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ユーロポール(欧州刑事警察機構)、反イスラエル行為を「テロ行為」と規定

6月28日「電子インティファーダ」
デービッド・クローニン
(アイルランド人ジャーナリスト、政治活動家)
翻訳・脇浜義明

 米国の反テロ法は、ブラック・ライヴズ・マター運動や環境運動や動物愛護運動を「国内テロ」視するために、利用される傾向にある。また欧米の「国際ホロコースト記念同盟」は、イスラエルとシオニズム批判を「ユダヤ人差別だ」と定義する、「新反ユダヤ主義」を採用している。同じようにEU警察は、イスラエルへの攻撃を「テロ」と規定している。

(訳者・脇浜)

 ユーロポール(欧州刑事警察機構)は、麻薬を取り締まる法執行機関だ。
 しかし、最近ユーロポールが出した「テロリズムの現状と傾向」というレポートが、イスラエルをテロに対する、罪のない犠牲者と描いていることに、私は仰天した。レポートは「イスラエルは左翼過激派プロパガンダの恒常的標的となっている」として、2022年8月のベルギーでの事件を例示している。31歳の「パレスチナ・シンパが火炎瓶で2台の軍装甲車を攻撃した」事件である。
 装甲車は、「イスラエルの軍事会社の事務所の前に駐車」していた。「イスラエル軍事会社は攻撃目標だとするメッセージ」が現場にあった、と報告書は記している。そして、これはベルギーで去年起きた唯一の「左翼テロ」である、と書いていた。
 私は、「イスラエルが日常的にパレスチナ人に過激暴力を振るっているのに、イスラエル批判を過激派とかテロ行為だとするのはなぜか?」と尋ねた。同組織のスポークスパーソンは、「ベルギー事件を描く上で状況に関する評価をしていない」「事実の描写だけ」と答えた。
 確かに、読者にとって必要な事実は欠落していた。標的となった軍事会社はエルビット・システムズで、ガザの大量虐殺、最近では西岸地区の攻撃に使用されたドローンの製造会社であること、同社のドローンで子どもを含む罪のない犠牲者が多数出ていることを、意図的に隠している。また、装甲車への火炎瓶による放火で怪我をしたものは一人もいなかったが、報告書ではその事実を書かず、何か犠牲が大ききかった雰囲気を漂わす書き方だった。
 ユーロポール報告書は、適正な手順を踏んでいないし、「証拠」を一方的に取捨選択し、欧州連合基本的人権憲章にも違反している。

ユーロポールとイスラエル警察の癒着

 他にも問題点がある。報告書は、ベルギー事件を英国のパレスチナ・アクションの抗議活動と比較している。パレスチナ・アクションは、イスラエルの国家テロに抗議し、それを防ごうとして、エルビット・システム社所有の機器を破壊した。それを「忌まわしいテロ」と呼び、「ベルギー事件もそれと同じだ!」としたのである。
 しかし、ユーロポールはイスラエル警察──東エルサレムで日常的にパレスチナ人を殺害し、パレスチナ人の家屋を破壊する国家テロ実行者──と長く協力関係にあり、イスラエルの国家テロを支持・促進してきた。ユーロポールこそがテロリストである。
 他のEU文書と異なり、ユーロポール報告書は、一応イスラエル国家イデオロギーであるシオニズム批判と、人種・宗教に基づくユダヤ人憎悪とを区別している。それにもかかわらず、急進左翼の間に反ユダヤ主義がはびこっている、と書いている。具体的証拠もあげずにだ。「左翼過激派はパレスチナ人を支持して反シオニズムを唱え、イスラエルを帝国主義、植民地主義、抑圧国と呼んでいるが、同時にユダヤ人差別感情も発揮している。たとえば、反資本主義的陰謀論者に関連して。左翼過激派はデモや出版物やネット上で、反イスラエルヘイトスピーチを行っている」。
 「左翼過激派」という言葉の定義はないが、階級のない社会──みんなが平等な社会──の希求が過激思想だ、という文脈がある。移民排斥をする欧州国境管理協力機構(Frontx)の廃止運動や、気候変動に関する急進的運動も、報告書の中では過激派扱いされている。
 今週、欧州委員会の著名人マルガリティス・シナスと、カタリーナ・フォン・シュナーバインは、イスラエル議員のシムハ・ロスマンを、EU主催の反ユダヤ主義(イスラエルとそのロビー団体が定義する反ユダヤ主義)会議に招待する。ロスマンは、バイデンでさえ「受け入れがたい」と言った酷い法律の提唱者であり、極右の宗教シオニスト党で西岸地区で占領と暴行の主導者であるベザレル・スモトリッチの盟友である。スモトリッチは人種主義的先導者で、パレスチナ人の殲滅を主張した狂信者故カハネ追従者である。ロスマンらカハネ主義者の仲間が、1985年のパレスチナ系米国人活動家アレックス・オデ暗殺を行ったと言われている。
 こういうことはユーロポール報告書に記載されていないし、今後のテロに関する報告書にも記載されないであろう。

(人民新聞 9月20日号掲載)

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