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マスク公開議論〜無症状者のマスク着用は有益性が有害性に勝るか?

 12月17日、Twitterのスペース上での『マスク公開議論』に参加させていただきました。
 参加者は宝塚の宮澤大輔先生、京都大学の宮沢孝幸先生、四国の牧田寛先生、そして私です。

 全体で4時間50分のスペース(私と宮沢孝幸先生は4時間15分で退席)となりました。

(追記)宮澤大輔先生がZoomをアップしてくださいました。
パート1/4

パート2/4

パート3/4

パート4/4  YouTubeはバンされそうでニコニコ動画で。

 今回はこちらに議論の内容をまとめて解説したいと思います。(かなり長くなってしまったので、好きなところを見繕ってお読みください)

いしいのプレゼン①(17分30秒~)

 まず私が、今回の公開議論が行われた経緯を含めプレゼンさせていただきました。
 このプレゼンは宮澤大輔先生から事前にテーマと時間を指定されていたものです。私が退席後(4時間16分〜)『プレゼンはいしいさんが自分がやりたかったからやっただけ』と言われてますが、事実に反します。

  この公開議論開催をご連絡いただいたのは、当日の昼過ぎでした。

 私はそれから大至急でプレゼンを用意したのです。Zoomを併用するかもしれないとのことだったので、念のためスライドも作りました。

(☝️タイトルのかわいいイラストはTwitter上で知り合った科学とは。@kagakutoha さんが描いてくださいました。本当にありがとうございました。急遽、無理なお願いをして申し訳ありませんでした。)

以下、プレゼン原稿です。

 いしいじんぺいです。よろしくお願いします。私は臨床医として主に一般病院で救急医療を行なっています。

 私は無症状者が屋内でマスクをすることはウイルス対策として逆効果であり、有害であると考えています。

 その理由は、マスクの感染予防効果を実感できないことです。

 今回の公開討論のきっかけは、スウェーデンの外科医宮川絢子先生がツイートした、ノーベル賞授賞式で参加者が素顔で社交ダンスを踊っている写真に対し、

 宮澤大輔先生が「これではコロナ・インフル・RSのうなぎ上りは避けられない」とツイートしたことでした。

 宮川絢子先生は👇のように返され、

 私が宮川先生のtweetに共感してグラフを返信したのに対し、

宮澤大輔先生が公開討論を提案されたのでした。

 私は日本とスウェーデンの感染者数のグラフを示し、どちらがうなぎ上り?どれが科学?と問いました。視聴者の皆さんは、どちらの感染者がうなぎ上りしているように見えますか?

 資料2:欧米の多くの国では、今年の2月から3月にマスク義務を撤廃しました。資料2はその前後の感染者数の推移です。多くの国が感染の波の中でマスク義務を撤廃しているにもかかわらず、マスクをやめた後に感染者数の増加は起こらず、デンマークなど、逆に感染者が減少に転じた国が多いことがわかります。

 資料3はカタールの感染者数です。今サッカーW杯が行われているカタールでは、罰金と禁固刑のあるマスク義務化が行われてきましたが9月で撤廃されました。それ以降むしろ感染者は減少し、問題なく選手も観客も素顔でW杯が開催できていることはご存知の通りです。

 資料4は日本と世界平均の感染者数です。日本はもともと感染者数が少なく、ファクターXなどと騒がれ世界各国でマスクを義務化する根拠ともされました。しかし今年2月3月に欧米を中心に多くの国でマスク義務が撤廃され、それ以降感染者数は逆転マスクを続ける日本は感染者数世界一になりました。

 資料5では日本においてクラスターのほとんどは全員がマスクをしている施設で発生していることがわかります。私が勤務する病院でもずっとマスクをしているナースたちの間でクラスターが起こりました。一方で患者がマスクをつけず飛沫を浴びまくる歯科や飲食店からのクラスター発生は聞きません

 資料6:宮澤大輔先生は「科学」という言葉を多用されますが、科学とは事実観察から始まる方法論です。

資料7:誰かが言ってるから、何かに書いてあるから、と先に結論を決めてしまうのは科学ではなく宗教や権威主義です。その権威が聖書か学術誌かがちがうだけで、事実観察を認めない考え方を科学とは呼べないと私は考えます。

資料8:医学論文の話をしますと、これまでハイレベルエビデンスとされるランダム化比較試験でマスクの有効性が認められたことはほとんどありません。近年の研究でマスクが有効だったとするものも1つ2つあるにはありますが、研究のやり方に問題が指摘されています。

資料9:お互いに自説に合う論文だけを認め、自説に合わない論文を否定する議論はあまり意味がありません。 何度も実験しても結論が出ないということは、そのこと自体が、もし仮に効果があったとしても微々たるものでしかないことを意味しているのではないでしょうか?

資料10:宮澤大輔先生はこの3年間屋内外を問わずずっとN95マスクを着用されているとのことです。しかし武漢株に感染して死にそうになったとツイートされています。
 私はコロナ騒動が始まってからも一年以上素顔で診療し、昨年後半に投書があって、その時老いた母を入院させていたため病院を辞めるわけにはいかず、仕方なくマスクをさせられてしまいましたが、診療中以外はほぼ素顔で生活しています。しかしコロナ騒動が始まってから一度も感染や発症していません

資料11:誰も効果を実感できないのに効果があるという、これは裸の王様「バカには見えない服」と同じ論法です。  宮澤大輔先生は私を非科学だアホだとおっしゃいますけれど、それは「バカには見えない服」が「アホにはわからんマスク」におきかわっただけです。

いしいのプレゼンへの反論

 私としては他の参加者の皆様も持論をプレゼンなさるのだろうと思っていたのですが、なんと用意してきたのは私だけ。ここからは私のプレゼンへの批判・反論になりました。

反論1「マスク着用と感染者数が相関しているという根拠は何?」

 牧田先生からこのように質問されたのですが、相関関係と因果関係について誤解があるように思われました。相関関係というのは、数字だけの話です。数字がお互いに関係していれば相関関係が成り立ちます。疑似相関というのは因果関係がない相関関係のことですが、疑似相関も数字上は相関関係にあるのです。
マスク着用率の高い国の方が感染者数が多いこと、マスク義務化を撤廃したら感染者数が減少したことは資料1〜5で明らかです。
 それは正の相関(Aが増えたらBも増える、Aが減ったらBも減る)があるということです。
 反論するならマスク着用率が高い方が感染者が少ない、あるいはマスク着用率が下がったら感染者数が増えた(逆相関)という反証データが必要ですが、他の参加者からそうしたデータの提示は一切ありませんでした

反論2「因果関係を想定するな」

 宮澤大輔先生と牧田先生は反証となるデータを提示する代わりに「マスク着用率が低い方が感染者数が少ないからと言って、因果関係は言えない」と反論されました。
 私は因果関係を断定はしていません。データであくまで相関関係を提示したのです。マスクと感染者数に正の相関関係があったとしても、他の要因も影響します。もし因果関係があったとしても、もちろんマスクが感染者数の唯一の因子ではありません。(日本の感染者数が増えた理由はマスクより毒チンが強いでしょう)
 ただ相関関係は必ずしも因果関係を意味しませんが、疑わせはします
 クルマの運転に例えれば、どちらのペダルがアクセルかブレーキかわからない場合、踏んでスピードが上がり踏むのをやめたらスピードが下がったら、そのペダルはアクセルだと推定されます。逆に、踏んだらスピードが落ちたならそれはブレーキだと推定されます。
 もちろん、それまでのスピードの出方や登り坂下り坂、クルマの故障など他の要因で必ずしもアクセルを踏んだら加速しブレーキを踏んだら減速するとは限りませんが、概ね推定はできます
少なくとも、踏んだら加速したのにそれがブレーキだとは考えないでしょう
 同様に、一番マスクをしている日本が感染者数世界一になっているのに、マスクが感染にとってブレーキだと考えられるでしょうか?
 アクセルとブレーキの踏み間違いをしていませんか?
(感染者激増の主因は毒チンでしょうけれど、マスクでそれを防げなかったことも事実です)

 そもそも宮澤大輔先生もマスク着用と感染者数に因果関係があると想定していたからこそ「室内ノーマスクじゃあうなぎ上りは避けられないでしょう」と言われたはずです。自分が因果関係を想定しておいて、反対のデータを示されたら因果関係を想定するなというのはおかしいでしょう。

 1時間08分にも、牧田先生が「2つの事象を取り出して因果関係があると言い出すと、そのほとんどは疑似相関であることが多い。因果関係を持ち出す本人が疑似相関を疑って排除しなくてはならない」とおっしゃっています。
 しかし因果関係を示す必要があるのは「マスクに感染予防効果がある」と主張する側ではないでしょうか?
 コストとリスクと手間があることをさせようと言うのだから、効果があることを示さなくてはならないのはマスクさせる側です。
実社会で結果が出ていないことを、効果があるんだあるんだ、わからない奴はバカだ、効果がないと言うならそれを証明しろ、というのはおかしいでしょう。
 例えば学習塾で、通った子供たちの成績がみんな下がっていき、塾をやめた子たちの成績が上がった場合、塾を辞めるという人に塾側が「塾のせいで成績が下がるはずなんてない!塾と成績低下の因果関係を証明しろ!」と言って通用しますか?辞める生徒側がRCTして因果関係を証明する必要がありますか?

反論3:2020年始にインフルエンザが減ったのはマスクの効果?

宮澤大輔先生は「パンデミック以降インフルエンザが減ったのはマスクの効果である」と仮説されていたようです。

科学の最終プロセスは仮説の検証です。矛盾する事実はないか?論理の破綻はないか?と確認するのです。
 「そう決まってるから」「テレビ(専門家)が言ってるから」「聖書にそう書いてあるから」と一つの考えと異なることを認めないのは科学的ではありません
常に新しい事実や論理的説明によって結論が変わり得ることは科学の条件です。それを反証可能性と言います。
 また検証された科学的事実は誰がやっても何度やっても同じ条件下では同じ結果であることが確認されなくてはなりません。それを再現性と言います。

 宮澤大輔先生の仮説に対し、私は以下のようにお答えしました。

  宮川絢子先生も👇このようにお答えされました。

「パンデミック以降インフルエンザが減ったのはマスクの効果である」という宮澤大輔先生の仮説に対し2つの矛盾する事実が示されたのです。

①インフル減少は時系列でマスクや感染対策が始まるより前であった事実(論文)

②マスクをしないスウェーデンでもインフルエンザが減った事実。

スウェーデンでは2020年の第10週(3月2~8日)からインフルエンザが激減しました。

スウェーデンでインフルエンザ激減が始まった第10週はスウェーデンでコロナ流行の開始と一致していました。

 すると宮澤大輔先生は論文を要求されました。

 私がこのようにお答えすると

 お気に召さなかったようで

 しかし科学では観察した事実から仮説を立てることは誰にでも許されていることです。

 宮澤大輔先生はこうおっしゃいますが、

 科学的思索は専門化の特権ではありません。 

 そうしたらだいぶお怒りになったようで

 見た方からだいぶ心配されてたくさんご連絡いただいたのですが、私自身はこういうのは意外と嫌いではなく^^(👈プロレス好き)

(でも宮澤大輔先生一つだけ。「オラウーンタン」じゃなくて、オランウータンですから!)

 宮澤大輔先生はこれらの議論の後、2020年にインフルエンザが減ったのは暖冬のためであったと別の仮説を持ち出されました

インフルエンザ激減は厳冬であった地域も含め世界的に見られたこと、南半球の冬も含め2022年まで続いたことから、暖冬説も私は疑問です。

 ただ別な説を持ち出されたということは、宮澤大輔先生が2020年始のインフル激減がマスクの効果でなかったことをご理解くださったのだと思います。

反論4:日本人がすでに新コロの免疫を持っている根拠は?(33分)


 牧田先生と宮澤大輔先生は日本人の抗体保有率が低いから、まだ日本人の多くは新型コロナウイルスに暴露されておらず、だからまだ感染対策が必要だと言います。

 私は2019年末に多くのインフルエンザ陰性の風邪症状を訴える患者を診たことから、この時期に多くの日本人が新型コロナウイルスに暴露されたと主張しました。

 宮澤大輔先生は「そんな論文はない!」とおっしゃるのですが、あります

 この理化学研究所の論文には以下のようにあります。
「ペプチド反応性キラーT細胞株はSARS-CoV-2と同じグループのベータコロナウイルスに対し83~100%の人が反応することが分かりました」
「ARS-CoV-2交差反応性キラーT細胞が季節性コロナウイルスとSARS-CoV-2の両方に対して機能的に同等な結合力を持つ
 どういう意味かわかりますか?83~100%の日本人の細胞性免疫にとって新コロと旧コロは同じものだということです。
 足算ができる子は3+2=5でも3+4=7でもできるように、多少の変異があったにしても学習済みの問題だということです。

 2020年始すでに新型コロナウイルスが日本に入ってきていたことを上久保先生らがインフルエンザとのウイルス干渉から疫学的に論証された論文もあります。

 宮澤大輔先生は論文論文とおっしゃいますが、どうも自説に合う論文以外は存在すらお認めにならないようです。
 こうした態度を「チェリーピッキング」と呼び、確証バイアスと呼ばれる偏見・錯覚に基づきます。

 さらにTwitterでこんなことをおっしゃるのですが…。

 科学的な内容以外の話題になりました。

 デンマークの論文については私も以前書いていたので宮澤大輔先生にもご紹介しました。

 ここで重要なのは、同じ論文を読んでもこれほどまでに解釈が異なるということです。それは事実認識が異なるということです。
人は誰も錯覚や偏見(バイアス)を免れることができません。それまで持っていた知識や偏見や立場によって、見方がある程度決められてしまうのです。全ての知識を持ってあらゆる視点から物事を見られる人はいません。私にも宮澤大輔先生にも錯覚や偏見があります

 そして一つの視点からだけの事実認識では間違った仮説・推論を立てやすく、検証も不十分となり、容易に間違った結論を出してしまいがちです。

 だから科学的プロセスでは、重要な事柄ほど様々な視点から何度も検証することが必要になります。
 だからこそ様々な視点を持った多くの人の意見が必要なのです。
 キリスト教の教条主義が強く、教会の教えに反することは言えなかった中世は暗黒時代と呼ばれました。近代になって科学技術が急速に発達したのは、多くの人が自由に観察した事実を言い、仮説を述べ、検証に参加できるようになったからでしょう。
 ですから科学的態度としては自分と異なる視点や意見を持つ人は敵ではなく、むしろ検証作業にうってつけの味方なのです。

 ところがこの数年、マスクの効果について疑問を呈するだけで「反マスク」などと罵られるようになりました。

 私は反マスクではなく、清潔操作、有機溶剤を使う時や粉塵作業、吹雪の中の自転車通勤時などには私もマスクを着用します。
「マスクはウイルス対策としては有効ではない、逆効果である」と言っているだけです。それは私の仮説であり、検証を要し、反証されるこもあり得ます。
 ただ自説に合わないからという理由で仮説を反証するのではなく相手を「反マスク」などとレッテルを貼って却下してしまうのは科学的態度ではありません。

反論5:マスク自体がウイルスを排除する効果が「ある」ということは結論が出ていると言っていいと思います。(50分)

 牧田先生がこうおっしゃるので、私が
どこで出ているんですか?」
 と問うと、牧田先生のお答えは
そこらじゅうで出てますよね」(50分17秒)
 根拠・出典は示されません。それでは小さな女の子が「みんなそう言ってるわ」「みんなって誰?」「みんなってみんなよ」と言うのと変わりません。確かにそこらじゅうで「感染対策にマスク」と効果があることを前提に言われています。それは結論ありきであって、根拠を示したことにはならないのです。もちろん科学的議論ではありません。
 さらに牧田先生は
「N95マスクですと0.3ミクロンまでの粒子は95%捕捉できるということがわかっています」
 とおっしゃいます。しかし実社会でほとんどの人がつけているマスクはN95ではありませんし、密着もしていません。

フィルターを含めた不織布加工メーカーの方もこうおっしゃっています。
(このスレッドは大変興味深いです👇)


マスクメーカーも一般的なサージカルマスクは漏れまくりと言っています

 ここで、平均漏れ率が63.36%ということは、逆に平均36.64%は吸い込むウイルスを減らしたと言えるでしょうか?宮澤大輔先生や牧田先生が言うマスクの効果とはそれなのでしょうか?

反論6:マスクに着いたウイルスは剥がれない?(58分)

宮沢孝幸先生「マスクに着いたものが戻るというのは承服しかねて、飛沫粒子がくっついたらそこにずっといると思うけど」

 確かにウイルスはマスクに付着します。しかし付着したウイルスは自分よりはるかに大きなマスクの目を通過しないわけでも剥がれないわけでもありません。

 私はマスクについた粒子は呼吸のたびに吸い込まれることをザルと小麦粉に例えましたが「それはおかしいわ」と言われてしまいました。
 どこかおかしいですか?マスクに一度着いた粒子は二度と剥がれないという根拠などあるのでしょうか?

フィルターに付着した目より小さい粒子は圧の変化によって一気に押し出される。それをプッシュアウト効果と呼び、フィルター業界の課題だそうです。

 牧田先生はマスクは静電気によって目よりも大きい粒子を捕捉すると話されていますが、その効果は1時間で半減するとの報告もあります。ネイチャーの論文(この記事を最後まで読んで苦笑)

 牧田先生「サージカルマスクは4時間くらい使ったら捨ててくれって言ってますよ」

 「言ってますよ」とおっしゃっても、実際にはマスクを4時間ごとに替える人などほとんどいません。多くの人が1日以上同じマスクを使い続けることが報告されています。

某病院の医局のマスクにもこんな注意書きがあります👇。

医療従事者のマスク交換の頻度、その認識さえ、そんなものなのです。

 総合すると、マスクは確かにウイルスを含む粒子の一部をいったんは補足します。口や鼻より広い面積で集めます。私はそれを蜘蛛の巣効果あるいは虫取り網効果と呼びます。
 note上で宮澤大輔先生がマスク有効の根拠として挙げられている東大のマネキン実験でさえ(たった20分間の)、無症状者側はマスクを着けない方がウイルス吸入が少ないという結果が出ています。

 そしてマスクに付着したウイルスは空気中なら3時間で失活するのにマスク内では7日間感染力を保ちます

 これは論文で報告されており、テレビでも報道されました。

 つまり空気中なら自然に消えたはずのウイルスが、マスク内で濃縮され、時間と共に湿ってマスクの静電気が弱ると内外にばら撒かれることになります。マスクが感染対策として逆効果になるメカニズムの説明として十分であると私は考えます。

反論7:接触感染はほとんどない(54分)

 また私がマスクの運用の問題として、マスクを手で触るという話をしました。これは宮澤大輔先生の「自分が感染したのは鼻をほじった時だ」(マスクが無効だったからではない)との話を受けてのことです。

 ここで

宮沢孝幸先生「鼻に指突っ込んでも感染しないと思います。マスクを触った手で目鼻口触ったって、まぁ感染しないと思います。感染するのはエアロゾルを吸い込んだからだと思います」

 とおっしゃいました。

宮沢孝幸先生「なんでかというと、コロナウイルスを感染させる時に、口から飲ませることあるんですよ。そうするとめっちゃウイルス流し込まないと感染しないんですよね。一方、噴霧して鼻から入れると結構少なく感染するんだよね。…ディープキスしても感染せんかった人もいるんだよな…」

ウイルス学者がコロナの接触感染を否定してくれるのは心強いことです。(アルコール消毒は無意味だということです)
私もエアロゾル感染(=空気感染)が主であるというのは同意見です。

 宮沢孝幸先生「飛沫粒子を計算すると1億5千万個ぐらい吸わないとダメ、感染した人はそれぐらい吸ってるんだろうと思ってます。エアロゾルが充満したところにいたら感染するやろ、ただ隣りでくしゃみ一発されたくらいじゃ感染せんよって」(55分)

 (追記と訂正)このことを定量的に研究したのが、慶應義塾大学の報告です。
Ct=35 以上の検体は実験系において感染性を持たない」という複数の報告があり、Ct 値から推測されるウイルス量を計算すると、 例えば Ct=35 の場合には、コーヒーカップ 1 杯程度(125ml)の唾液にウイルス 100 万粒子 以上が含まれていることになりますが、それを浴びても感染が成立する可能性が低い」とあります。
 ユニバーサルマスク(全員マスク)とは、無症状でPCRで陽性にならない人でもマスクが必要という主張です。
 しかし日本の医学的PCR検査閾値であるCt40で陽性のウイルス濃度の人の飛沫から感染性を持つCt20.5の飛沫1mlのウイルス量を得るには、Ct40の唾液が5万ml、Ct33のウイルス量でもCt40の唾液50mlが必要になります。

1mlは検体スワブに着く検体量の概算

 これはCt40の陽性者のものでさえ、接触する唾液は問題ではない、また飛沫として飛ぶ唾液も問題ではないことを意味します。5万mlはもちろん50mlも他人の飛沫を吸い込むことはありえないからです。

感染は飛沫粒子(液体)ではなくエアロゾル(気体)で起こります。エアロゾルはマスクを通過します。(一部、一時的に付着はしますが)


反論8:日本の感染者・コロ死者が増えたのはマスクを外したから(1時間08分)

 牧田先生は、日本で感染者が増加したのは岸田政権になって感染対策を緩めたから、マスクを外したからだと主張されます。(👈因果関係を主張されています)
 しかし実際には、日本以上に感染対策を緩和しマスクを外した諸外国を日本が逆転して感染者数世界一になったことは資料4で示した通りです。

 そもそも、日本人の99%は屋内外問わず今もマスクを外していません。そして第7波において100%マスクの施設でクラスターが起こっていることも資料5で示した通りです。

死者の増加についても言及があったので、私は超過死亡のグラフも提示しました。

 👇のグラフは、国別のパンデミック前5年間のうち最も死者数の多かった年と比較した超過死亡を、2022年の超過死亡が多かった国順に上から並べたものです。(データはこちらから、グラフはこちら)

 比較された45か国中、日本は上から12位、スウェーデンは最下位でこの3年間ずっとマイナスです。

 ちなみに日本と並ぶマスク大国の韓国は上から2位で日本の倍ほどの超過死亡を出しています。

チリが超過死亡上位である話も出ましたが、チリは世界最長ロックダウン国の一つであり、この9月までマスク義務化され、接種数も日本以上の数少ない国の一つです

 チリでも9月にマスク義務化解除以降感染者は減少傾向です。

 さて、死者がうなぎ上りしているのはどちらでしょうか?

スウェーデンではほとんどの人が素顔日本ではほとんどの人が屋内外問わずマスクしているのは、今に始まったことではなくコロナ騒動が始まって約3年間ずっとそうです。マスクの影響も3年間続いていることになります。

ご自身はこうした事実・データを全く示すことなく「感染者が増えたのはマスクを外したからだ」と因果関係を主張する一方で、事実・データを示す私に因果関係を想定するなと言うのは、ダブルスタンダードというか、全く論理的ではありません。

反論8:バングラディシュのRCT以外はゴミである(1時間20分)

宮澤大輔先生はscience誌に載ったバングラディシュのRCTから、マスクに20%の感染予防効果があると仮定することを提案されています。

 この論文については、私も以前にまとめました。

 この論文については、まずランダム化が不適切であった時点で、ランダム化比較試験として破綻しています。
 マスク着用群の村でも平均42%の村民しかマスクしておらず、6か月の試験期間中5ヶ月後にはマスク着用率に10%しか差がありませんでした
 そしてマスク着用群の村民はソーシャルディスタンスも取るように説明を受け、8週間後にマスク着用率が高い村の村長にはお金190$を与えていました。(190$はバングラディシュの平均収入の4ヶ月分)
 そして結果はまず症状の有無のアンケートです。「マスクの感染予防効果を証明したい」と説明されてお金をもらっていれば、マスク着用群の村民は症状があったとは言いにくかったことは十分想像されます
 そして症状があったと回答した者のうち約40%だけの血液検査をしてIgG抗体を比較しSARS-CoV2の感染率を比較しています。これでは無症状感染や抗体を作らなかった人の感染は見つけることができません。

 それで全体で症状では11%、抗体保有率では9.5%の差が出たと言います。しかしこの11%、9.5%の母数はコントロール群(マスクとソーシャルディスタンスの説明を受けなかった群)の症状・抗体保有率に対してです。どちらも全体の被験者からすればわずかしかいないので、全体を図にするとこうなります。

 これでマスクに感染予防効果があったと言えるでしょうか?被験者全体の有症状者の抗体保有率を比べるとマスク・距離推奨群で0.641%、コントロール群で0.710%です。10万人あたり641人対710人、半年間で10万人に69人有症状感染者が違ったという結果です。(血液検査されなかった有症状者に同じ割合抗体保有者がいたとしても172人の差)
 生徒数1000人の学校なら1日あたり0.37人、3年に1人くらいしか変わらないということです。

 宮澤大輔先生は、高齢者のサージカルマスクに限って35%効果があったと言いますが、これはサッカーに例えるなら、前半10分間だけは勝っていたと言うようなものです。その35%にしても全体の被験者からすればごくごくわずかです。
 この研究プロセスと結果が、マスクが感染予防に有効だとする根拠と言えるでしょうか?

 そもそもこの研究はなぜバングラディシュで行われたのでしょう?バングラディシュの人口が多く、世界最大の人口密度を誇り、そして貧しいからです。バングラディシュ人と日本人の生活はあまりに違います。

 それまでほとんどのRCTでマスクの有意な効果は否定されていたので、バングラディシュなら有意差が「出せる」だろうと、有意差を「出すための」様々な工夫を凝らして行われたのです。

それでもこの程度の差だったのです。

 また宮澤大輔先生は私が紹介した統計学者がバングラディシュの論文以外はゴミだと認めたと言いましたが、彼のツイートはこうです。

 雑煮にあん餅さんは「プロセス含めて文句なくその有効性を示せたRCTは1つもない」と言っています。

1つもないということは、バングラディシュのRCTも文句なく有効性を示せていないということを意味します。それに対して宮澤大輔先生も「科学者として正しい判断ありがとうございます」と答えているのです。

 宮澤大輔先生はどこで「バングラディシュのRCTだけは有効と認められた」と解釈されたのでしょうか?

 それでも私はこの研究結果がゴミだとは思いません。
マスクに感染予防効果は高く見積もってもほとんどないこと、マスクをしなくても99%以上の人は有症状感染しないことを示す重要な論文だと考えます。

 やや余談ですがビタミンDの効果はぜんぜんそんな有るか無いかわからない程度のものではなく、誰もが実感できるものです。マスクを強制したがる人がビタミンDを無視することからも、目的は感染予防ではないことがわかります。

疑問:マスクは新型コロナウイルスだけ区別するのか?

 バングラディシュのRCTの特徴は、新型コロナSARS-CoV2抗体を測ったことです。それまでのインフルエンザや一般の風邪症状を対象にしたRCTでマスクの効果は否定されているからです。

 宮澤大輔先生は新型コロナ以前のRCTをゴミと言われますが、そもそもマスクは新型コロナウイルスだけを選択的に防ぐのでしょうか?そんなことはあり得るでしょうか?
 そもそも宮澤大輔先生が宮川綾子先生にこうツイートし、

 2020年始のインフル激減をマスクの効果だと考えられたのは、マスクが新型コロナウイルスだけでなくインフルやRSや他のウイルスも防ぐと仮説されているからでしょう。

宮澤大輔先生「Science誌に載った質の良いRCTでちゃんとサージカルマスク高齢者35%減出てるんですよ」
牧田先生「今のところ許容できるエビデンスとしてはそれくらいしかないですよね」
宮澤大輔先生「それくらいしかないです」(1時間30分)

 それなのに☝️こう言ってRCTについては新型コロナのバングラディシュ論文しか認めないというのは、ここにもダブルスタンダードが見られます。
 ただここで、マスクが有効だと言う根拠は結局バングラディシュ論文しかないことがわかりました。

お金をもらっても42%しかマスクしなかったバングラディシュ(ピンク)とマスクを続ける日本(紫)の感染者数

反論9:マスクが無効だとか逆効果だと言うと社会に受け入れられない(1時間22分)

 宮川大輔先生はさらに、マスクが無効だとか逆効果だと言うと損ですよ、社会的に受け入れられず相手にされず、議論のテーブルにさえつけませんよと言います。

 私からすると、これは全く科学的な議論ではありません。むしろ科学を放棄した主張です。
科学は多数決ではありません。交渉でもありません
 天体を自分で観察して地動説を唱えたガリレオ・ガリレイはキリスト教会から異端審問にかけられ、その後も迫害されました。
 宮川大輔先生の言葉は、そういう目に遭うから「地球は回っているなんて言うな」ということです。

 科学的には、それでも地球は回っているのです。(実際は、ガリレオも言わなかったそうですが)
世間がなんと言おうと権威が認めようと認めなかろうと、科学的事実には全く関係ないのです。
世間や権力者がなんと言おうと、星の位置が変わったり豚が空を飛んだり、本当は無効なマスクが有効になったりすることはないのです。

いしいのプレゼン②(1時間47分~)

 かなり脱線してしまったのですが、ようやく残りをプレゼンできました。

次に、 ②今日本でユニバーサルマスクをすべきか(3分) という問いに、

私は即刻中止すべきと考えます。

資料12:マスクのウイルス感染に対する有効性をだれも実感できない一方、有害性は誰もが実感します。マスクをつければ息苦しいですし、話もしにくい。耳や頭も痛くなる日本の医療従事者でのRCTでもマスクが有意に頭痛を起こすことがわかっていますし、ドイツや日本の調査では学習障害やイライラなど様々な症状を起こすことがわかっています。


表情を読み取れなくなる、顔を覚えづらくなる、子供の認知発達が遅れるなどの弊害も報告されており、それは私たち誰もが実感できる害です。

資料13:宮澤大輔先生は3年間N95マスクしかつけたことがないとツイートされましたが、テレビの取材の時だけはサージカルマスクに変えたそうです。なぜでしょう?感染予防効果を重視されるなら、人と会う取材の時こそN95を着けるはずでしょう。そうしなかったのはN95では不都合だった理由があるはず
(宮澤大輔先生「奇異に見えるから」👈それも立派なマスクの害です) 

資料14:また経済的有害性も忘れてはいけません。医療用N95マスクは1枚500円ほどします。1日1枚としても1年で一人18万円、1億2千万人では21兆円を超えます。厚労省は滅菌して2回まで再利用可としていますが、滅菌の手間と経費がかかります。本当にそれだけの価値がマスクにあるでしょうか?
(宮澤大輔先生「そんなにしない。100円。」👈だとしても4.4兆円です)

資料15:もしマスクをケチって長時間使えばマスクにはそれだけ雑菌やウイルスが蓄積していきます。コロナウイルスはマスク内で7日間感染力を保ち続けると報告されています。マスクを着けて呼吸すれば内外からのウイルスや雑菌を繰り返し吸うことになります。

資料16:note上で宮澤大輔先生がマスク有効の根拠として挙げられている東大のマネキン実験でも、無症状者側はマスクを着けない方がウイルス吸入が少ないという結果が出ています。

資料17:感染対策が始まってから、日本では女性や子供を中心に自殺が急増し現在も続いています

資料18:これはマスクをしないスウェーデンでは見られていない現象です。2021年もスウェーデンで女性の自殺はむしろ減少しました。

資料19:スウェーデンの子供たちはパンデミック下における精神的被害が他の国に比べて少なかったことは論文でも報告されています。

以上から、マスクにウイルス感染を防ぐ効果はなく、それどころか逆に感染を増やすことが疑われます。 またマスクの感染症以外の面で心身の健康に及ぼす害は決して軽視していいものではなく、ユニバーサルマスクは即刻中止するべきと考えます。

最後になりましたが、この討論の場を用意してくださった宮澤大輔先生はじめ、宮沢孝幸先生、コロラド(牧田)先生。宮川先生、新田先生。雑煮さん藤川さんマンさんはじめサポートしてくださった方々、応援してくださるリスナーの皆様に心より感謝申し上げますありがとうございました。

誰に言いたいの?(1時間54分)

宮澤大輔先生「誰に訴えたいんですか?マスクやめなさーいって。政府、病院長?」

いしい「みんなに『やめませんか?』と提案したいです」

宮沢孝幸先生「僕は…まあ邪魔くさいですね。飛行機に乗る時だってなんでせなあかんの、ほんとにアホやなと思って、例えばホテルでなんでせなあかんのかとか。時と場合によるんじゃないですか?
 ただ私冬になるとマスクしたくなるんだよなぁ。あったかいし、鼻あっためる効果とか、保湿する効果はあるんじゃないかなと思うんだけど」

いしい「したい時にするのはいいんじゃないですか、僕だってマスクするときありますよ」

宮沢孝幸先生「したい時に着ければいい話」

宮澤大輔先生「したい時にしたらいいんだったらみんなそうしてますね今?」

宮沢孝幸先生「だけど、なんでいちいちコンビニ行くのにしなきゃいけないのとか、ホテル入る時しなきゃいけないの、あとコンサートホール入る時なんでせなあかんの?アホなの?

宮澤大輔先生「それをね、変えようと思ったら施設の責任者が変わらなきゃいけないと言うことですよね」

宮沢孝幸先生「今だにさ、JALだってしなきゃいけない、なんでJAL飛行機の中でしなきゃいけないんだよバカって」

いしい「海外の飛行機はいいのに日本の航空会社だけしなきゃダメなんですよ」

宮澤大輔先生「だからそれを誰に訴えたいの?人々に訴えてこんなことはおかしいから例えばJALにやめさせるように国民全体で圧力をかけましょうみたいな感じで言いたいってことですか?」

宮沢孝幸先生「国は音頭とって『それいらないよね』って言ってくれって」

宮澤大輔先生「宮沢孝幸先生は国に言いたいってことですね」

宮沢孝幸先生「もそうだし、JALなんてリーディングカンパニーなんだからはよやめろ!って」

宮澤大輔先生「いしいさんは国に言いたいわけじゃないんでしょ?」

いしい「政府は絶対やめないですよ、だってコロナ禍を続ければ続けるほどマスクが売れてワクチンが売れて儲かるんですから

*金額はイメージです。

宮沢孝幸先生「僕もワクチン売りたいがためにマスク強制してるんだと思いますけど

牧田先生「いやマスク強制してないでしょ」

宮沢孝幸先生「いやしてる、JALだってしてるじゃん!

牧田先生「JALとかは航空会社の臨時規定としてしているんですね」

宮沢孝幸先生「だったら国がそれをやめさせないと」

牧田先生「国に強制してやめさせる力はないでしょ」

宮沢孝幸先生「でも何らかしないとこれ終わんないよ?はっきり言って」

宮澤大輔先生「何らかって言うのは実践的に何ですか?」

宮沢孝幸先生「何らかのアクションしないとマスク終わんないじゃん。いつ終わらせる?じゃあ宮澤さんはどうやったら終わるの?

宮澤大輔先生「マスクが終わるってことですか?」

宮沢孝幸先生「戻らないのこれ?永遠に

いしい「一生するつもりです?

宮沢孝幸先生「そんなアホな

宮澤大輔先生「影響は残ると思いますよ。若い世代はマスクに適応しちゃったんです」

宮沢孝幸先生「それ嫌ですよ、弱くなりますよ」

宮澤大輔先生「嫌って言ったって適応してて」

いしい「またファッションが変われば、素顔がかっこいいんだって風潮になれば、マスメディアがそういうふうに言えば変わるんですよ」

牧田先生「アメリカでRSVとインフルが凄いことになってて」

宮沢孝幸先生「ほんとにね、どんちゃん騒ぎしてる奴みんな強いんよ、マジで

宮澤大輔先生「だから心理的にみんながコロナを恐れなくなったら自然にマスクしなくなると思いませんか?」

宮沢孝幸先生「だから早よなくそうや、もうえやろ、もうええやん

いしい「そうやそうや!」・・・

 ここで宮澤大輔先生が「誰に言いたいのか?」と繰り返し問うてくださったのはとても有意義だったと思います。
みな誰か自分以外の人がやめてくれるのを待っていることを暗に示していたからです。
 よく街でも聞くことがあります。
「いつまで続けるのかね。早くやめてくれないかね」
 その度に私は思います。あなたはいつやめるの?と。

一人一人がマスクをやめ、101匹目のサルのようにそれが一定数を超えるまで、マスクは続くでしょう。
 それとも何らかの理由、戦争や貧困で、マスクができなくなるまで。

 この先まだ3時間ほど続くのですが、毒チンの話や代替医療の話になりマスクからは脱線したままほとんど帰ってこないので、この辺にしたいと思います。 


 以下、全体を振り返って、公開討論開催が危ぶまれていた時に私が書いていた文章です。せっかくなので載せますが重複もあるので、最後の論文と科学雑誌の実態(3:48~)まで飛ばしていただいて大丈夫です。


 論点は発端となったツイートの質問2つだと私は考えました。つまりこの2つです。

 まず一つ目の質問は、事実認識の問題です。

 宮澤大輔先生はこう言われるのですが、事実はどうでしょうか?

緑が日本、ピンクがスウェーデン

科学とは何か?


 宮澤大輔先生は「科学」という言葉を非常に多用されます。

 科学とは何か?Wikipediaにはこんなふうに解説されていますが、ややわかりにくい。

 私は科学を物事を理解したり考えたりする方法・過程の一つと考えています。
科学以外の方法には、感情・直感・同調・教義・実利・同調など様々な理解の仕方・考え方があります。

 まず科学の対象は事実です。例えばニュートンなら「リンゴが落ちた」という事実・現象を観察することから科学は始まると言っていいでしょう。誰かの空想や神の思し召しなど、観察できないことは科学の対象にはなりにくいでしょう。事実観察には客観性が求められるのです。

 科学のプロセスでは、事実を観察したら仮説・推論を立てます。例えば「りんごが落ちたのは、りんごと地面の間に引きつける力が働くからではないか」という仮説を立てるのが科学です。仮説は事実を論理的に説明するものでなくてはなりません。科学では説明する論理に破綻・矛盾・詭弁などがあってはいけません。そういうもんだから、みんな落ちてるから、落ちるのがルール・マナーだから、と思考停止するのは科学ではありません

 例えば宗教的思考プロセスはこうなります。

マスクの仮説を検証する

さて、ここから本格的に2つの仮説を検証していきましょう。

仮説1:マスクはウイルス感染対策として有効であり、有益性が有害性に勝る。

仮説2:マスクはウイルス感染対策として逆効果であり、有害性が有益性に勝る。


 この対立する2つの仮説は科学的にどちらが真(正しい)と言えるでしょうか?

 宮澤大輔先生はまず仮説1の根拠として、2020年にインフルエンザが減った事実を挙げられました。インフルエンザが減ったという事実認識には私も異論はなく、ただ減った時期が多くの人がマスクをするようになった時期より前であったという事実をお伝えしたのは先に述べた通りです。

仮説1の根拠1:多くの人がマスクをするようになった2020年インフルエンザが減った。

反証:人々がマスクをするようになる先に既にインフルエンザが減っていた事実

 私が提示した図は国立感染症研究所の発表を元にしたものですが、宮澤先生は論文になっていないとダメだと主張します。
 私は同じデータが用いられた論文を紹介しつつもこのようにお答えしました。 

 これもお気に召さなかったようで

 私はこのようにお返ししました。

 ここにも事実認識の違いが見られます。私は論文に用いられたデータに着目して紹介したのですが、宮澤大輔先生は考察に着目されたのです。
 一つの論文の中で、著者の考察の全てに同意できなければ引用できないということではありません。また論文を雑誌に掲載してもらうには査読者の意見に従う必要がままあり、場合によっては不本意な訂正を迫られることもあります。
 またそもそも論文になったことだけが真実で、論文になっていないことは真実ではないとは限りません。例えば、今日発表された論文に掲載された事実は昨日までは論文になっていませんでしたが、昨日も事実であったはずです。
 逆に論文として雑誌に掲載されたことが必ずしも真実であるとは限らず、実際に有用であるともかぎりません。
 ファイザーの遺伝子製剤が95%有効であるという一流雑誌NEJMに掲載された論文を信じて多くの人が接種した結果、コロナは終息したでしょうか?

 次に、宮澤大輔先生はインフルエンザ以外にも多くのウイルスが減ったことがマスク等の感染対策の効果と主張されます。

 私は同時期にライノウイルスは逆に増えたという事実を論文を提示し反証しました。

 マスクが呼吸器感染症ウイルスを防ぐなら、ライノウイルスも同様に防がれるはずです。しかし実際は同時に増えたウイルスと減ったウイルスがあったので、感染対策ではなくウイルス干渉によってインフルが減ったという説明の方が現実を矛盾なく説明できるのです。

仮説1の根拠2:多くの人がマスクをするようになった2020年インフルエンザが減った。

反証:ライノウイルス等、同時期に逆に増えたウイルスがあることは感染対策が有効である仮説と矛盾する。


 私にとってはこのように事実観察・仮説・検証を繰り返すプロセスが科学です。
 宮澤大輔先生にとっては、権威ある論文に載ったことや世間に受け入れられる結果が科学であるようです。

論文と科学雑誌の実態(3:48~)

 この辺りのことは、公開討論でも語られました。

宮沢孝幸先生「日本はあまり情報って回ってこないんですけど、イギリスにいた時はすごかったですよ、例えばネイチャーに載るでしょ、するとみんなすぐ情報集めて『これどうなの?』『たぶんウソ』って情報共有されて、なんでかって言うと、あそこのラボは嘘ばっかりついてると。
 なんかね専門誌に乗らなくてもネイチャーとか載っちゃうんですよね。日本は情報回ってこなくて、僕はイギリスに留学してたから『これほんと?』とかすぐ聞けるけど、できへん人はすぐ信じちゃうんですよね」

牧田先生「今回コロナ禍が始まって面白いなと思ったのは、論文それ自体を権威とする人があまりにも多いです。特にお医者さんに。異様ですよね」

宮沢孝幸先生「論文って一つの説というか主張ですので、論文出たから正しいってもんじゃないし、査読前だから正しくないってわけでもないし、それは読んでいろいろ自分で考えるんですよね」

牧田先生「結局、どこどこの論文じゃなきゃダメだ、ランセットじゃなきゃ論文じゃないという人もいましたし」

宮沢孝幸先生「そんなバカな。けっこう上の方のジャーナルって、政治が入ってきちゃって権力者が握っちゃってるので、かなりきついです。本当のことを言おうと思ったら下の雑誌に出さなきゃいけないってことはしょっちゅうです」

牧田先生「まだ未解明の事象に関する知識が欲しい時には色〜んな雑誌の方がいいですよね」

宮沢孝幸先生「インパクトファクターで区別するんじゃなくて、自分の心に響くか響かないか

牧田先生「僕は面白いかどうかでみるんです、この論文おもろいな〜って」

宮沢孝幸先生「でもインパクトファクターが多いとお伽話が多いですよ。それほんまやったらおもろいけどまぁウソやろてのが多いな」

牧田先生「そこすごく京大宮沢さんと僕一致するわ」

宮澤大輔先生「仲良くなってよかったですね

 というわけで、とても有意義な公開議論になったと思います。
 読者の皆様、リスナーの皆様、どうか私の意見を鵜呑みにすることなく、ご自分で考え、ご自分でアクションを起こしてみてください。

 最後に改めて、この討論の場を用意してくださった宮澤大輔先生はじめ、宮沢孝幸先生、牧田寛先生。宮川先生、新田先生。雑煮さん藤川さんマンさんはじめサポートしてくださった方々、イラストを描いてくださった科学とは。さん、応援してくださるリスナーの皆様、読者の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

 宮沢孝幸先生がオープニングにピアノで奏でてくださった(宮澤大輔先生が歌ってくださった)のはこの曲👇。その旋律はとても優しく、歌詞は暗示的でした。(7分〜)


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