9.ビタミンDのつくり方

ポイント

ビタミンDは日光を浴びることで皮膚で作れる。

美白ブームが乳がんを増やした。

皮膚がんを恐れて日光を避けるのはまちがい。


乳がんを減らす行動

日光を皮膚に気持ちよく浴びる。

(ガラス越しや衣服越しでなく、日焼け止めを塗らず、日の高い季節と時間に)


 乳がんは乳腺細胞のビタミンD欠乏だとわかりました。
 ですから、乳腺細胞にビタミンDを届けることができれば、癌化を防ぎ、癌化した細胞(乳がん細胞)を正常に戻したり、自分から消滅する(アポトーシス)ことを促したりできるのです。
 乳腺細胞にビタミンDを届けるためには、まずは身体のビタミンDを増やさなくてはなりません。


 身体のビタミンDを増やす方法は、2つあります。
①皮膚で作る。
②腸から吸収する。


 ①「皮膚で作る」から説明します。


 ビタミンDは日光を浴びることで、皮膚で作ることができます
 魚を食べない陸上動物の多くは、ほとんどのビタミンDを自分で作るだけで生きています。
 ビタミンDはかつては骨のビタミンと呼ばれ、現在も骨粗鬆症の薬などに使われています。
 子どもで不足すると「くる病」になり骨がちゃんと育たなくなることで知られています。
 明治から昭和の工業化時代、大気汚染で日光が弱められてしまったため日本でも「くる病」が流行しました。
 
 今、再び「くる病」が増えています
 原因は、美白ブームで母親が子どもたちに日焼け止めクリームや日焼け止め入りの化粧品を塗ることです。
 日焼け止めを塗った皮膚では、日光を浴びてもビタミンDの合成はほとんどゼロになってしまいます。
 さらに、ビタミンDを作るためには日光の中でもベータ紫外線(UVB:赤くなる日焼けを起こす)を皮膚に浴びる必要があります。
 ガラス越しの日光や、衣服越しでは、ビタミンDを作ることはできません。

(ガラスはアルファ紫外線 [UVA:黒くなる日焼けを起こす]は通す)

  現在では、ビタミンDは骨だけでなく、腎臓も、腸も、脳や神経も、そしておっぱいの乳腺細胞も必要としていることがわかっています
 日本の乳がんは、1990年代に急増します。
 ちょうど、美白ブームが始まった頃です。
 化粧品にも日焼け止めが入れられ、日常的に紫外線がカットされるようになったのです。
 「80年代 女性タレント」などで画像検索してみて下さい。
 松田聖子さんから小泉今日子さん、中山美穂さん、浅野ゆう子さんまで、今からするとかなり色黒なのがわかります。


 乳がんが増えた理由その1は、美白ブームだと言っていいでしょう。


 その火付け役となった料理研究家が、乳がん同様にビタミンD不足と関連が強い大腸がんで亡くなったのは象徴的でした。
 ここで、
 え?紫外線って、悪者じゃないの?皮膚がんの原因じゃないの?
 そう思う方もいるでしょう。
 紫外線が皮膚がんの原因というのは大きな間違いです。
 これも原因「なぜ?」の問いなので、考える目的によりますが、紫外線を避けても皮膚がん死を減らすことはできません。
 最も怖い皮膚がんはメラノーマ、通称ほくろがんです。
 ほくろがんのできる場所は足の裏など日光を浴びない所に多いのです。
 実際、アメリカでは日焼け止めが普及する前の1950年代から誰もが日焼け止めを使うようになった1990年代にかけて、メラノーマの死亡率が女性では2倍、男性では3倍になりました。(参考文献9-1)
 またそもそも、日本人は世界でも最も皮膚がんのリスクは少ないのです。

 図4を見て下さい。(訂正:年齢調整死亡率→年齢階級別死亡率)

画像1

 皮膚癌で亡くなる人はとても少なく、ほぼ高齢者に限られることがわかります。


 皮膚がんを恐れて紫外線を避けることは、色んな意味で本末転倒なのです。


 ここでは、どのくらい日光を浴びればいいのか、という話にはあえて踏み込みません。皮膚の色、場所、季節、天気などによって大きく違うからです。
 アメリカでは、年間日照量の多いサンフランシスコなどの西海岸と、日照量の少ないニューヨークなどの北東部では、乳がんリスクが大きく違うことがわかっています。
 普通に生活しているだけでです。
 無理に日焼けするまで日光を浴びる必要はありません


 まずは日光を浴びてビタミンDをつくることは大切だということ、皮膚がんを恐れて紫外線を避ける必要はないことを知って下さい
 そして、晴れた昼間に屋外に出て自然な日光を浴びる気持ち良さを感じて、それを習慣にしましょう


 今回の内容の多くは、
『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(斎藤糧三著 講談社)(参考書籍9-1)
 からの紹介です。これも素晴らしい名著です。ぜひご一読をお勧めします。


 次の回では、日光を浴びてビタミンDをつくる材料についてお話しします。

👇につづく


(参考文献9-1)Cancer Surveillance Series: Changing Patterns of Cutaneous Malignant Melanoma Mortality Rates Among Whites in the United States
 https://academic.oup.com/jnci/article/92/10/811/2905763
(参考書籍9-1)『病気を遠ざける!1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(斎藤糧三著 講談社)
(参考書籍9-2)『ビタミンD革命 日光の恵み ビタミンDの力』(ソラム・カルサ著 バベルプレス)

(Facebook 2018年10月29日より)

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