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万博主催者 爆発事故隠ぺい

 今年3月の万博会場での爆発事故が、維新の会を追いつめている。当初点検口と床の破損のみと公表していた万博協会や大阪府市が、市民の情報開示や追及により訂正する事態となっている。爆発事故について取材した。(編集部・かわすみかずみ)

 爆発事故は3月28日10時55分、夢洲1区のトイレ工事中に発生。点検口下のスペースに溜まったメタンガスに、溶接作業中の火花が引火したことが原因と見られる。
このスペースはトイレの下水管を通すために作られ、メタンガスの排出パイプ以外の場所から発生したガスが溜まっていたと考えられる。
500平方メートルのトイレのうち、100平方メートルが爆発したが、けが人はなかったと万博協会はホームページで28日に発表。翌日には大手紙のネットメディアが報じたが、新聞は爆発事故を取り上げなかった。
 現在まで継続して万博問題を追っているのは、私が知る限り赤旗と東京新聞のみだ。この問題に関心を寄せる市民は、万博協会が公表した事故現場の写真が1枚だったことや、破損箇所が一部しか写されないことに当初から疑問を持っていた。
ネットメディアもこれを追及したが、TV、新聞は沈黙した。「夢洲カジノを止める府民の会」を中心に、大阪府内で万博・カジノ反対運動を繰り広げる人々は、情報公開請求や市民への啓発活動、街頭宣伝などで事実を伝え続けた。また大手新聞社に対し、爆発事故を伝えるよう働きかけるなど、地道な活動が続いた。
 ネットメディアから爆発事故が広まったことを懸念した万博協会は、4月19日に会見を行い、床下と点検口に破損があったと公表した。同時に対応策として、送風装置による換気やガス濃度の測定を徹底し、22日から工事を再開すると発表した。

二転三転する証言

 これに反発した市民は、事故原因のメタンガス発生を抑える方法がない状態での開催に、危機感を抱いた。
 5月7日に、Xで「あおむらさき」氏がポストした内容が拡散された。氏が情報公開請求で開示させた、消防局の記録だった。工事を請け負った鹿島建設・飛島建設共同事業体JVが、消防署に連絡したのは事故から4時間半後だった。また天井が破損した事や、一酸化炭素が400ppm検出された事も書かれていた。
14日、筆者は鹿島建設、飛島建設に連絡が4時間半後だった事や、天井の破損があった事を公表しなかった理由を尋ねた。
 飛島建設は無回答だったが、鹿島建設は15日に回答した。連絡が4時間半後になった事について、焼損もなく負傷者もいなかった事から、消防署への連絡の要否を確認するのに時間がかかったと言っている。また天井の破損を公表しなかった理由は、「壁の養生テープが破れたという事実はあるが、天井が破損した事実はない」と答えた。
 同日、大阪市消防局から情報公開請求資料を受け取った際に筆者が聞き取りを行った時は、「消防の慣例で最初は事故を大きく見積もる傾向がある。事故後、天井の破損については訂正する可能性がある」と回答した。消防局に天井の現場写真が保存されているか問うと、全て保存していると述べた。だが、当日渡された現場写真は黒塗りだった。
 これについて説明を求めると、事故現場で証言を聞く際に職員に対して個人の情報を公表しないことを確約しないと情報が得られないので公表しないという。

 5月15日、筆者は大阪府定例会見で吉村知事に爆発事故について質問した。万博こども招待事業について、府下の学校長に事故を知らせていないのはなぜかという問いに、知事は「報道で知っているでしょう?」と回答した。これは府教育委員会の回答と同じだった。
 だがある現場教員は、大阪市だけではないが、教員はテレビを見る暇すらない。ほとんどの教員は仕事に追われ、万博の情報を調べることなどできない。保護者などから聞いてびっくりしているというのが現状だという。
 また招待事業でバスを使う学校は、料金が学校負担となることについては、「他の遠足と同じなので特にかわったものではない」と答えた。天井破損については、明確な答えを出さなかった。
 この日の会見は0歳児選挙権についての質問に終始し、万博の事故について質問したのは、元大阪日日新聞の木下功記者と筆者だけだった。
 司会の府職員は筆者の質問に対して、「質問をまとめてください」と何度も制止するような態度を見せた。会見動画のコメント欄では、爆発事故を何も質問しない大手記者への叱責が書かれた。

事故を認めさせた市民の力

 16日、鹿島建設から電話がきた。14日の回答に誤りがあるので、訂正したいとのことだった。
 その後、たつみコータロー元参議院議員が爆発事故についてあらたな事実を公表した。天井の破損箇所の写真が公開されたことや、メタンガスが2区、3区でも発生することもわかった。
22日には万博協会が再度会見を開いた。協会は天井の破損について認め、さらに事故現場の写真を2枚追加で公表した。また、あらたに基礎部分の変色もあったと言った。
 同日、れいわ新選組の大石あきこ議員が国会で爆発事故を質問した。これにより、4時間半も連絡が遅れたことが全国に報道され、大阪府や万博協会への非難が高まった。
同日、鹿島建設から訂正の回答があった。「天井の破損はない」と回答したが、再度聞き取りしたらあったという。またJVも、基礎部分の変色を認めた。鹿島建設は「現場から事務所に連絡されておらず、知らなかった」と述べたが、後日筆者が事故後連絡した関係先を同社に尋ねると、万博協会整備部と西野田労働基準監督署をあげた。鹿島はさらに、事故後に協会と西野田労働基準監督署も現場にきたと明かした。
31日には大手メディアが2、3区でのメタンガス発生について後追いを始めた。国会で議員が追及する中、大石議員のもとに、現場作業員から写真や証言が寄せられ、メディアがとりあげていくという流れができた。Xやフェイスブックなどでの市民の発信も相次いだ。
 そして6月4日に大石議員のXから発信された内容は、人々に衝撃を与えた。そこにはJⅤが万博協会、大阪市に提供した事故の速報が写されていた。市民の情報開示請求の提供だという。そこには、鹿島が事故後すぐに万博協会や西野田労基署に連絡していたことが書かれていた。
 これまで協会や大阪市は、「事業者から連絡を受けておらず、事故状況の詳細を知らなかった」 と発言していた。だがこの書類により、協会側が虚偽の説明を行っていた可能性が高まった。このXは、6月14日現在21万人が閲覧している。
 市民の情報力が、大手メディアを上回った。市民、議員、メディアの連携による勝利といえる。

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