ボリビア／コロナ危機への ボリビア社会主義運動からの提言／フェデリコ・フェンテス 　『グリーン・レフト』２０２０年４月24日／翻訳・脇浜義明

ＭＡＳの大統領候補ルイス・アルセ氏（右）▽

　ボリビア社会主義運動（ＭＡＳ）が、コロナ感染病の社会的・経済的影響とそれへの対策をまとめた♯PutLivesFirst「生きることが第一」を発表した。これは、昨年11月のクーデターで追われたモラレス大統領のもとで経済相を務め、現在ＭＡＳの大統領候補であるルイス・アルセの名で４月15日に発表されたもの。現在ボリビアは、クーデター犯のヘアニネ・アニェス率いる憲法に基づかない暫定政権の統治下にある。大統領選挙は５月３日の予定だったが、アニェスが３月22日に発令したロックダウンのために延期されている。
　ＭＡＳの計画は、「世界にはコロナパンデミックとグローバル資本主義の多元的危機が集中的に現れており、人類の破局になる恐れがある」と述べ、アニェス臨時政府の対策が遅きに過ぎて不十分で、むしろ事態を複雑にしていると批判。「手遅れで、効果がなく、差別的で、その場しのぎ」、「ロックダウン宣言しながら、その犠牲となる人民への手当てはなく、ようやく一部の国民にわずかな救済措置が発表されたのは４月末だ」等々。
　この現実に対し、ＭＡＳは、社会運動体や医療専門家や経済部門の人々と相談して、緊急対策をまとめた。医療、サプライチェーン、社会政策、経済復興、地域社会連帯、人権、言論の自由、司法秩序、国際関係、弱者保護、地球環境、文化、メディア、情報の透明化など14領域にわたる対策である。
　医療では、民間の医療資源をすべて国家的なコロナ対策の中に組み入れ、無料検査・治療を行う。医療関係者や学生から成る医療旅団を結成、必要な防護具完備のもとで地域社会へ派遣する。旅団は感染経路やクラスター源を調査して感染を食い止める。また、医療器具や薬品の輸入促進、隔離が必要な人々を収容する施設を各地域社会に確保することを訴えている。
　サプライチェーンについては、生活必需品生産・流通に従事する労働者全員に感染予防の備えを講じる。ロックダウン中の農業生産サイクルが中断しないように環境整備を行い、ボリビア人民の食糧安全保障を確保する。
　医療・衛生用品を供給する中小企業への国家的支援。消毒用アルコール不足を補うために、ボリビア石油会社（ＹＰＦＢ）に増産させ、病院や家庭に回すこと。
　生活保障については、財の再分配を行う。社会保障支援金の増額、低所得世帯への公共料金の無料化。学生全員にインターネットの無料使用を保証。立ち退きを禁止する代わりに、家賃で生計を立てている家主に低所得者の家賃を公費で肩代わりする。解雇禁止と休業補償の措置を講じる。
　経済に関しては、ネオリベラル・モデルを廃止し、共同体的生産経済モデルへ復帰させる。公共投資を中核として需要を作り、持続性を確保するために国内市場を重視し、所得再分配による成長を目指す。そのために、ボリビア中央銀行が、金融面で貨幣を安定させる措置をとる。
　２０２０～21年の対外公的債務と、国有企業国債への利息支払いを停止して、その金を公的投資へ回す。公的投資は主としてヘルスケア領域とし、そのためにヘルスケア連帯ファンドを設立する。
　また、コロナ危機の間、公的部門の報酬を制限して、浮かした金も資金とする。民間部門に対して、金利をゼロにして賃金と投資の資金とする。特に被害の大きい業種（観光、ホテル、飲食など）には特別支援を行う。
　コミュニティが主体的に関発した対策、例えばコミュニティ・フード・センターなどを、社会運動体と協力して、安全な形で全国的に広げる。生産者が供給する食品を都市部に安全に配送・分配できるよう、官民一体の協力体制を拡充する。

第三世界の債務を無効に
　重要なことは、健康、経済、社会生活と生態系持続性の間のバランスある施策をとるように呼び掛けていることだ。
　「ロックダウンなどの対策は、社会と経済にマイナスの影響を与えるが、自然と生態系に良い影響がある。しかし、ロックダウン終了後の経済危機を乗り越える経済再開で、その影響はすぐ消える。だから、経済活動再開の場合は、母なる自然を保護する基準を包含するものであるべきだ」。
　ウイルス封鎖のための制限政策が人民弾圧政策に転化されないように警戒すべきだ。そのために、完全な情報開示と言論活動の保証が確保されなければならない。社会的弱者には特別な支援策が講じられるべきだ。
　国際関係については、主権と生命尊重の原則に基づく連帯の実現。その意味で、アニェス政権が追放したキューバ人医師をボリビアに呼び戻すべきだ。最後に、この際、第三世界の債務を無効とする要求をコロナ対策の一つとして掲げている。