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得度のお得度 〜徳用・得度講座〜(前編)

今回は神宮寺五龍院の住職でもある落語も好きという梵智惇声(ぼんちじゅんしょう)からお話です。


得度のメリット


 冒頭から…何をややこしいタイトルつけとんねん!と思われる方も多いでしょうし、下手なシャレいらんねん!と思ってらっしゃる関西人もいらっしゃるでしょう。しかし、「八五郎坊主」という落語には、こんな言葉も出てまいります。


「一人出家を遂ぐれば九族天に生ず」

 要するに、1人が出家得度して僧となれば、多くの親族や先祖が天界に生まれ変わるだけの莫大な功徳があるよ、ということです。また、七代の先祖が、とか、過去七世の父母が、とか言い方は様々ですが、その人と絡んできた多くの人のお陰でその出家得度が成就したのだ、という発想がベースにあることは間違いありません。


ではでは、現代の出家得度の実際…とは!?

 では、出家得度とはどういうものなのでしょうか。

 お坊さんになること、と言えば甚だ簡単に過ぎる説明ですが、宗派によって、意味合いもタイミングも違います。大半の宗派においては、在家信者が発心を認められ、僧侶見習い(小僧)になる儀式として行われているようです。真言宗でもそのような儀式として行われており、正式に僧侶(阿闍梨)となるための修行をするための登龍門と位置付けられます。

 これはあくまでも宗教的な世界での話ですが、基本的に出家得度すると、苗字は失います。出家とは、読んで字の如く、家から出るわけですから、その家に所属している証となる、姓を捨てることになるわけです。そこで、古い時代では2つの名前を授かります。
 まず、本質的な僧侶としての戒律を授かった証となる名前、これを「実名(じつみょう)」といいます。しかし、これは普段名乗ることはありません。師僧、受法した際の師やその事務方くらいの人間しか、その人の実名は知らないものです。そして「仮名(けみょう)」これが普段の呼び名です。

 なぜこのような名前の与え方をするかというと、密教ですからそれなりに呪法が飛び交う世界でもあります。ライバルや敵方の祈祷師から実名で呪詛などを食らってしまうと、ストレートにその効果が出てしまうのですが仮名で食らってもそれなりに軽減されるので、いわば防具として仮名が機能するのです。

 とはいえ、近年ではそのような需要も減っているからか、多くの宗派では僧名として1つの名前を与えるだけなのですが、古式を重んじているところでは、仮名と実名を与えているようです。そういうところは、普段の名乗りは「苗字+仮名」にしておられることが多いです。世俗的には、民法上、現在の日本国には出家、在家の別や、僧侶という区分の身分は存在しないため、そのような運用になっています。



出家得度の後

 さて、得度が資格取得と同時になるのは浄土真宗系であり、その他の宗派は、得度→修行→資格取得という流れになります。修行の内容や資格取得の経緯は宗派によりますが、ここでは真言宗の場合をご紹介します。

真言宗では得度→加行(けぎょう)→ 灌頂(かんじょう)という流れになります。傳法灌頂(でんぽうかんじょう)を受けることが、真言僧侶としての第一歩になるわけで、灌頂を受ける前行として加行をすることになりますが、それが真言宗における基礎の修行です。

 護摩の時が一般の方でも目にする機会となりますが、真言僧侶が印を結び、真言を口の中で唱える、まさにそれが加行の内容です。流派にもよりますが、「十八道」「金剛界」「胎蔵法」「護摩」の4つはどの流派でもあることから、四度加行(しどけぎょう)といいます。


 そして加行が終われば、傳法灌頂を受けるのですが、それは「法を傳える」儀式であり、その法とは、真言僧侶というものが本尊大日如来と異なる存在ではないことを思い知らせ、大日如来としての証である印と真言を授けるのが目的、それこそがまさに「法」なのです。

 その時授かった大日如来の印と真言を日々結び続け、すべての言動を大日如来として行うことこそが、真言僧侶としての第一の務めになります。

 今述べた「加行」と「灌頂」については、今後「伝授」というものについて書く際に、少し詳しく理解できるようにしたいと思います。ここまでが得度の後のことです。

(後編に続く!)


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梵智惇声(ぼんちじゅんしょう)

神宮寺五龍院 住職 梵智惇声(ぼんちじゅんしょう)
真言宗僧侶。小学校1年の頃、仏教の魅力に目覚る。並行して、クラシック音楽家でもあり、指揮者、テノール歌手、演出家。2008年、高野山で得度、中院流、四度加行を成満。傳法灌頂受了。三寶院流憲深方・意教方、子嶋流の傳燈大阿闍梨。及び、野澤三十六流惣許可受了。真言僧侶の育成、伝授にも注力し、特に念持仏である愛染明王の修法実践、研究、伝授を主軸としている。

※神宮寺五龍院のプロフィールより抜粋

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