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太陽の塔で未来を考える


noteをはじめて約2ヶ月が経ち、新たな年度が始まった4月
これ程までに書きたいと思ったことはありません。
僕をここまで駆り立てた「太陽の塔」について、書かせてください。

「 衝 動 」 

なぜか無性に太陽の塔が見たくなり、気がつけば来場予約を済ませていました。
京都に住んでいながら、ちゃんと見たことがありません。
芸術大学を卒業しましたが正直、芸術というものに心が動いたことはありません。
大人になってからは全ての行動基準に、メリット・デメリットや損得勘定、費用対効果を軸に生きているせいか、こんなに小さな一歩が未知への一歩のように感じ
冒険する気分になりました。

車を走らせ万博公園へ到着。
はやる気持ちがそのまま歩行速度となり、園内を圧倒的スピードで駆け抜けた僕
まだ蕾の桜を愛でる花見客に1度もぶつからずエントランスまで到達できたことで改めて自分がサッカー部だったことを思い出しました。

興奮気味に事前予約をしていた旨を告げ、受付を済ませていざ入館!

「 心 絵 」

太陽の塔/ラフスケッチ

最初に目に止まったのは、1枚のスケッチ
岡本太郎の中にある【感性・閃き・感情・思想】それら全ての要素が
そのまま筆圧となったスケッチでした。

余談ですが、僕は作品自体よりもアイデアが生まれた瞬間のスケッチが大好きです。建築やデザインの勉強や仕事をしていて、誰かと意見を交換する時
スケッチを見せてもらうと、その人となりが分かります。筆圧(濃淡)、線の勢いから感情が浮かびあがり、相手の気持ちが少し見えるからです。
巨匠/岡本太郎も、この1枚を描き上げるまでに何百枚ものスケッチを描いたのでしょう。確かめるような線形からは「決心」が感じられました。

「 過 去 」

奥から聞こえる不穏な音楽、薄暗い空間
次に見えたのは「地底の太陽」ゾーン

地底の太陽

太陽の塔は過去・現在・未来を表現しているとされ、この空間は「過去」にあたります。
【過去:根源の世界/生命の神秘】をテーマに世界各国の仮面が展示され、プロジェクションマッピングの演出もされていました。
不適な笑みを浮かべる仮面、こちらを威嚇するような仮面、悲しそうな仮面
異物感に不安を感じ「早くこの空間を抜け出したい」と逃げるようにこの展示を後にしました。

「 現 在 」

逃げた先には【現在:調和の世界/現代のエネルギー】がテーマとなっている天空へ伸びる生命の樹

生命の樹/いのちの歴史

まさに、圧巻です。
異様な閉塞感・不安感を覚えた過去の空間からの流れも相まって、全ての感覚が解放されるようで高揚したあの感覚は、今でも覚えています。
まるで体内のようなこの空間は、未来へつながる生命の樹を軸に約41mの高さまで螺旋階段で登り、単細胞生物からクロマニョン人まで33種類183体の“いきもの”が展示され、進化の過程を体感するものです。
約150段ほどの階段ですが「作品を見ては感嘆」を繰り返し
自分が血液になったかの如く、気がつけばあっという間にクロマニョン人にまで到達していました。

最上階/クロマニョン人


「いのちの歴史」という縮尺からみれば
なんと人間の歴史が浅いか。なんと地球は力強いのか
人生の短さと積み重なる生命の雄大さに衝撃を受けました。
(意図して人間は小さく表現されていたように感じます)

「 未 来 」


大屋根へ続く左腕部分(立入禁止)

万博当時は、この後に太陽の塔をぐるりと囲むようにあった大屋根にある空中展示エリアがあったそうです。
【未来:進歩の世界/分化と統合(組織と情報)】がテーマだったそうです。

当時の展示を見ることはできませんでしたが当時からみると
今、僕が見ている世界はきっと未来にあたるのでしょう。
「どんな未来がまっているのだろう」
答え合わせができなかったのも、考えるきっかけだとポジティブに捉え
下り専用階段に進み、作品を後にしました。
途中、パネル展示があり当時の建設の様子や会議の様子などの裏舞台が見れました。中でも印象的だったのは、岡本太郎が伝えたかったこと

「 芸術は呪術 」

ストンと腹落ちしました。
” 万博 ” というものは本来「技術や産業の進歩」それに伴う
人類の発展をテーマにする祭典のようなものだと思います。
1970年の大阪万博でも「人類の進歩と調和」がテーマでした。

これに対し、太陽の塔は全く逆の価値観で一石を投じています。
進歩の根源にあるもの
生命という尺度で捉える本質
「根源に立ち戻れ」というメッセージを芸術として表現し
万博の舞台で「進歩とはなにか、いのちとはなにか」を問いかけています。

太陽の塔は「異物」として万博史に刻まれているでしょう。

奇をてらった芸術を避けるように過ごしていましたが、岡本太郎
いや、岡本太郎先生のファンになりました。
本当は、スケッチの時点で心をつかまれていたんです。
「なんだこれ」の背景にある、しっかりと考えられた哲学・思想
造形に対する挑戦心に心を動かされたんです。

「何を残すか」ではなく「何を刻むか」という観点で
残りの人生を生きてみようと思います。

「 P.S 」

ミニチュア  太陽の塔

子どもたちには「いらんものは買わない!」「おみやげなんていらん!」
と日頃から口うるさく言っています。

が、気がついたら精算してました。
思わず買ってしまったミニチュア太陽の塔は、家族に内緒でお願いします。

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