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アメリカに住みたい!国際弁護士がお届けする旬な情報-コロナ禍後の移民労働関係法の変化-

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◆執筆はカリフォルニア州弁護士の鈴木淳司。17歳の時に単身渡米し、現在サンフランシスコで弁護士数名が所属する中堅法律事務所のパートナー。日本とアメリカを頻繁に行き来する現役の視点から執筆しています。
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今月の旬な記事
コロナ禍後の移民労働関係法の変化について


 コロナ禍で、多くの非移民型・移民型の申請が滞る事態になっていましたが、最近では解消されつつあります。
 今回は、就労関係において2つ移民局から最近発表された変更点を考えていきたいと思います。

労働許可証(I-765)の自動延長期間短縮


 コロナ禍において、外国人が働く際(すべての外国人ではなく、ビザカテゴリーによる)に必要なI-765という労働許可証があります。
この労働許可証をEADカードと呼びます。
 このカードですが、有効期限があり、更新するには有効期限が切れる前に再申請書が移民局に到着するようにアレンジしなければなりません。

 そして、通常では審査がされ、新しいEADカードが届き、そのまま就労を続けられたのですが、コロナ禍で延長許可が180日経ってもプロセスされないという事態に陥りました。
延長申請が認められないと、その空白の期間は給与が受け取れない事態に陥ります。
 そこで、救済策として移民局EADカードの自動延長を540日まで認める、という指針を出しルール化しました。

 このルールのもと運用が行われていたのですが、この540日間自動更新ルールが撤廃され、2023年10月27日以降の申請は、元々の180日間の自動更新期間に短縮されます。
 結局、滞っていた申請も180日間以内に決定できると移民局が見たのでしょう。
 そうすると、念のため延長を考えられている方々で要件に合致すれば、2023年10月26日までに申請を終わらせて置いたほうが良いということになります。

 EADカードの申請要件としては、

(1)移民局がEAD延長を認めているビザカテゴリーであること
(2)現状持っているEADカードが失効していないこと
(3)以前から有しているカテゴリーのまま延長申請を行うこと、そして
(4)EAD延長申請が拒否されていないこと

となっていますので、540日間自動更新される間に更新申請を行った方が、働けない「空白期間」を避けるためにも良いと思います。

就労資格確認(I-9)について

 I-9というのは、外国人がアメリカ国内で就労する場合に、その就労資格があることを、雇用者が確認し、ファイルに保管することを義務付けられている書類です。
 雇用者が、外国人の移民ステータスを確認し、その内容を保管する必要があるのです。
そして、移民局から提出を求められた場合には、被用者全員のI-9を提出しなければなりませんし、怠ると行政罰、刑事罰が用意されていますので、必ず雇用をする場合には、備えなければならないものです。

 このI-9のフォームが2023年8月1日より新バージョンとして提供されています。
 すべての雇用者は、このI-9の新バージョンフォームによる情報の保管を2023年11月1日までに行うことを義務付けられています。

 内容的に変わった点として、

(1)I-9の聞き取り過程においてディスクリミネーションは一切許さない表記がされたこと
(2)添付A(SupplementA)という新シセクションが創設されて、翻訳が必要な書類については、英語訳をつけて誰が翻訳したのかを明記すること
(3)一定の要件を満たすと遠隔地でベリフィケーションができるという制度を導入したこと

が主なものとして挙げられます。

 (3)については、一定の場合、就業初日に行われるベリフィケーションが、リモート勤務などで難しい場合には有効だと考えられています。
 元々、I-9は就労初日に必ず完成させて保管されなくてはならないので、その手間を対面でなくても簡略化させたところに意義があると思います。

 とにかく、外国人が就労している場所では、I-9は必ず備え置かなければなりませんので、2023年11月1日までに、フォームのアップデートをする必要があることは覚えておいてください。

 また次回新しいトピックを考えていきたいと思います。

*アメリカに滞在しながら報酬を得るためのビザは、一般的な3つのカテゴリー以外にも各種用意されています。
気になる方は、お気軽にお問い合わせください(i@jinken.com)。

こんな質問ありました!

 <Q>

 グリーンカード抽選応募を検討中です。当選した後に提出する証明書の中に、就業証明書は必要になるでしょうか?というのも、今の会社が良いとも悪いとも明文化しておらず、就業証明が必要になった場合には、会社が発行してくれるか疑問です。[アメリカ在住・K様 ]

 <A>
 
 証明書類は、お客様ごとに異なるため一般論では申し上げられない点は、ご了承ください。その上で、小中高校の卒業要件を満たす場合には、通常職業については問われません。ですので、就業証明書を提出することは、稀といえるでしょう。一方で、業務内容や資産に関する情報が関係してくるため、詳しくは個別にご相談ください。

*上記は、あくまでも一般的な質問と回答ですので、個別の案件への正式回答ではありません。
同様の事例と思われても、かならず専門家にご相談をなさってください。

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★★★執筆者紹介★★★

執筆は、JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士。米国法曹協会、米国法廷弁護士協会、米国移民法協会所属。日本人としては米国で法廷活動も行う草分け的存在。多数の日本企業・個人を代理し、米国ビザや永住権取得も過去20年ほどサポート。『これでアメリカの法と社会の実際がわかる』(日本評論社刊)等、執筆多数。

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