数字と感覚のあいだ
最近退職者が多くて、人手が足りなくて困っている。という現場の声があったとします。
そこで社員数の年間推移を確認してみると、採用や社内異動で増えた社員もいるので、全体としては1年前とあまり変わっていない。
こうなると、経営者からは「人数は減っていないのだから、そんなに大変なわけがないじゃないか」と言われてしまいます。
こういった現場と経営の認識のズレは、よく起こるものです。
ここには2つのからくりがあると思っています。
まずひとつめ。
『社員数』というのは、10年選手も1年目の新入社員も、1人は1人。
ですが現場からしたら、その戦闘能力には雲泥の差があります。
だから、社員1人を単純に「1」とカウントするだけでなく、その経験やスキル、能力をきちんと可視化する必要があります。
やり方は様々ですが、
①役職・階級・勤続年数などの属性情報
②生産性(1人でどれだけの売上や成果をあげられるか)
③市場価格や給与など、客観的に人材価値を表現できる指標
などを使ってみると良いでしょう。
もうひとつ。
これは最近、コロナウイルスに対する意識の違いについて書かれた記事を見て私もハッとしたポイントです。
「コロナウイルスは正しく恐れれば大丈夫だ」という人は、陽性率や感染者数などのファクトをもとに判断をしている。
一方で、「どんどん感染者が増えていて怖い。とにかく今は身を守ることが大事だ」という人は、ファクトからではなく、自分の不安や怖れといった感情をもとに判断をしています。
だから後者に対して、どんなにデータを提示したところで、その不安が無くなることにはならないのです。
これと同じことが、経営と現場の間にも起こっていると私は思います。
同じ組織で一緒に仕事をしてきた仲間がいなくなると、強弱はあれど、現場には不安が広がります。彼ら彼女らがしていた業務を誰かが巻き取らなければいけないので、一時的な負担も増えます。
感覚に対してファクトをぶつけるだけでは、解決にはなり得ない。というところに、大事な示唆があると思います。
同じデータを見て目線を揃えた上で、しっかりと対話を重ねていくことが重要でしょう。