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たべたビワのたねを蒔いてみた:気長な15年の顛末記


はじめに

 みごとな茂木ビワを知人からいただいたのはたしか15年前だったはず、季節は4月ごろと思います。

おいしかったので種子を庭のいたるところにぱらぱらと蒔いておきました。それこそ「鬼は外」をするようにです。あいかわらずわたしにはよくありがちな行動。

やがて忘れた頃にあちらこちらにビワが芽をふきました。それ以降の顛末記。

ヒント:写真のビワを食べながらこの記事は4月に書きました。

まずは先達に…

 先日の記事のアボカド同様、ネットで検索するとビワをけっこう育てていらっしゃる方がいます。西日本では露地でそれこそほっといても(あくまでも表現上のあやです)栽培できるようです。

こうした果実を食べたあとによくこどもにありがちなのが、庭に食べたあとの種子をまくこと。わたしは純真でいたいけな生き物ではありませんが、こども心をもちあわせているつもりです。種子を蒔いて出てくる実生がそれこそ親とは似ても似つかない奇妙キテレツな姿で現れることはじゅうぶん承知のつもり。

ビワのたね(種子)

                              
それでおおかたの人は果実の種子を蒔いても…とつれない態度をとるでしょう。多くの場合にはそのとおり期待ほどではないというのが結論のようです。

ところが一部の果実ではわりと味の良いものが実生苗からできるらしいと知り、機会あるごとにためしています。このビワもそうかもしれないとかすかな望みをたくしながら挑んだわけです。まるで暗号資産の取引のよう。

気の長い話

 とはいっても前回のアボカドの記事にも書いたように「桃栗3年、柿8年」といいます。苗木をしゃがんでじっとみつめていると翌朝実がなっているというわけではありません。トトロの世界のようなことは逆立ちしてもけっして起こりません。

種子をまいてから実がなるまでほんとに気の長い話です。でもそのあいだのわくわく感がなんともたのしい。ずっとそういう気持ちのままですごせます。これも暗号資産取引のよう。やってしまう性格です。

おいおい、時間のコストを考えろ、とどこからか聞こえてきそう。花や果実のリターンのありなし、そして陽あたりなど悪条件のリスクも納得ずくのうち。それにわたしがつきあえるかです。世のなかにこんなおもしろい、そして面妖なことがあるならやってみる価値ありの態度でいます。

好きなようにさせてください。

わすれた頃に

 さて、はなしをビワにもどしましょう。
先日のアボガドの記事の際の過保護な態度とはちがい、ビワを食べたらひたすら庭にまく。そのくり返し。うちの庭にはさまざまな果実の芽がふいてくるのですが…。


果たしてこれは何の芽だろうと迷いはじめてしまいます。この迷路に入り込むとダンジョンのゲームのごとき、いきあたりばったりの様相を呈します。
じつはその経験の実例をひとつ。やはりひょっこりと芽を出したものあり。

それはごくごく見た目が平凡な芽でした。特徴がないとは調べようがなかなかないことを意味しています。そして「果実の芽図鑑」なるものはこの世の中に存在していません(わたしの知る範囲ではですよ)。

迷いに迷っていたところ、そのようすを見かねたこどもがここに「りんごのたねをまいといたよ。」と教えてくれたのでした。ほほう、これはもしかするとりんごの芽か。

そうです。北国の道の両側に一面に赤いじゅうたんを敷きつめたように、りんごの実がみのるようすを、ほんの一瞬だけ修学旅行のバスのなかから垣間見た経験しかないわたしにはそれは新鮮なおどろきでした。

うちの庭の10センチに満たないそのりんご苗には、うちの気候はお気に召さないようでした。いつの間にかどこかへと旅立っていきました。

さて、びわの苗について

 あちこちにビワの芽がふいていますから、あちらをこちらに、そしてこちらをあちらにと意味のない引っ越し作業を毎年のようにくりかえすうちに、剛健な苗が選抜残存淘汰されていきました。

過酷な生存競争を無理やりわたしによって負わされたビワたちのうち、生きのこった精鋭です。やっとおちつきさきがきまり、庭の北東端の陽が半日は確保できる場所へと安住の地が与えられたのでした。

するとどうでしょう。ここを気にいってくれたのか、みごとに生長、秋にそれまでの葉芽とは様相のことなる芽がでてきたのです。花芽です(パチパチ)。蒔いてから3年目の秋のことでした。

おっかなびっくりの世話

 さてそれからがたいへんです。ビワについて調べはじめ、なんとか摘芽が必要なことを知り、おっかなびっくり花芽をむしり、数個ずつ花が咲くようにしました。最初のうちは摘芽前にこんなにびっしりあるものだろうかと不安なぐらいたくさんの花芽。最初の年からこんなに花をつけたので摘芽に迷ってしまいました。

 いろいろ調べるとごく近く(歩いてすら行ける距離)がビワの名産地であり、そもそもビワのできやすい土地柄のようです。ビワの生産農家の方々の果樹園をはたから見るとそれはそれはもうりっぱな木で、ようこそここまで世話をしているものだなと感心しきり。袋がけなどはたいへんな手間と聞いたことがあります。

わたしも桃の袋がけ(わずか400枚にすぎません)はしますが。でもわたしはわたし。ビワについてはズボラな放任主義でいこうと心にきめたのでした。それでも数個は袋をかけるなどして比較をこころみたのでした。

この段階で樹高2メートルほど。

それからどうなった

 じつはそれから10年がたち現状をお伝えします。樹高は2.5メートルとあまりかわりませんが、幹まわりは30センチに。枝は2坪ほどに拡がっています。

上の翌年(播種から3年目)の春にめでたく最初の実をつけ味見。一箱12個入り3,800円の商品とまではいきませんが、味はとても良好。酸味と甘味のバランスがよくとれています。収穫から30秒で食べられるので、何も店から買う必要はないな(生産者の方、店の方ごめんなさい)、と思えるほど。

あいかわらず毎年実をよくつけています。畑のみかん類を食べ終わり、さてつぎはというタイミングですので、じつにタイムリーな時期に実ります。

10月からうちの庭と果樹園では 極早生みかん→ポンカン→タンカン→ネーブル→スイートスプリング→はっさく→甘夏みかん→ボンタンとみかんを食べつづけ、そのあいだゆずを利用、4月のいまはようやくほかの果物へというところでビワです。

このあと梅が実り、ブルーベリー、桃、ぶどう少々、栗、そしてひとめぐりして極早生みかんへとつないで1年がすぎます。季節ごとのめぐみに感謝しきりです。

ことしの実はちいさい


おわりに

 このビワはあまり脇芽がでないので、剪定もほとんどせずに枝先を整理する程度。ほんとに手間いらずです。

そしてビワ茶など古い葉を所望する方がいてけっこう重宝するとわかってきました。すこし増やしてもいいぐらいです。

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