【レガシー】結局、チームアメリカの名前の由来って何なの?【MTG】
MTGにはクールな名称のデッキが数多く存在しますが、中でも海外で開発されたデッキについては、その開発秘話までは日本には届かなかったり、不正確な情報が共有されてしまうことがあります。
レガシー・フォーマットが黎明期から過渡期へと移り変わろうとしていた2008年。Team Americaと呼ばれる青黒緑デッキが誕生しました。
Team Americaは土地破壊を重視した非常に前のめりなクロック・パーミッションデッキでしたが、時が流れメタが移り変わり、初期のコンセプトが薄れた今もなお、一部のプレイヤーからは「青黒緑のクロック・パーミッションデッキ=Team America」と認識されています。(私もその一人です。)
デッキ名は広く知れ渡っていますが、海外で誕生したこのデッキの開発秘話については意外と知られていません。
このためMTG WikiのTeam Americaのページでも、デッキ名の由来については、長年“説”しか掲載されていません。
実はこの説、どちらも誤っています。
今回の記事の結論を述べますが、
Team Americの名前の由来は、ジョークデッキ「Europe」にルーツがあり、様々な調整とジョークを重ねていった末に「Team America」へと名前が変わり、そのまま定着していきました。
数多の調整と緻密な理論のもと計算されたデッキであり、単に強力なカードを詰め込んだデッキではないことをここで強調させてもらいます。
以下には、さらに詳しい解説や余談を掲載しています。
良かったら最後までお付き合いください。
チームアメリカとは
Team Americaは、大量の妨害呪文で相手の行動を抑制し、《タルモゴイフ》《墓忍び》という優秀な少数精鋭のクリーチャーで相手を殴り倒す、テンポ・アドバンテージを重視した非常に攻撃的なデッキです。
妨害呪文はマナ否定戦略に特化しており、《陥没孔》など自分のターンに積極的に呪文を唱えるだけでなく、12枚のピッチスペルを用いて様々なタイミングで相手の行動を妨害し、テンポ・アドバンテージを稼ぎます。
この戦略がうまく噛み合うと相手は本当に何もできません。
戦場に土地すらない相手に対して《墓忍び》を叩きつける光景は、見る者に強烈な印象を与えました。
Team Americaの変遷についても色々書きたいのですが、長くなりそうなのでそれはまた別の機会にでも。
デッキ名の由来について
Team Americaのルーツであるジョークデッキ「Europe」については、The SourceのTeam America専用スレッドやインタビュー記事で説明されています。
しかし、なぜデッキ名が「Europe」から「Team America」に変わったのかは詳しく説明されていませんでした。
スレッドを読み進めても、インタビュー記事を読んでもデッキ名についての解説は見当たらない。ネットで調べてもデッキ名の由来には辿り着けない。
ならば開発者本人に聞くのが手っ取り早い。
インタビュー記事を読む限り、質問は受け付けているようだったので、開発者の一人であるDan Signorin氏へのコンタクトを試みることにしました。
Dan Signorin氏は、Team Americaだけでなく、過去にはEva Greenなどの開発にも携わった人物です。
彼が長年所属している北バージニアのレガシーコミュニティは、様々なレガシーデッキの開発・発展に大きく貢献してきました。
Team Americaも、このレガシーコミュニティに所属するDavid Gearhart氏(SolidarityやITFを開発した伝説的なデッキデザイナー)と共同で制作した作品です。
ちなみに、“America, f**k yeah!”は、映画「チーム★アメリカ/ワールドポリス(2004)」のテーマ曲です。曲が気になる方は「チームアメリカ テーマ曲」でヒットすると思うので調べてみてください笑
この映画はサウスパークの製作者が手掛けた人形劇です。国際警察「チームアメリカ」がテロリストたちに立ち向かう話ですが、とにかく教育に悪いものの詰め合わせで、内容はサウスパークよりも過激。
エッフェル塔やピラミッドなどを爆破したり、悪の親玉として金正日を登場させたり、暴力に反対する自国の映画俳優や市民運動をコケにしたり、etc…
全方位に喧嘩を売りまくっています。
18年経った今でも口コミが更新され続けており、
「サンダー・バードを彷彿させる人形劇だが、クオリティが非常に高い。」
「おもろかった。観た映画の中で一番下品だった。」
「コロナに感染して熱にうなされながら見た。熱にうなされたような内容で助かった。」
など非常に好評です。
この映画にはアメリカに対する皮肉や自虐が含まれています。なぜデッキ名に自虐的な要素を含んでいるのかというと、Team Americaの本質がスレッショルドデッキよりもスーサイドブラックに近いからです。
Dan氏が開発に携わったEva Greenもスーサイドブラックの一種でした。Eva Greenのデッキ名は、映画「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」にてヴェスパー・リンド役を演じたエヴァ・グリーンに由来していますが、このヴェスパー・リンドは物語終盤で自ら命を断ちます。
理由の大半は遊び心ですが、スーサイド的な要素はデッキ名にも反映されているのです。
MTG Wikiに掲載された説について
改めてMTG Wikiに掲載された一文を確認します。
たしかに《墓忍び》は青緑スレッショルドに対して有効なカードでした。
《墓忍び》は、コントロールデッキのフィニッシャーとして採用され注目が集まったものの、《闇の腹心》との相性が悪かったため、他のデッキがこぞって採用したのかと言うと、そういうわけではありませんでした。
当時、Dan氏も《墓忍び》は過小評価されていると述べています。
そのような状況の中でも、ヨーロッパでの採用実績が高かったことからジョークデッキ「Europe」に《墓忍び》が採用されていました。
ただし、これはTeam Americaが完成するまでの経緯の話であって名前の由来ではありません。
また、とにかく強力なカードが詰め込まれている「アメリカの象徴」のようなデッキである、という説も誤りです。
この誤解を招いた要因には心当たりがあります。
The SourceのTeam America専用スレッド冒頭で「強いカードを詰め込んだだけでは?」といった批判的な意見がありました。
すべて4枚投入して調整したように見えないデッキリストであることや、どれも単体で高いポテンシャルを持つカードであることが、実際にプレイしたことのないプレイヤーからそのような誤解を招く要因になっています。
Dan氏はこの見方について否定しており、インタビュー記事にて、「Europe」を経て「Team America」が完成するまでのプロセスやすべて4枚積みである理由などを解説しています。
以下のリンクはそのインタビュー記事になります。
とはいえ、青黒緑という色は非常に恵まれており、様々な新カードの恩恵を受けてきました。
そのような誤解が生まれても仕方がないカラーリングであることは否定しません。
余談
様々な偶然と運命的な出会いがあったことで、今になってTeam Americaの記事を作成するに至りました。
箇条書きで説明すると、以下のような経緯がありました。
パソコンのデータを整理していたら、古い記事や翻訳途中で投げ出したメモの残骸があり、その中からDan氏のTeam Americaに関するインタビュー記事を見つけた。
改めて翻訳してみるとルーツとなったデッキや経緯については触れられているが、デッキ名の由来について説明がないことに気づく。気になって調べてみても、Team Americaの名前の由来に辿り着けない。
インタビュー記事にてThe Sourceのアカウント名や質問を受け付けている旨を確認したので、今更だが直接本人に聞いてみようとDan氏へのコンタクトを試みる。
The Sourceのアカウント作成を試みるが、不正なアクセスとみなされアカウントを作成できない。(日本からだとアカウント作成できない?)
別ルートを模索するために、Dan氏について調べてみると、The Source以外のインタビュー記事にたどり着いた。記者の名はJames Hsu。私がTwitterに旧枠Team Americaの写真を投稿した際、これに引用リツイートしてくれた人物であることに気づく。
Twitter経由でJames氏に連絡し、Dan氏と連絡が取れるか聞いてみた。James氏からDan氏と連絡がとれる旨の返信を受け、無事にDan氏とコンタクトを取ることに成功。
嬉しすぎてnoteに書く ←今ここ!
スペシャルサンクス
Team Americaについて快く質問に回答してくださったDan Signorin氏。
また、Dan氏とコンタクトをとるために協力してくださったJames Hsu氏に対し、心より感謝申し上げます。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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