言葉にできない病気の日記
出勤すると毎日のように、上司に「今日の体調はどう?」と聞かれることがつらい。
夫にも「今日はどんな感じ?寒いってどこが?どんなふうに辛いの?」そのように聞かれるが、答えることがつらい。
言語化できないことがつらいのだ。
自律神経失調症は、あらわれる症状も様々で、現代医療ではこれといった治療法が確立されていない。
当事者の私だって、何が起こっているかわからない。
日々、寒かったかと思えば暑く、このあいだは朝に具合が悪かったが、今日は夜に具合が悪くなった。そんな調子の病気だから、自分でも事前の対策が難しくてほとほと参っている。
胃潰瘍であろうが骨折だろうが、当事者だからといって自分の身体の中がどんなことになっていて、どんなことをすればどのくらいで治るか、なんでも理解できている人は皆無であろう。
そこを夫や上司は、「当事者は何でも知っているのだろう」とばかりにインタビューをかましてくる。
「どんなふうにつらいの?」
「どこが悪いの?」
「寒いってよく言うけど身体の中のどの部分がどんなふうに寒いの?」
「このあいだは朝具合が悪そうだったけど、どうして今日は夜にダウンしているの?」
うるせ~~~~~~~!!!!!
知らね~~~~~~~!!!!!
仮に語彙力をフル稼働させて、
「首の後ろの部分、落ちくぼんだ部分から3cm下……いや、5cm下かもしれない。その部分が冷たいような、氷でも埋め込まれているような、じんわりするような、シーンとしているような、嗚咽がせりあがってくるような、そこから全体に寒さが広がっていって顎に違和感を覚えるような、頬に鳥肌が立つような、そんな寒さなんだよ」
そうやって訴えたとして、
「シーンとしているってどんな感じ??」
と聞かれて、そもそも私の「シーン」とあなたの「シーン」は感じ方が違うよね?
ってな話になっていって、
けっきょくお互い永劫にわかり合うことはないという確認作業を続けるだけなのだ。
だからもう何度も、どんなふうにつらいのか、を説明させてくれるな。ほんと頼む。
おそらく周りとしては心配しているだけなんだよね。何かあれば助けたいという善意で言っているのもわかる。
でも私、
普段から自分の感じていることを相手に伝える時、どんな語彙を使ったら相手に一番正しく伝わるのかを、すごくすごく考えてしまう。そういう人間なのだ。
モヤモヤしているよくわからない感情も、なんとか当てはまる言葉を見つけたら安心できた。
もともと、あらゆるものを言語化することはとても好きだったはずなのに。
なんでも言語化できると思っている自分の傲慢さと、ついに対峙する時が来てしまったのだ。
言葉は心を超えない・・・
とチャゲアスも歌っていたよ。
そうなんだよ。
言葉なんて陳腐な道具で、私が「感じているまま」を表現することなんかどだい無理なんだよ!!!!
はい。
それでもすべてを言葉にすることはいつかできるんじゃないかという私と、
言葉は入ってくるな。言葉が踏み込めない領域は確かにあるんだよの私が、
せめぎ合っておりますが、
こんなことでいちいちせめぎ合ってるから自律神経が乱れるんだわ。
仁礼(にれ)
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