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『幽拐エレベーター』の舞台裏 ─10万回閉じ込められた少女

再稼働したエレベーター

2024年8月8日。第四境界のコンテンツ、『幽拐エレベーター』が再稼働した。

ほんの数時間で1万人以上が体験し、多くの人が救出結果をポストしてくれたおかげで、#幽拐エレベーター#第四境界は共にトレンド入りを果たした。
自分の手元に正確な数字を知る仕組みがないのだが、公式発表によれば公開3日でプレイ回数が5万回突破とのこと。いや、すごいすごい。って、いくらなんでも多くないか。

しかも、お盆中には10万回を超えそうとか言ってる。いいのかそんなこと言って。(第四境界のXアカウントを運用しているのは自分ではありません)

ありがたいと思いつつ、僕は若干引いている。ここまでの反響は、さすがに予想できていなかったためだ。

#幽拐エレベーター の舞台裏

この『幽拐エレベーター』は計画的に生み出されたものではなく、別タイトルのLINE負荷テストを目的としたテスト用コンテンツだった。

それをどういった内容にするか、いくつか案は出されていたが、「ちゃんと興味を誘う内容にしないと負荷テストにならないのでは」という懸念から、即興的に『神隠しエレベーター』という案を提案した。
その時は特別な手応えがあったわけでもなかったが、不思議と周りのスタッフにはイメージがハマったようで、制作は順調に進んでいった。

そして2024年5月16日、『神隠しエレベーター』は『幽拐エレベーター』と名を改め、3日間限定という条件付きで動き始めた。

予想外のことは、ここで起こった。
同時接続が数百人程度の負荷テストを想定していたところに、想定の数十倍のプレイヤーが押し寄せた。(文脈上悪いことのように聞こえるかもしれませんが、めちゃくちゃ感謝してます)

これは僕たちから見ると、二つの意味で危険な状態だった。
一つは、純粋に負荷が高すぎてサービスが正常に動作しない状況に陥っていたこと。
もう一つは、LINEの仕様上レスポンス量が増えるとその分費用がかさんでしまう状態にあったこと。お金の話で申し訳ないが、放置すれば数百万から数千万円にもなりかねない危うい状態だった。

さすがに一度サービスを停めざるを得ず、当初の3日間限定という予定も変更となった。
その後、5月20日に第二弾テスト、5月27日にdiscordで有志を募っての第三弾テストなど慎重な対応を経て、本来の目的だったLINEの負荷テストは無事に完了した。
これにて一件落着。いやいや、みなさんお疲れさまでした。本番をお楽しみにー! ともいかない状態になっていた。

高負荷で遊べなかった多くのプレイヤーから、「ちゃんと最後まで遊びたかった」という声が相次いでいた。当然の話だ。せっかく楽しみにしてくれたファンを、がっかりさせたまま終わらせるわけはいかない。だが、そのための対応は容易ではなかった。

様々な試行錯誤を経て、もともとのLINEでの提供は断念し、ブラウザ上での再現というかたちでの実現となった。

負荷による費用の心配もなくなりました!

腕のいいエンジニアが高速で対応してくれたので、上記だけなら割とすぐに再稼働できそうだった。だが、テストプレイのプレイヤーの反響を見たスタッフから、次々に改良の希望が上がり始めた。

「どうせ作り直すのなら、もっと内容に深みを加えたい」
「つむぎというキャラに可能性を感じるので、よりキャラが立つようにしたい」
「アート周りをちゃんと再整備したい」

この幽拐エレベーターは、不思議とこういう雰囲気があるコンテンツだった。自分が何かを言わなくても、周りが勝手に動きだす。

幽拐エレベーターは、言ってしまえばもう役割を終えたコンテンツだ。
けれど、待ってくれている人がいるなら、少しでもクオリティを高めて届けたい。そう思う感情は崇高なものだ。
「だったらもう、やるならちゃんとやろうよ」
そんな感じで、僕もスタッフの想いに乗ることにした。

と、開発内部はこんな感じだったので、途中でこんなお知らせが出たり……、

と、まあ色々とあって再稼働まで2ヶ月半も掛かってしまった、という次第だ。

まとめ

というわけで、長らくお待たせしてすいませんでした。

メタなこと言いたくないので舞台裏の話なんてあまりしないのですが、たまにはいいかと思って書いてみました。この『幽拐エレベーター』は、「皆さんが楽しんでくれればそれでいい」という特別なコンテンツなので。

せめて何か記念になるものをということで、「エンドカードステッカー」なるものをこさえました。

優秀な若手デザイナーが作ってくれました

「幽拐エレベーター楽しかった、応援するよ」と思ってくださる方は、こちらをお買い求めいただけると嬉しいです。きっと次に繋がりますので。

この記事の内容チェックを頼んだら、「現在のプレイ回数は7万回を超えてます」という報告が来た。引きすぎて冷や汗をかくような心境だが、非常に嬉しいです。(追記:「無事10万回に達した」という報告があったので、タイトルも10万回にしました。もう変えませんw)

今後も多くの人にたくさん楽しんでもらえれば、『幽拐エレベーター』もさらに進化するかもしれないし、7万回も閉じ込められた少女つむぎにも、また会える日が来るかもしれません。

さて、今日の話は以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。
今後とも皆さんの応援をお願いいたします。

2024.8.12
『第四境界』総監督 藤澤 仁


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