌のうちで最も悪性なメラノーマ(ホクロがん)は足の裏など日光の当たりにくいところに多いのです。


 コレステロールは動脈硬化の原因であるから下げよ、もデマ(あるいは欺瞞、よく言って間違い)です。
 なぜならばコレステロールは全身の細胞膜の重要な材料であり、ビタミンDや、ストレスに対抗するコルチゾール、生きがいの源となる男性ホルモン、女性ホルモンの原料だからです。
 脳の約30%はコレステロールでできています。
 コレステロールは悪くないと言うと、「え?善玉もあるけど、悪玉コレステロールはやっぱり悪いんでしょ?」と思う人もいるかもしれません。
 違うのです。悪玉なんてないのです。善玉と言われるHDLも悪玉と言われるLDLも、どちらもそれぞれの役割を持つ重要な物質です。どちらかと言えば、悪玉と言われるLDLこそ、ビタミンDやホルモンの元になる重要な物質なのです。
 日本の自殺者数は、1997年(平成9年)の24,391人から、1998年(平成10年)の32,863人まで8,472人(34%)急増し、2011年(H23年)まで3万人越えが続きました。

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 何があったのでしょうか?一般には1991~93年のバブル崩壊の影響との解釈が多いですが、1998年に急増した説明にはなりません。
 先に挙げたセロトニンを増やす薬物SSRIが日本に入ってきたのは1999年、自殺の急増はそれより1年早いのです。
 実は1997年( H9年)『高脂血症診療ガイドライン』が策定され、多くの日本人に世界一低い基準値でコレステロール低下薬が処方されるようになったのです。


「東京で電車に飛び込んでいる人の多くはコレステロール低下薬を飲んでいる」

 関係者の間ではそう言われました。


 そもそも、『高脂血症診療ガイドライン』の根拠となったコレステロール低下薬を飲むと、心筋梗塞を減らせる、とした論文は、実は、コレステロール低下薬を飲んだ人は心筋梗塞の死亡率を下げる以上に自殺、事故死、癌などの死亡率を上げ、総死亡率はむしろ高い結果になったことを隠蔽していました。


 それは2000年代前半に製薬会社の不祥事から明らかにされました。


 2010年(H22年)「コレステロール値が高いグループの方が、がんや脳卒中の死亡率が低く、総死亡率も低い。コレステロール低下薬は効果がないばかりか危険であり使用をやめるべき」とする日本脂質栄養学会の『長寿のためのコレステロールガイドライン2010年版』が発表されると、自殺者数は減少に転じました。


 そして2012年(平成24年)、一般誌『AERA』がコレステロール低下薬は無効であるという記事を掲載し、一般にも知られるようになった年に、1997年以来初めて15年ぶりに日本の自殺者数は3万人を下回ったのです。

 もちろん、景気、健康ブームその他の影響もあるでしょう。しかし、コレステロール低下薬は関係ないと言えるでしょうか?


 ところが、それから何年たっても、コレステロール値が高いと検診で引っかけられ、コレステロール低下薬を飲ませるシステムは多くの自治体、医療機関で変わらず続けられています。


 なぜ、コレステロールは悪者にされたのか?紫外線は悪者にされたのか?
 そういうデマを流すことで得をする人がいるから、と考えるのが自然でしょう。
 紫外線とコレステロールを悪者にして、人々が紫外線を避け、コレステロール低下薬を飲めば、ビタミンDなどのホルモンは減り、細胞膜は弱って、様々な病気が増えます。
 90年代以降増えた、癌、うつ病、認知症、発達障害、糖尿病、自己免疫疾患、感染症、これらはいずれもビタミンD低下やコレステロール低下とともに増えることが明らかになっています。
 茨城県で検診を受診した人を17年間追跡した調査などで、総コレステロールやLDLコレステロールが最も高い人々(総コレステロール260以上)ほど、総死亡、全がん死亡、脳卒中死亡、いずれも危険度が低く、コレステロールが高い人に比べて、総コレステロール180未満の人では、死亡危険度が男性で20%、女性では30%も高いことが明らかになっています。


 日本では、総コレステロール180未満になっても薬を飲み続けている人が今もたくさんいます。そうした人のかなりが癌などを発病し、それからも薬を出されるがままに飲み続けています。
 病気が増えると、医療機関や製薬会社の売上が上がります。
 コレステロール低下薬だけで、年間3000億円の売上と言われます。
 さらにそれによって増える病気の医療費による売上は、数兆円以上に登るでしょう。
 世界では多くの国ですでにコレステロール低下薬の処方をやめています。心筋梗塞のリスクの低い女性にコレステロール低下薬を処方するのは日本だけ、と言われています。
 女性では循環器疾患に限ってさえも、総コレステロール・LDLコレステロールが低い人では死亡危険度が有意に高いのです。
 コレステロールの大切な役割を考えれば、それも当然なのです。


 病気を増やして売上を上げるなんて、そんなひどいことするわけがない、信じたくない、と言う気持ちはわかりますが、コレステロール低下薬の使用をやめない理由が他にあるでしょうか?
 許せない、と怒りの感情が湧くのが当然かと思います。しかし、他害自害に対するのと同様、まずは自分がビタミンDを補給して冷静にならなくてはなりません。
 そうしたことを行なった人々、医師や、厚労省の官僚も、それぞれの「普通」の中にいただけかもしれないのです。
 医師のところには製薬会社の営業マンが日参します。学会も医学誌もスポンサーは製薬会社。医師たちは学会のお昼はランチョンセミナーと銘打ったCMを見ながら弁当を食べます。医学部卒業後、医師に入る情報の多くが製薬会社を介したものなのです。
 日々の診療に忙しい医師は、公式なガイドラインは勉強しても、自分で文献を当たり考える時間は多くありません。
 また公立病院は赤字だと叩かれ、ベッド利用率を上げないと潰すと脅されます。医療機関が病気が増え、医療費が増えないと評価されないのは、軍隊なら戦争をしないと評価されないようなものです。
 独立採算となった大学の研究室は、製薬会社のスポンサーを受けなくては研究が続けれられません。
 官僚も様々な製薬会社からプレゼンの名目で接待を受け、再就職先も考えなくてはなりません。
 また薬品は、重要な貿易品目でもあります。
 クルマを輸出する代わりに、薬を輸入するような交渉もあったかもしれません。
 (アメリカで使用中止となった薬が日本で適応を拡大さえされて使われ続ける構造は、薬害エイズの非加熱製剤と同様です。)
 もし、あなたがその立場なら、その「普通」に異を唱えることができるでしょうか?
 たばこメーカー、酒造メーカー、お菓子メーカーに勤める人も、それぞれ、自社の製品が人の健康に良いとは思っていないでしょう。それでも、そこの社員が悪人なわけではもちろんありません。
 人は皆、自分の「普通」の中で、自分のために家族のためにお金を稼いで生きていて、それを否定するのは困難なのです。
 医師の中にも、コレステロール低下薬の危険性を早くから訴えている人はいますし、製薬会社や厚労省にもいるかもしれません。
 さらに、医師や官僚は自分自身がビタミンD不足・体内時計の乱れなどにも陥りやすいので、実は冷静で合理的な思考によってパターンを変えることは難しい人が多いのかもしれません。
 それぞれの人には、それぞれの人の事情があるでしょう。
 ただ明らかなのは、そのためにあなたやあなたの大切な人の命や人生が犠牲になることは絶対にないということです。

 コレステロール低下薬をやめた方がいい、という説明をすると、処方した先生に気兼ねしてやめられない、という人は珍しくありません。
 飲まないけど、もらっておいて捨てる、という人もいます。自分と自治体のお金を捨てているのと同じですが、そういう人たちを責めても、その感情を変えることはできません。
 私たちにできることは、できる人から少しずつでもビタミンDの重要性を知り、自分が補充することです。実行する人が増え、元気に生活している姿を見聞きすれば、「周囲」の人の「普通」も変わっていきます。
 「権威」が変わるのはきっと一番最後です。
 コレステロール低下薬をやめ、日光を適度に浴びてビタミンDを補充することが「普通」になれば、人々の心と身体の健康ははるかに向上し、無駄な医療費は減るでしょう。
 それはお金が減るということではなく、他の有益なことに使えるようになるということです。そして結果として、他害自害のような悲惨な事件も減り、安心して暮らせるようになるでしょう。
 それは医師や医療機関・製薬会社・官僚にとっても、決して不利益ではないはずです。一旦は売上が下がるように見えても、人々の健康とともに、経済全体も活性化するからです。
 経済活動とは、人間の生命活動の反映です。
 日本の高度成長を支えたのは、戦後の焼け野原で、母親の胎内から子ども時代に日光をたくさん浴びた人々でした。
 1990年代からの日本の経済低迷は「平成の失われた20年(30年)」と言われますが、それはまさに紫外線とコレステロールが悪者にされた、ビタミンDが失われた時代に重なるのです。
 経済は人々の健康が基礎であることは言うまでもありません。
 人口が減少し、高騰する医療費で自治体や政府が破産するとも言われるこれからの時代、
 ・コレステロールが高いとひっかける検診を止める(むしろ低いことが危険)
 ・ビタミンD(血中カルシジオール)を検診項目に加る
 ・ビタミンDの摂取を奨励する
 で自治体・企業・政府いずれの経済も回復が期待できます。
 ビタミンDは、発見されたのが4番目なので「D」がつけられましたが、生命にとっては最も根源的な物質の一つです。
 魚がビタミンDを含むのは、その餌となった植物プランクトン・藻類がビタミンDを作るからです。
 生物はまだ単細胞生物の時代から、日光からエネルギーを得ていました。日光が多いか少ないかによって、活動量を変える必要があったのです。
 日光が多ければ活動を増やして旺盛に繁殖し、冬や氷河期で日光が少なくなれば、活動も数も減らしてきたのです。
 その調節のために作られた仕組みが、ビタミンDなのです。
 生き物が生きるエネルギーを得る最も基本に帰ること、それが他害自害から大切な自分・家族・子どもたちを守ることにつながるのです

(Facebook 2019年6月29日より)

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