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手元に集められた数奇な石たち ⑦ホワイトハウライトについて調べた


はじめに

 集まった石についての記事7回目になる。いつもエイヤッとランダムに紙包みの石をひとつとりあげ調べる。これらの石、昨今の石ブームで通称名で呼ばれがち。

あくまでも岩石・鉱物としてのおもしろさから「おじゃる丸」のカズマ君と同じく石を愛でたい。せっかく手もとに集まった石だから、混乱を招かぬように通称名と鉱物学上の名称との関係をつかんでおかないととはじめた。

あくまでもわたしの備忘録にすぎないが、なかにはnoteの読者の方々にこれから石に目を向けたいという方もいるかもしれない。

たったひとつの決めごとは、Wikipediaを使わないこと。7回ともそう。これを使ってしまうとなかなか内容を覚えていかないのでなるべく自分で調べることを主眼にしている。べつにこのサイトを嫌っているわけではない。

あいも変わらず「鉱物」、「鉱石」、そして「石」の語を区別できないで使っているのでご注意を。

この岩石の名前は…

 今回の石については検索に苦労した。ホワイト~と頭につく石はなかなか出てこない。そこでホワイトを外し、ハウライトで検索。すると菱苦土石と出てきた。果たして信じていいのか。手持ちの石とくらべつつ用心しながら調べていく。

こうした調べは休日にかぎる。時間をつかえるからだ。平日でも仕事の合間の待ち時間などに調べたいが、わたしのスマホではなかなか検索できない。どうも検索に時間がかかるばかりでらちがあかない。したがってPCを使って調べる。

さて石にもどるとハウライト。「ハウ」は地名か人名かもしれない。どちらにしても短い語。手がかりが少ない。(追記:人名とのこと)。なかなかハウライトの検索ではパワーストーンのサイトをとり除くことができない。これらのサイトはいちおうパスしている(ゴメンナサイ)。なるべく学術的な記載がないか探していく。

やはりない。これほど手がかりの少ない石ははじめて。やりがいがある。そこでやむなくハウライト➡菱苦土石として、この語から逆引きしてみる。

すると、ネット上の岩石標本の画像と記載のなかからいくつか手がかりが出てきた。そしていつも頼りにしている岩石鉱物詳解図鑑(1)へ。このサイトでダメ押しと確認作業にはいる。

純白の石基+灰白色の鉱石

 これまでしらべた6つの岩石とくらべると、いままでになかった色。白色がめだつ。そしてどちらかというとかたくはなさそう。ハンマーでかんたんに割れそうだ。

真っ白な石の表面はなんとも白墨のような見ためと感触。そこへ灰白色の成分が割れ目に陥入したふうに見える。砕いて細かく粉にできたら、おそらく白色の岩絵の具になりそう。そんな印象を与える。

手持ちの石は30数種あるが表裏のうち片面を磨いてあるものが多い。いずれの面でも展示してながめられるくふうと解釈している。みがいた面を観察すると、上述の印象がさらにきわだつ。あきらかに2種類の鉱物からなるのはたしかなよう。

さて独特の色のきわだっている理由を中心に探っていこう。

手持ちの石の白色部分は。炭酸マグネシウム。たしかに化学ではこの物質は白色。体操競技などの際にこれでもかというぐらい手になすりつけているあの白い粉。

野球のピッチャーマウンドにあるロジンバッグの主成分でもある。野球の場合にはそこへロジン(松脂)などがある割合で混ぜてあるそうだ。スポーツによって成分割合などがことなるらしい。なにごとも興味深い。

日本製のロジンバッグの中には手荒れしにくい卵殻を粉にした製品もある。こちらは炭酸カルシウム。肌荒れしにくいそうだ。

話がずいぶんずれてしまった。

菱苦土石にもどろう。基盤となる鉱物は炭酸マグネシウムとして、灰白色の部分は何だろう。よく似た標本のなかには蛇紋石系の鉱物などをともなっているという記載が見られる。

灰白色の部分が気になる


白さのきわだつ石

 この石の白さは印象深い。あくまでも白い。そこで前々回にひきつづき絵の具を調べてみた。すると、炭酸マグネシウムは体質顔料といって、絵の具の増量の目的の基剤として、絵の具ののびやゆるさを調整するために使われるそうだ。

基本的に白色の顔料が選ばれており、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、そして今回の炭酸マグネシウムなどが用いられるらしい。
いずれも化学的には安定な物質で混色しても変色しないだろう。これらの体質顔料は、絵の具の本来の色に影響を与えない性質を備えている。

たしかにアクリル画や油絵のキャンバスの下地に用いるジェッソにも炭酸マグネシウムが成分に入っている製品があるようだ。学生の頃は高いチタニウムホワイト(成分:酸化チタン)は買えずに、たしかジンクホワイト(成分:酸化亜鉛)ばかり使っていたことを思い出した。

ほかにも炭酸マグネシウムは、塗料や化粧品の原料として使われているようだ。その他にも食品に加えられる用途などさまざまある(2)。

独特な色と感触は…

 ホワイトハウライトを菱苦土鉱とするとMgCO3(数字は下つき)。菱苦土石としてあつかうと深成岩の1種。橄欖(カンラン)岩、蛇紋岩、結晶片岩などが含有頻度の高い岩石。

上述のとおり炭酸マグネシウムを主成分とする。一部に蛇紋石(Mg3(Si2O5)(OH)4 )(数字は下つき)が入っているかもしれない。

構成する主要な金属元素はマグネシウム。岩石鉱物詳細図鑑からそのまま引用すると、菱苦土鉱(リョウクドコウ, リョウテッ鉱, magnesite, マグネサイト) と記されている。表記中の菱鉄鉱(FeCO3 Siderite(数字は下つき))との間では連続固溶体を形成するそうだ。三方晶系。ハウライトの前にホワイトとつくのは通称的な表記なのかもしれない。

分類を調べてみると

 分類上の位置づけを岩石鉱物詳細図鑑(1)に基づいて大分類から順に行う。

ハウライト(菱苦土石)について調べると、

10種ほどある化学組成にもとづく分類では、炭酸塩鉱物
10種ある炭酸塩鉱物のうち、方解石グループ
8種類ある方解石グループのうち、菱苦土石

国内の産地

  原色岩石図鑑(3)によると、連続固溶体になる菱鉄鉱は日本では金属鉱山中の脈石中に見つかる程度。海外では製鉄の原料になるほど大量に存在するところがある。

おわりに

 今回のホワイトハウライトに関してははあまり釈然としない。ホワイトハウライトはパワーストーン界隈では日常語かもしれないが、学術用語ではなさそう。後世に造られた通称名かもしれない。

こうした名称は園芸植物などにも多く、植物の場合には本来のラテン名との関係がわかる事典類が必要になりそう。岩石・鉱物に関しては正確を期する意味からほしいところ。とりあえず保留とさせていただきたい。今後も調べてみようと思う。

参考文献・サイト

(1)岩石鉱物詳細図鑑https://spotlight.soy/detail?article_id=ktiypccer https://planet-scope.info/rocks/minerals/pyroxene.html
planetscope(https://planet-scope.info/index.html)のひとつのカテゴリ。沢田輝氏(海洋研究開発機構JAMSTEC研究員)運営。
(2)ナイカイ塩業(株)https://www.naikai.co.jp/leaflet-tanmag-ja.pdf
(3)原色岩石図鑑 改訂新版(1999)保育社 p.26.

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