外国人と生活保護 ─デマ検証─

デマ内容
2014年、最高裁が「外国人への生活保護は憲法違反」という判決を下した。


発端になった最高裁判決

永住資格を持った中国籍の女性(当時82歳)が、自身の生活保護申請を却下
した大分市の処分は、違法だとして、市に対してその処分の取消を求めていたが、棄却された。

判決内容の引用

外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象と
なり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、同法に基づく受給権を有しないものというべきである。
そうすると、本件却下処分は、生活保護法に基づく受給権を有しない者に
よる申請を却下するものであって、適法である。

生活保護法の対象は日本人のみ

生活保護法で対象としている「国民」とは、あくまで日本国籍を持つ者。
それに当てはめて考えると、上記の訴訟における原告は永住資格を持つ
外国人であり、日本国籍を持たないので生活保護の対象にはならない。

外国人は生活保護を受けられないのか

生活保護法では、適用されないが、行政措置として日本人と同内容の
保護を行うよう定められている
。これは、厚労省の通知に根拠がある。

1954年 厚生省の通知
「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」

生活保護法第1条により、外国人は法の適用対象にならないのであるが
当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の
決定実施の取扱に準じて左の手続きにより、必要と認める保護を行うこと

対象となる外国人
◆永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等
◆特別永住者
◆入管法上の認定難民

日本人に対する生活保護が「適用」であるのに対し、外国人に対する
生活保護は「準用」である。

これは、外国人の場合、生活保護を申請し、それが却下されても
「不服申し立て」ができず、また生活保護が打ち切られたり、減額されても
同様に、不服申し立てはできないことになっている。

なぜ外国人を保護するのか

日本は1979年に国際人権規約、1981年に難民条約を批准しており
これらの条約は、社会保障などについて、内外人平等を謳っている。

また、日本国憲法第98条2項では「日本国が締結した条約及び確立された
国際法規はこれを誠実に遵守することを必要とする」とあり、上記の条約が
締結されたため、1986年までに、国民年金法・国民健康保険法・児童扶養手当法・児童手当法などが改正され、国籍条項が撤廃された。

その結果、外国人も年金保険・国民健康保険に加入できるようになり、育児に関する現金給付の対象となった。なお、国民健康保険は、2012年より、3ヶ月以上日本に滞在する外国人に対しては加入が義務化されている。

当然、国籍条項のある生活保護法についても議論がなされたが


「生活保護につきましては従来外国人に対しまして日本国民と同様の措置を
とっておりますので、それをもって条約の義務は満たし得るということでございまして、その点につきまして従来と同様」

として、「日本国民には適用、外国人には準用」という形が維持される
ことになった。

まとめ

◆外国人は生活保護法に基づく保護の対象とはならない
◆それとは別に事実上の保護を行う行政措置として、当分の間、日本国民に
対する同法に基づく保護の決定実施と同様の手続きにより必要と認める保護を行うことと定められている

つまり、今回の最高裁の判決は、永住外国人は「行政による日本人と同様の
内容の生活保護実施の対象となる」と認定したと解すべき内容。

永住外国人が行政による保護の対象となる事が、違憲であるかどうかの判断
などしておらず
、生活保護法では対象でなく、それ以外の方法で保護の対象になるとしているのみ。

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